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第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その13)

「な、なに! 男? 俺の写メを欲しいって言ってるのは男だってか!?」

孝は折角持ちかけた箸を握れずに言う。

それだけ驚いたということだ。


女の子がそう言っているとすれば、半分は信用できないが、それでも残り半分では「そんな物好きもいるのか」と照れる思いで納得できる部分もある。

だが、それが男だとすれば、それは別だ。

ただ「気持が悪い」と思うだけだ。

鳥肌が立つ。


「そ、そうよ。私の彼氏・・・。」

沙希は可笑しげにそう詰めてくる。

絶好のチャンスだと思ったらしい。


「ええっっ!!! そ、そうなの?」

母親が口を挟む。そして、沙希の方を睨むようにする。

ただ、母親の驚いた部分と孝のそれとは明らかにその内容が違うようだ。


孝は、自分の写メを欲しいと言っているのが男であることに驚いたのだが、どうやら母親は沙希が「自分の彼氏」と公言したことに違和感があったようだ。

確かに、沙希が「彼氏」という言葉を口にしたのは初めてだった。


「さ、沙希・・・、あんた、まさか・・・。」

母親が絶句するかのようにそれだけを口にする。


「まだ、キスだけよ。心配しないで・・・。」

沙希がそう答える。平然とだ。


「キ、キスだけって・・・。そ、そんな・・・。」

母親は、まるで自分の事のように顔を赤らめている。

それでも、ここでは不味いと思ったのか、それ以上は何も言わなかった。


(げっ! キスだけって・・・。)

孝は、別の意味でショックだった。

そう、孝は、まだ女の子とキスをしたことがなかったからだ。

2歳年下の妹に先を越されたという事実が衝撃だった。

しかも、キスぐらい至極当然のことであるかのように言われたのだ。



「そ、その男の子って、沙希の彼氏なんだろ? じゃあ、どうして、その彼氏が俺の写メを欲しがるんだ? どう考えてもおかしいだろ?」

孝は、何とかそれだけを反論する。

理屈は通っていると思っている。


「お兄ちゃん、三浦かのんって子、知ってるんでしょう?」

沙希が孝の顔を窺うように言ってくる。

孝の質問に答えるつもりはないらしい。


「あん? 三浦・・・?」

孝は、その名前には顔がぴくりと動いた。

当然だろう。憧れの女の子である。


「私の彼氏のお姉ちゃんなのよ。」

「うっ、うっそう~・・・!」

「ほ、ほら・・・、知ってるんだ・・・。」

「そ、それは・・・。」


「ねぇ、お兄ちゃんの彼女なの?」

「ち、違うってば・・・、そんなんじゃねぇよ・・・。」

「で、でも、そのお姉ちゃんから頼まれたんだってよ。」

「う、うっそう~!」

「マジ、本当のことよ。」

「ど、どうして・・・。」


「どうしてって・・・、だから、彼氏のお姉ちゃんが、お兄ちゃんの写メを欲しいって言ってるんだし・・・。

きっと、お兄ちゃんのことが好きなんだろうって・・・。」

「ま、まさかぁ~・・・。」

孝は到底信じられない。そんなことがある筈は無いと思う。


あれだけ、連日のように顔をあわせているのだ。

しかも、ずっと真隣の席だ。

それなのに、まともに会話らしいことを交わしたこともないのだ。

あの子が「好きだ」と思っている筈は無いと思う。


「どこで知り合ったの?」

沙希が畳み掛けてくる。



(つづく)





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