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第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その55)

「そうだ、単に『食べ方始め!』ってことに成り下がってる。」

父親は、まるで昔の軍隊での号令のように言う。


「・・・・・・。」

孝はいよいよもって付いていけなくなる。


「まぁ、それは、お父さん達大人がちゃんと教えてこなかったからで、孝たちの責任じゃあないが・・・。」

「・・・・・・。」

「その点、お爺ちゃんは厳しく教えてくれたんだ。

『いただきます』って言葉には、ちゃんとした意味があるんだって。

まずは、その食事を作ってくれたお母さんに感謝するということ。

さらには、肉や魚はそれこそ牛や豚などの命を奪ってこそ食べられるんだし、野菜や果物は、雨が降りお日様の光があるからこそ食べられる。『そうした生き物の命を頂く』ことへの感謝をするってことなんだと・・・。」

「・・・・・・。」

「だからこそ、両手を合わせて、そうしたもろもろに、食べられるありがたさを言葉にするんだって・・・。」

「・・・・・・。」


「お父さんも、孝に『いただきます』って言うように教えてきた。そう言わなければ食べさせないとも言ってきた。

でもな、お爺ちゃんがお父さんに教えてくれていた『その“いただきます”には感謝の気持ちが込められているんだ』ってことをきちんと教えてこなかったような気がしてるんだ。

それこそ、ただ単に号令のように『いただきます』っていう言葉を言わせていただけで・・・。」

「・・・・・・。」


「孝はどう受け止めてる?」

「ん? ど、どうって・・・。」

「お父さん、そうしたことをちゃんと教えていたかなぁ~?」

「・・・・・・。」


「聞いた記憶がないってか?」

「う~ん・・・、はっきり覚えてないけど・・・。」

「やっぱりな、やっぱりそうだったんだ・・・。」

「・・・・・・。」

孝は答え方が分からない。


「お父さんが、父親としての努力を怠ってきてたってことだ。反省しなきゃって、そう思ってるんだ。」

「ん? そ、そんな些細なことで?」

孝は、まるで狐に摘まれたような気持ちになる。


「だから、“地震・雷・火事・親父”の意味すら孝にちゃんと教えられていないんだ。」

「そ、そんなぁ~・・・。」

孝は、「地震・雷・火事・親父」の言葉に、「それって何?」と返したことを後悔する。



(つづく)




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