第三十四話
「雷遁──【尾雷】!!」
両手の平を擦り合わせ、蕾花が前方へと咲かせ放つ鋭い雷撃。だが、緑光を纏った刹那のシルエットを、その雷電がくぐり抜けることは叶わない。
「冥力が多少上がったとて! お前程度の攻撃、響かない……そして、許さないッ!!」
敵の冥力を隔絶する厚い防御の光を展開しながら、執念のままに追い始めたのは刹那。
スピードとパワーに長けた雷牙の時とは戦法が変わっていたのは、どちらとも。身体能力で勝ると見た途端、積極性を増した刹那の猛攻に、蕾花はミドルレンジからの雷撃の牽制で、突進を躱し、耐え凌ぐのが精一杯だった。
鬼のように気迫溢れる刹那の肉薄を躱し続けるのは容易ではない。一撃貰うごとに、その緑光に触れるだけでも、蕾花の体にダメージが刻まれていく。
そして、ついに挑む刹那の剛腕が逃げようとした蕾花を捕らえた。
「逃がさないッ!! お前をッ!!」
もうその雷で遊ぶ獣のことを逃がさない。刹那は今掴んだ蕾花の腕ごと体ごと、天高く投げ飛ばした。
空中では回避も防御もままならない。先ほど【矢摩嵐】でこの身を不覚にも撃たれた時の意趣返しと言わんばかりに、刹那は緑光を纏ったまま、投げ飛ばしたターゲットへ向かって地を強く蹴り跳躍した。
無防備にも投げ出されたまま、天にのけぞる蕾花。人も獣も抗えないそんな死の予感の漂う宙の中で、だが──彼女は不敵に笑った。
そして、手に掴み取り出した一つの黒い独楽を、己の〝臍〟の上で回し出した。
「……!」
一瞬、トドメを刺そうとした刹那が怯んだ。
その獣は、天へ向かって不遜な臍を突き出し晒し、己の臍上に巻き起こったその怒る雷の渦を、まるで全身で歓喜するように受け入れる。
逆さまに「ぎろり……」睨みつける金色の眼。それが刹那には、挑発と嘲笑に見えた。
「重ね重ね虚仮威しを……! その程度の矛では、私の盾は貫けないッ!!」
刹那は僅かに震えた迷いを振り払い、天で嗤うその獣に向かい、さらに上昇速度を上げた。
「三技ノ漆──【緑燭・影羽織】!! 私は砕けない! お前を砕くッ!!」
「どいつもこいつも偉そうにしやがって……三技なんて──知るかよォッ!!」
放電と回転を続ける独楽からエネルギーを存分にチャージし、姿勢を制御した。さらに足場と化した用済みの黒独楽を蹴り上げ、蕾花は自ら攻め入る。
天を蹴り上げ反転し、鋭く降る青い雷光と、熱を上げ翔ぶ珠のような緑光。
最強の雷の矛と、最硬の光の盾。誰にも譲れない勝負の行方は、互いのプライドと冥力を燃やし交錯する、この最後の〝イチゲキ〟に委ねられた────。




