第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その27)
「う~ん・・・、それも考えたんだが・・・。」
父親は孝の意見にそう同調してくる。
「・・・・・・。」
孝は深追いをしなかった。父親の言葉尻に微妙な余韻を感じたからだ。それに続く言葉がちゃんと準備されているように思えた。
「その当時、ラジコンを取り扱っている店は非常に少なくってな・・・。
お父さんが欲しいと思っていた飛行機も、隣町の専門店にしかなかったんだ。
つまりは、わざわざバスと電車を乗り継いで行かなくちゃあいけなかったんだ。」
「・・・・・・。」
「だから、学校の帰りに、って訳にはいかなかったんだな。
それと・・・。」
「ん? それと?」
今度は孝も追いかける。
「買ってきてからのことを考えるとな・・・。」
「んん? 買ってきてからのこと?」
「ああ・・・、つまりはだ、どう説明をするかってことだ。」
「ど、どう説明するかって?」
「お爺ちゃんとお婆ちゃんにだ。“それ、どうしたんだ?”って聞くに決まっていたからな。」
「う、う~ん・・・。」
孝は言葉に詰まった。
別に父親に何かを問われたわけではないのだが、どうしてか、そのときの父親を自分と重ねていたからかもしれない。
「う~ん・・・、ありのままに言えば良かったんじゃない? バイトして買ったんだよって・・・。別に、悪いことをしたわけじゃあないんだし・・・。」
少しだけ考えて、それでも孝はそう言った。自分だったらそうするだろうとの意思表示でもある。
「嘘をついてたんだぞ? それでもか?」
父親は意外な顔で問い返してくる。
「う、嘘?! ただ、黙ってバイトしただけでしょう? 嘘をついたことにはならないよ。」
孝は、まるで自分のことのようにそう反論する。いや、自己弁護だったかもしれない。
「内緒でバイトをしたってのは事実だが、そのせいで、お父さん、結局は小さな嘘をいくつもつかなければならなくなったからな。結果としては、嘘をついたことには間違いがない。」
「ど、どうして?」
孝は、父親の感性が理解できなかった。
(つづく)