第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その125)
「あははは・・・、だから、言ってるじゃないか。その兄弟って凄かったって・・・。」
父親は、先ほど自分が言った言葉へと回帰をさせる。
「で、でも・・・。」
そこまで言われても、孝には信じられそうもなかった。
まさか父親が作り話をしているとは思わないが、それでも誇張が過ぎるような感覚がある。そう、1のものを5とか10とかまで膨らませているようにだ。
「その兄弟、一番上のお姉ちゃんから一番下の男の子まで、その歳の差はなんと14歳あった。つまりは、末っ子が生まれたとき、一番上のお姉ちゃんは14歳。中学2年生だったそうだ。」
「げっ! そ、そんなに・・・。」
「で、その一番上のお姉ちゃん、そのことが恥かしくて堪らなかったそうだ。
ま、思春期の女の子だし、どうして子供ができるのかってことは知ってたからなんだろうな。」
「な、なるほど・・・。」
「で、その末っ子が生まれてから、その一番上のお姉ちゃん、2歳年下の次女、つまりは二番目のお姉ちゃんと相談をして、その結果を『子供の総意』として両親に迫ったんだそうだ。」
「ん? 『子供の総意』とは、大袈裟な・・・。で、その内容って?」
「『もう子供は作らないって約束して!』ってことだったそうだ。」
「えええっ! そ、そんなことを!?」
「な、子供だと言っても、侮れないだろ?」
「そ、そう言われた親はビックリしたんだろうねぇ~・・・。」
「そうだろうな。でも、結果として、それ以降は子供が出来ていないんだから、そのお姉ちゃんたちの主張が両親に届いたってことなんだろう。」
「そ、そうなんだ・・・。」
「で、その『子供の総意』事件がきっかけで、母屋に新たに『社長室』と名づけられた子供部屋が誕生したってことらしい。」
「ん? ど、どうして? その事件と、どう関係するの?」
「つまりはな、夜、両親だけが母屋にいるから、次々と子供が出来るんだろうって・・・。」
「ええっ!?」
「だからな、両親が寝室として使っていた座敷のすぐ隣の部屋を新たな子供部屋にしてだ、高学年の子が交代でその部屋を自分ひとりの部屋として使えるようにしたってことだ。
つまりは、一石二鳥として考え出した智恵だったらしい。」
「・・・・・・。」
孝は言葉が出なかった。
それでも、父親が言うとおり、凄い兄弟だったってことは何となくだが実感できるものがあった。
(つづく)