表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/187

第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その22)

「そうした話を聞いてからかな?」

父親は、ふと呟くように言う。

目の前の孝に言うのではなく、まるで自分自身に問いかけているようにだ。

もちろん、それは孝が一方的に感じたことだったが・・・。


「・・・・・・。」

だからでもある。孝は、動きを止めたままで、視線だけを父親に向ける。

先ほどの言葉に続きがあるだろうと思えたからだ。



「お父さんが子供の頃って、どう足掻いても両親には勝てやしないって感覚があった。

だからこそ、そうして内緒でバイトをやったりもしたんだが・・・。

俗に言う、無駄な抵抗だな。」

「む、無駄な抵抗!? ・・・。」

孝はその父親の言葉に軽い衝撃を感じた。で、自然と視線を手元に落とす。

「そうは思わんか?」と今度は自分に向けてこられそうに思ったからだ。


孝には、父親が言った「両親に勝つ」とかという感覚はなかった。

もちろん「負ける」という意識もない。

つまり、親と子供の間で、「勝つ」とか「負ける」という切り口で物を考えたことがなかった。あくまでも「親は親」で「子は子」である。そこには、当人ではどうしようもない位置関係だけが存在をしていた。

その一方で、だからと言って、両親を自分とっての「絶対的な存在」として受け止めたこともなかった。



「ああ・・・、無駄な抵抗だ。」

父親には孝の呟きが聞こえていたようだ。言葉を重ねるようにして言ってくる。

もちろん、孝自身はそれを言葉にしたつもりはなかったのだが・・・。


「ど、どうして、バイトをすることが無駄な抵抗なの?」

孝はようやっとの思いでそれだけを問い返す。聞こえてしまっていた以上、このまま黙っている訳にも行かないと思ったからだ。


「い、いや、バイトをしたことが無駄な抵抗だと言ってるんじゃなくってな。それを内緒でやったってことがだ。」

「ん?」

「つまりは、内緒でってのは、その一時だけってことだ。いずれはばれる。」

「・・・・・・。」

孝は、父親の主張がまっすぐには飲み込めなかった。



(つづく)





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ