表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/187

第2章 タカシの夢はお笑い芸人? (その112)

「う、うん・・・、それは分かるし、分かってるつもり。」

孝も、そうしたことは漠然とだが頭にある。社会に出ていわゆる自立をしていくためには、何らかの仕事に就いて一定の収入を得なければいけないってことは分かっている。


「わ、分かっちゃいるけど・・・。」

それでも、孝の口からは、ついそうした言葉が出てしまう。父親に対してと言うより、今の自分に向けて投げた言葉なのかもしれない。


「・・・・・・。」

父親は、孝の言葉が聞こえなかったかのように黙ったままでいる。

聞こえなかった筈はないのだが・・・。孝の顔をじっと見ていたのだから。



「お父さんは、高校を卒業する時には、もう今の家業をやるって決めてたんでしょう?」

孝は、具体的な話に戻そうとする。そうでもしなければ、父親がもう口を開いてこないような気がしたからだ。


「ああ・・・、そうだ。」

「それって、丁度、今の僕の年齢だよね。」

「ああ・・・、そうだな。」

「よく決断できたなって・・・。」

「ん? 決断?」

「う、うん・・・。」


「さっきも言ったんだが、昔は戦場に出ることは男としての義務だった。15歳で成人すれば、もういつ戦があっても即座に甲冑を着けて刀を持って馳せ参じる覚悟が必要だったんだ。

当人に戦場に行くか行かないかの判断が任されるものじゃあなかった。」

「そ、それはわかるけど・・・。」

「それと同じ心境だった。そう言えば理解できるか?」

「えっ! 家業をやるっていう決断がってこと?」


「つまりは、必然性だ。」

「ひ、必然性?」

「ああ・・・、お父さん、その当時は、家業をやることが必然だと思ったんだ。」

「ど、どうして?」


「どうして? さあ、どうしてなんだろうな?」

「他の道を選択するってこと、考えなかった?」

「う~ん・・・、それを考えた時期もあったんだが・・・。」

「で、でしょう?」


「それって、それこそ『敵前逃亡』だろうって思ってな。」

「て、敵前逃亡って・・・。」

「そうだ。戦国時代であれば、絶対に男として、いやその国に生まれた人間としてやってはいけないことだ。」

「・・・・・・。」

孝は、口の中が乾いていくのを自覚する。



(つづく)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ