二人の女と妻
夫を愛した女性2人が北海道に居た―その事実は美月には重すぎた。
離婚―この選択へ妻の心が決まりそうになっている。
「佐々木は、俺が憎いのか?」
「当たり前だろう?
妻を寝取られたんだから……。」
「寝取る?」
「あぁ……寝取ったんだ。」
「否、寝取ったりして無い。」
「何を……今更……麻都香は妊娠したんだぞ!」
「妊娠? する訳ない!」
「したんだ。麻都香がそう言った。」
「100%じゃないって言うものね。」
「何がだ?」
「避妊……間違った使い方をしたりすると……妊娠するでしょうね。」
「だから! そんなはず無いんだ。」
「麻都香は俺と離婚して、お前と再婚すると言ってた。
メッセージに………これを見てくれ。」
夫はメッセージを見て驚いた。
それは夫と麻都香が深い仲だと伝えているメッセージだった。
「加納、お前、北海道の女性と麻都香を虜にして……世話をして貰ってたんだろ
う?
どんな風に?
え? なぁ、どっちが本命だったんだ?」
「佐々木……誰にも身の回りに世話なんかして貰ってなかった。」
「嘘ばっかだな。」
「佐々木。」
「俺は、何もかも持ってるお前が羨ましい……し……憎い。」
「佐々木、聞いてくれ。」
「麻都香……を捨てるのか?」
「捨てるとか……付き合っても居ないのに……。」
「でも! 佐々木さんの奥さんと北海道で会ってたのよね。」
「……会ってた。」
「北海道の元カノさんにも頻繁に会ってたんでしょう?」
「……そうだ。でも! 美月が考えているような仲じゃない!」
「妻の私だけが蚊帳の外よね。」
「美月……。」
「蚊帳の外で6年間も?
酷過ぎるな……逆の立場なら、加納、お前も酷いって思うぜ。
なぁ、加納。
麻都香は峯浩一郎に頼まれたことを充分にしてなかった。
何も無い……そう報告してたんだ。
何も無かったって訳じゃないよな。
お前は村上と連絡を取ってた。
それで、あの騒ぎを起こしたんだ。
そうだろう?
麻都香はお前の為に何も無いと報告したんだ。
だから、お前は出来たんだぞ。」
「……佐々木……6年間、誰とも俺は寝てない。
それだけは言っておく。
麻都香ちゃんがどう思ったのか分からない。
北海道に来て会ったよ。
ただ、俺が付き合ってた彼女にも接してきたから……。
それは止めるように頼んだ。
それだけなんだ。
何もしてないのに妊娠って……あり得ない。
あり得ないんだ。」
「麻都香はお前の子だと言っている。
……俺はね。会社のこと発覚して良かったと思ったんだ。
峯浩一郎が落ちて行く姿を見られて嬉しかったよ。
それは感謝してる。ほんとだぜ。
加納、お前が離婚して麻都香と再婚したら………。
幸せにしてやってくれ。頼む。」
「佐々木さん……離婚されるんですか?」
「もう、それしかないんですよ。
愛されなかった夫なので、退場するしかありません。
加納の家に行ったら会えると思ったのにな………。」
「会えるはずない。
俺は麻都香ちゃんがどこに居るのか知らないんだ。」
「そうか……そういうことにしておくよ。」
「佐々木……。」
「じゃあな、もう二度と会うことは無い。
俺も峯も退職したんだ。
これから就活なんだ。
家も売却する。
全てを終えた。
………奥さん、済みませんでした。
奥さんを傷つけました。」
「いいえ……原因は主人ですから……。」
「優しい人だ。貴女は……。
では、失礼します。」
佐々木が出て行った夫の家で妻は涙が出ない自分に気付いた。




