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第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その146)

「で、でも・・・。」

孝は自分の頭にあったイメージとの相違をその言葉に込める。

父親が小学校1年のとき、そう、あの台風のような暴風雨がこの地を襲ったとき、父親は今の孝の部屋で寝ていたということだったからだ。


「確かに、お父さんの勉強机や本棚は今の孝の部屋に置いてあったし、寝るときもその部屋に布団を敷いて寝ていた。

でもな、半分はお爺ちゃんが書斎として使っていたんだ。

だから、夜中におしっこに起きたら、お爺ちゃんが枕元の和机で書類を見ていたってことが何度もあったんだ。」

父親は、孝の疑問に直接的に答えてくる。


「へぇ~・・・、そ、そうだったんだ・・・。」

孝は意外に思った。


「つまりは、特にお父さんが専用で使える部屋ではなかったってことだ。」

「そ、それで良かったの? 自分の部屋が欲しいって思わなかった?」

孝は自分と重ねて敢えて訊く。


「う~ん・・・、思わなかったなあ~・・・。

お父さんが子供の頃は、そうして自分の部屋を持つって意識が今ほど一般的じゃあなかったって事もあるんだが・・・。それより、お爺ちゃんやお婆ちゃんと一緒にいる空間のほうがお父さんは好きだったってことなんだろう。

学校から帰るとすぐに果樹園に行って作業を手伝って、夜になってここで宿題などの勉強をしてたんだ。」

「じゃ、じゃあ、このテーブルで?」

「う~ん、そうじゃあなくって・・・。その当時は、ここも今のようなフローリングではなくって、この部屋の中央には囲炉裏が掘ってあってな。」

「ええっっ! 囲炉裏?」

孝はテレビの時代劇で見た光景を思い浮かべながら訊く。

家にそのようなものがあったとは意外だった。


「ああ・・・。」

「ど、どうしてなくしてしまったの?」

孝は自分でも思わなかったことを訊いている。


「ん? ど、どうして? う~ん・・・、時代の趨勢ってことだったんだろな。

あれは、お父さんが20歳になった頃だったんだが、突然にお爺ちゃんが『家を改築する』って言い出して・・・。」

「じゃ、じゃあ、その改築のときに囲炉裏を取ってしまったってこと?」

「ああ・・・。」

「ど、どうして?」

「どうして? う~ん・・・、これは何年か経ってから聞かされたことなんだが、お父さんの結婚のことを考えてくれていたんだ。」

「ええっ! お、お父さんの結婚!?」

孝のその言葉に、父親は一瞬だが恥かしそうな笑みを浮かべた。



(つづく)





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