経理課
課長が出て行って直ぐに夫と同期1名と後輩2名が入って来た。
課長は入って直ぐに「申し訳ございません。私は席を外させて頂きます。」と挨拶して、部下に「君達、出来るだけ多くのことを話して差し上げてくれ。」出て行った。
「同期の佐々木です。」
「後輩の安藤です。」
「同じく後輩の南です。」
「主人がお世話になっておりました。
私は妻の加納美月と申します。」
「息子が大変お世話になっておりました。
この度は急に息子が退職し、ご迷惑をお掛けしたことと存じます。
申し訳ございません。」
「いえ、いえ! どうぞ頭を上げて下さい。」
「では、お言葉に甘えさせて頂きます。
また、今日は、このようにお時間を頂戴し誠にありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
「いえ……加納君、帰ってきてないと聞いて驚いています。」
「僕達も驚いています。」
「仕事上でのトラブルなどは……?」
「全く無かったと思います。
人間関係も良好でした。」
「そうですか……。」
「全く思わないことだったのです。退職するなんて……。」
「そうです。」
「その上、行方不明と聞いて、何がどうなってるのか!
済みません。全く分からないんです。」
「いつも奥様のこと、産まれたお子さんのこと……。
嬉しそうにスマホの写真をいっぱい見せて下さってて……。
だから、僕も加納さんの身に何があったのか全く分からなくって……。」
「そうですか……。」
「あの、電話とかLINEとか……連絡は?」
「スマホ……置いて出て行ってます……。」
「………………そうなんですね。」
重苦しい沈黙が全員を包んだ。
何も見つからないままで時間だけが過ぎていった。
「もし、何か気付いたことがあれば連絡します。
連絡先を教えて頂けませんか?」
「僕も教えて頂きたいです。」
「僕も……教えて下さい。」
連絡先を教え合って、同じ課の方に伺う時間は終わった。
「もし、加納君が帰ってきたら……見つかったら教えて下さい。
お願いします。」
「はい、見つかりましたら………。」
何も分からないまま、他の課の同期の方とのお話を伺う時間になった。




