第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その57)
「いや、多分、お爺ちゃんの言うとおりになるんだろうって思う。」
父親は、まるで前言を取り消すかのような言い方をする。
「ん?」
孝は首を傾げるだけになる。
「お父さんなんかは、どうしたってテレビや新聞の天気予報に頼って物事を考えるんだが、お爺ちゃんはそうじゃあないんだ。『あんなの当てに出来るか!』って言うんだ。」
「天気予報を信じなくって、一体何を信じるって言うの? まぁ、確かに外れることもあるけれど・・・。」
「自分の感覚なんだ・・・。」
「ええっ! 自分の感覚って・・・、それって、勘って奴?」
「まぁ、そうだ。」
「そ、そんな、非科学的な・・・。で、お父さんは、それで良いって思ってるの?」
「それが、ビックリするほど当たるんだから、無視するわけにはいかないんだ。」
「あ、当たるんだ・・・。」
孝は、父親の言葉を俄かには信じられなかった。
今時、自分の勘で明日の天気を占うなんて、そんな馬鹿なって思ってしまう。
それでも、その勘が当たるって言われると、当然に「どうして?」という疑問が沸いてくる。
まさか、「予知能力」があのお爺ちゃんに備わっている筈もないだろう。
「もちろん、科学的な根拠があるんじゃない。お爺ちゃんの場合は、うちの果樹園、つまりは現地で一日中作業をしていて、土や木の状態、空の色、雲の動き、風の向き、風の匂い、水の温度、水の硬さ・・・、そうしたものの変化を感じ取るようなんだ。
『ほら、梨の実が寒いって言ってる』なんてな・・・。」
「ま、まさか・・・。」
「い、いや、そのまさかがまさかではなくなるんだから、それを聞かされたお父さんとしては黙って信じるしかないんだ。」
「・・・・・・。」
「お父さんも、子供の頃にそうした話を聞かされたときは信じられなかった。お爺ちゃんが適当な話をしてるんだって思ってな・・・。
でも、あることがあって、それ以降、お爺ちゃんの超能力を信じるようになったんだ。」
「ちょ、超能力!?」
孝は、父親の口からその言葉が出たことに衝撃を受ける。
(つづく)