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第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その19)

「い、言えなかった?」

孝は敢えて疑問符を付けた答えかたをする。

きっと言えなかったのだろうとは思うものの、それをそのまま言えば父親の威厳がなくなるのではないかと余計な心配もしたからだ。


「孝だったらどうだ?」

父親は孝の答えに反応しないで、違う角度から再び問うてくる。


「ええっっ! ぼ、僕だったら?」

「ああ・・・、お父さんに真正面から言えるか?」

「・・・・・・。」

孝は考える。

だが、それは「言えるか、言えないか」ではない。どうして父親が「孝だったら・・・」という前提条件を設定してきたのかをだ。

それによっては、当然のことながら答え方が180度違ってくる。


「ど、どうなんだ?」

父親が孝の答えを催促してくる。


「そ、そんなこと、急に言われても・・・。」

「その立場になってみなければ分からんってか?」

「・・・・・・。」

孝は小さく頷く。父親にそうと悟られるかどうか分からないほどの小ささでだ。



「お父さん、結局は言い出せなかった。」

父親は孝から視線を外すようにしながら言う。


「じゃ、じゃあ・・・、どうしたの?」

孝は箸を止めて問い返す。

それでも、結果として3万円もするラジコン飛行機を手に入れたと言うのだから、やはりその経緯が気になった。


「だから言ったろ? 小遣いを貯めたんだって・・・。」

父親はまた孝の顔に視線を戻して言ってくる。


「で、でも、3万円って、そう簡単に貯められないでしょう?」

孝は正論をぶっつける。実感でもある。


「ああ・・・、もちろんな。だから、内緒でバイトもした。」

「バイトって?」

「新聞配達だ。夕刊だけだったが・・・。それだと、学校の帰りにやれるからな・・・。」

「えっ! じゃ、じゃあ、お爺ちゃんやお婆ちゃんにも言わないで?」

「ああ・・・。クラブ活動で遅くなるって嘘をついてな。」

「へ、へぇ~・・・、そ、そうだったんだ・・・。」

孝は父親の意外な一面を見た思いがした。


「で、でも、そうした嘘はすぐにばれていたんだが・・・。」

父親は自嘲するかのように笑いながら言ってくる。


「えっ! ばれてたの?」

「ああ・・・、言わなければ分からないだろうと考えるのは子供の智恵の浅はかさだったんだろうな。」


「お爺ちゃんに叱られた?」

話の流れからすると、きっとそうなのだろうと孝は思った。



(つづく)




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