第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その124)
「で、そのお姉ちゃんが言ったんだ。」
父親は、そう言って再びくすっと笑う。
「ん? な、何て言ったの?」
孝はまたまた苛立つ。そうした父親の話の進め方にだ。
「『社長でいられるのは夕方の5時までですからね』って・・・。」
「ん? な、何、それ?!」
「面白いだろ?」
「お、面白くなんかないけど・・・。」
孝は、まるで父親と掛け合い漫才をしているような気分だ。
「その部屋、最初は、純粋に子供ための部屋、つまりは俗に言う子供部屋だったんだな。
ところが、次々と子供が出来ていくもんで、その部屋だけじゃあどうにもならなくなったらしい。」
「そ、そりゃあ、そうなるだろうね。」
「で、その家の父親が、使わなくなった農機具小屋を自分で改装して、そこを新たな子供部屋にしたって言うんだ。」
「へ、へぇ~、農機具小屋を?」
「そこに簡単な床を作って、大きな一部屋にしたらしい。今風に言えば、ビッグワンルームってところだろう。」
「そ、それで?」
「そこからが、その兄弟の凄いところだった・・・。」
「ん? な、何が?」
「子供部屋なんだから、当然に、子供が使う部屋だわな。」
「う、うん・・・。」
「それでも、もとは農機具小屋だ。つまりは、母屋から離れた別棟ってことだ。」
「うん・・・。」
「そうして母屋から離れた別棟で子供たちばかりが日々生活をするようになると、当然に両親の目が行き届かなくなる。」
「そ、それは、分かる。きっと、そうなるだろうね。」
「で、その大村家では、子供が保育園に行くようになると、その子供部屋に移したそうだ。」
「ええっ! ほ、保育園って・・・、あれって、0歳児から預るんじゃなかったっけ?」
「ああ・・・、そうだ。」
「つ、つまりは、0歳の子もその子供部屋にってこと?」
「そうだ。」
「だ、誰が面倒を見るの? 0歳児って、赤ん坊でしょう?」
「もちろん、上の兄弟だ。」
「ええっ! こ、子供が面倒を見てたの?」
兄弟が妹一人だけの孝にとっては、到底信じられない話だ。
そして、どうしてそんな他人の家の話をこうして聞いているのかさえもはっきりとはしない。
(つづく)