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営業課

経理課の人達が出て行って、入れ替わりに営業課の同期が1名入って来た。


「初めまして。

 加納君の奥様とお父様、私は営業課の峯と申します。

 加納君とは同期です。」

「主人がお世話になっておりました。

 私は妻の加納美月と申します。」

「息子が大変お世話になっておりました。

 海斗の父でございます。」

「加納君、帰って来てないと伺いました。」

「はい。」

「警察には?」

「行方不明者の届を致しました。」

「そうですか……。」

「何か……どんな小さなことでも結構でございます。

 どうか教えて下さいませ。」

「………僕の……勘違いかもしれません。

 勘違いかもしれませんが……。」

「はい! どうぞお話ください。」

「奥様を……傷つけ……あ…………。」

「私を?……………私を?」

「そこでお話を終わられましたら、息子の嫁が不安になります。

 美月さん、どんな話でも聞く勇気が無ければ、代わりに私だけで聞くよ。」

「いいえ、いいえ……大丈夫です。

 どうぞ仰って下さい。」

「分かりました。では、お話します。

 ………会社の者は、あまり知らないと思います。」

「はい。」

「……加納君、女性が居ます。」

「え…………。」

「それは確かなことですか?」

「僕が直接、加納君から聞きましたから……。

 ただ、僕も加納君も酔っていたので、僕の勘違いとか………。

 聞き間違いかもしれません。

 ただ、そんな想いを寄せる女性が居ると……聞いた覚えがあります。」

「その方は? どちらの方ですか? どんな方…………。」

「若い派遣社員です。」

「その方は? 今も働いておられるんですか?」

「いいえ、加納君が退職したのとほぼ同時に居なくなりました。

 女性が居なくなった理由は分かりません。

 契約上のことで、別の会社へ派遣されたのかもしれませんし……。

 ………ただ、加納君と二人で思いつめていて……二人で……ということも……

 あるかもしれません。」


妻は夫を信じきれなくなりそうだった。

同期の営業課の峯が部屋から出て行っても、妻は立ち上がれなかった。

後半は何も覚えていなかった。

「二人で……ということも……あるかもしれません。」―峯のこの言葉が妻の心を刺した。

鋭い刃で刺した。

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