第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その18)
「当然だろ?」
父親は事も無げにそう断言するように言う。
「で、でも・・・。」
孝が粘る。
詳しいことは知らないが、中学生が貰える小遣いであれば、1年分を丸々貯めてもとてもラジコン飛行機が買えるとは思えなかったからだ。
ラジコンをやる友達は、誰もが親に買ってもらうとのことだった。
それが子供としての常識であり、ある意味当然だろうとも思っていたからでもある。
「確か、3万円ほどだった・・・。」
父親は懐かしそうに言う。
「さ、3万円って・・・。」
孝は絶句する。
それが高いものなのか安いものなのかは分からないものの、「3万円」という金額だけが突き刺さってくる。
到底、高校生となった今の自分にも自由になる金額ではない。
「そ、それを自分の小遣いで??」
孝はやはり信じられない。非現実的だと思う。だから、敢えてそう確認をする。
「・・・・・・。」
父親は、答える代わりだと言わんばかりに大きく2度頷いてみせる。
「そ、それは・・・凄いや・・・。」
孝はそう唸るしかない。
「自分が欲しいと思うのであれば、小遣いを徹底して節約することなんて容易いことだ。
小遣いの節約も出来ないのであれば、それはそれだけ自分の欲求が希薄であるってことの証明でしかない。
要は、自分の気持ちの問題なんだ。そうは思わんか?」
父親は孝の顔を見るようにして言ってくる。
「うっ、う~ん・・・。そ、それは、そうなんだろうけど・・・。」
孝は負けを認めざるを得ない。
「現実的じゃあないって顔だな。」
父親が薄く笑った。そして、座りなおすように姿勢を変えて言葉を続けてくる。
「お父さんも、最初は母親に、つまりはお婆ちゃんにおねだりをした。来年の正月のお年玉も要らないから、今、3万円を欲しいってな。」
「そ、そしたら?」
「お父さんに、つまりはお爺ちゃんに直接言えって言われた。」
「・・・・・・。」
孝は、「そりゃあ、そうなるだろう」と正直思ったものの、それを口には出来なかった。
「お爺ちゃんに言えたと思うか?」
父親がまるでクイズのように問うてくる。
(つづく)