第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その34)
「ど、どうして・・・、そんな、ややこしいことを?」
孝は、自分の頭の整理がつかないことをそう表現する。
「あははは・・・、お父さんも、その話を聞いたときには、正直、今の孝と同じことを考えたよ。“どうしてなんだよ!”って・・・。」
父親は、どうしてなのか、嬉しそうに言う。
そして、一拍空けるようにしてから、また言葉を続けてくる。
「そんなことをするぐらいだったら、何も新聞配達所の店主さんを通じなくっても・・・。そう思ったさ。」
「・・・・・・。」
孝は、黙ったままで父親に見せるかのように2度大きく頷く。
祖父は、父親がラジコンを買いたくってバイトをしようとしていたことを知っていたんだから、そうしてバイト代を負担するぐらいだった、直接それを父親に渡せば良かった筈。
それこそ、何もそんな裏工作のようなことをする必要はなかったのだ。
「でもな、それを言ったら、その店主さんがこう言うんだ。
“それは、そんな煩わしいことをお父さんにさせたのは、君の責任だろ?”って・・・。」
「んんん!? ど、どうして? どうして、お父さんの責任なの?」
「“君は、こんなことをするんだったら、最初から僕に3万円をくれれば良いのに・・・って思うんだろうが、だったら、これはおじさんから問うんだが、君はどうして素直にラジコンを買って欲しいってお父さんに言わなかったんだ?”って・・・。」
「・・・・・・。」
「店主さんにそう突っ込まれて、お父さん、言葉がなかったんだ。
確かに、お婆ちゃんにはそう言った。そしたらお爺ちゃんに言いなさいって言われて・・・。
で、でも、お爺ちゃんには言えなかった。」
「・・・・・・。」
「答えられないお父さんに、その店主さんがこうも畳み掛けてくるんだ。
“ラジコンを買って欲しいと言っても、どうせ駄目だと断られる、いや、それだけならマシで、勉強もしないでそんな高価な玩具が欲しいだと!と叱られるかもしれない。そう思ったんじゃないのか?”ってね。」
「・・・・・・。」
孝も、まるで自分が言われているようで、当時の父親同様に言葉が出なかった。
(つづく)