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第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その51)

「その先輩、中学に入学してすぐに開催された“県内新人戦”で、いきなり準優勝したんだそうだ。中学に入って初めてハードルをやり始めたっていうのにだ・・・。」

父親は、まるで自分のことのように自慢げに言う。


「へぇ~・・・、それは凄い!」

孝もそう応じる。ハードルの難しさは体育の授業で実感済みだったから、短期間で準優勝するところまで行けること自体が驚きである。

孝自身は、苦手な競技だったことだけが印象として残っていた。


「これはその先輩本人が言ってたことなんだが、やはりお兄さん達の影響なのだそうだ。

先輩、小学校では体操教室に通っていて、その教室を通じていろんな大会に出ていたそうだが、なかなか思うような成績が残せなかったんだ。

で、お兄さんに愚痴を言ったら、『体操ってのは人に採点してもらう競技だからな。本当に勝負したいのなら、時間とか距離とか、そうした誰もが納得をする数値で優劣が決まる種目に変えたら良い』って言われたんだそうだ。」

「な、なるほど・・・。」

孝も、その主張には賛同できるものがあった。

テレビでオリンピックの体操競技を見たことがあるが、あの点数の付け方がよく分からなかった。「どうしてこっちの選手のほうが点数が高いんだ?」と感じることが多々あった。

やはり、審査員という人間が見て採点して・・・ってのは、見ている観客には理解しにくいところがあるばかりか、採点された競技者本人もなかなか納得しにくいものがあるに違いない。


「それで、中学に入ったのを機に、お兄さん達がやっていた陸上競技をやろうと決心したんだそうだ。殆どが時間、つまりはスピードで優劣が決まる競技だったから・・・って。

で、ハードルは自分から『これをやりたい』って主張したって言ってた。

どうしてかと言えば、ひとつは比較的競技者数が少ないから、トップになりやすいだろうって思ったと言うんだ。やる以上は、トップを目指さなけりゃねって・・・。

『私って、こう見えて、相当な負けず嫌いなの』って笑ってたよ。」

「負けず嫌い・・・か・・・。」

孝は、またまた塾で隣の席に座る彼女の顔を思い浮かべる。


「それと、もうひとつは、体操をやっていた経験が生かせるだろうって思ったんだそうだ。」

「ん? 体操の経験? ハードルと共通点なんかある?」

孝には、その先輩の発想が理解できなかった。


「ほら、ポスターなんかにハードルを跳ぶ瞬間を撮った写真が使われているだろう?

あれを見て『なんて綺麗なんだろう』って思ったそうだ。

単純に“走る”ってことだけじゃなくって、そこに“跳ぶ”っていう要素が加わっている。

その写真を見た瞬間に、『これだ!』って決めたんだって・・・。」

「な、なるほど・・・。」

孝は、ようやく大きく頷く。



(つづく)




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