話し合い(3)
妻は峯浩一郎に聞いた。
「合鍵を作ったと仰いましたね。」
「……あぁ……。」
「何時、どんな風にして作ったんですか?」
「貴女に入れて貰って、見つけた鍵を写真に撮った。
それで、作れるからな。」
「私が招き入れた?」
「あぁ、そうだ。
私の息が掛かった者が訪問したんだ。」
「………誰?」
「そこの佐々木ではない。
他にも居るということだ。」
「誰だったんですか?」
「私はね、口を割るほど耄碌する年じゃない。
売るほど愚かじゃない。
………結構簡単に見つかったんだ。
それは、貴女の落ち度だ。」
「………………。」
「これから、置いて居る場所を工夫すれば二度とこんなことは無いだろう。
窓を割って入る場合、玄関ドアをこじ開けて入る場合もある。
何重にも気をつけないといけないんじゃないか?
それに、何も盗られてない。そうだろう?」
「……怖かったです。」
「それは学習するための費用だったと思えばいい。」
「入れと命じた人の指図は受けません。」
「まぁ、そうだな。」
「峯さん、貴方から聞くことは?」
「もう、無い。何も無くなった……。」
「峯浩司という息子が居るのに?
すっかり全てを貴方は失ってはいない。」
「そうだな……浩司が居る。早苗も居る。」
「美月、聞きたいことはある?」
「もう無いわ。」
「じゃあ、お暇しよう。」
「ええ。」
「峯さん、帰ります。
僕は貴方のことを許しません。
それだけは言っておきます。
失礼します。」
「失礼します。」
峯浩司の声が後ろから聞こえた。
「加納!」
「峯……もう会うことは無いな。」
「うん、そうだな。」
「元気で居ろよ。」
「お前こそ、元気で!」
応接室を出る時、威厳も感じられない峯浩一郎の姿がドアの隙間から見えて……消えた。
⦅これで決着は付いたのか?⦆と妻は思った。
夫婦二人だけで家路を急ぐ。
家に帰れば愛しい息子が待っている。




