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三人家族

いつもより早い迎えに息子は喜んだ。

そして息子の視線は夫に注がれた。


「パ……パ……?」

「そうだよ。パパだ……ひーくん、覚えてくれて……ありがとう。」

「パパ! パパぁ―――っ!」


夫に抱きついた息子は傍に居る保育士に笑顔で誇らし気に話した。


「先生、僕のパパ!」

「まぁ、今日はお父さんもお迎えに来て下さったのね。」

「うん!」

「良かったわね。」

「うん! 先生、さようなら。」

「さようなら。」


保育士と話した後、息子は夫と手を繋いで歩いた。

その表情は嬉しそうだった。


「パパ、今日は一緒に居る?

 もう、どこにも行かない?」

「ひーくん、パパ……一緒に居てもいい?」

「うん! 一緒がいい!

 ねっ! ママ!」

「ひーくん……。」

「パパ……。」

「うん?」

「パパ……。」

「何だい?」

「えへへ……。」

「パパって呼んでみただけなの?」

「ママ! いいでしょ!」

「そうね……会いたかったものね。」

「うん!」


妻は息子の様子を見て⦅離婚したら……悪い母なのかな?⦆と心が揺れた。

夫が何の連絡もしなかったことも、大学の頃に付き合っていた女性の支えを得て居たことも……息子の喜ぶ姿の前では些細なことのように思えた。


息子が燥ぎ過ぎて疲れて寝てしまってから、再び妻は夫と今後のことを話し合った。


「俺のことを許さなくてもいい。

 捨てたと言われて反論できないことをした。

 だけど、もし、出来るなら……三人家族で暮らしたい。

 直ぐに離婚ではなく、出来れば……再考して欲しい。

 頼む……頼みます。

 もう一度やり直させて下さい。」

「あの人とは切れてるの?」

「あの人?」

「元カノさん。」

「切れてるも何も……何も無かったから……証は無いけど……。

 連絡を取ってないよ。

 信じて貰えないと思うけど、北海道を出てから連絡を取ってない。

 就職できたことは彼女のお父さんに電話した。

 働かせて貰ったから……そのことは伝えた。

 それと、『早く家族の元に戻りなさい!』と言ってくれてたから……。

 戻る為の就職だったから、『安心した。』と言ってくれたんだ。」

「そう……。」

「彼女よりもご両親との方が近かったから……距離が……。」

「そう……。」

「信じられないよな。」

「ええ。」

「これから、ひ―くんの成長を見たいんだ。

 傍で見届けたいんだ。

 夫婦として終わってるって美月は言ったけど、俺は終わらせたくない!

 お願いだ。もう一度……考えてくれ。

 お願いします。

 もう一度、俺と夫婦として暮らして下さい。」

「………私の気持ちは………。」

「うん。」

「離れていても、いいの?」

「取り戻したい! 美月の心を俺は取り戻したいと思ってる。」

「…………ひーくんの親権を渡す気は無いわ。」

「……そうだよな。」

「ひーくんの心をこれ以上壊したくない……それだけは、どんな結果でも変わらな

 いわ。」

「それは俺も同じだ。」

「いつまで、こっちに居るの?」

「出来たら直ぐに美月と陽向と暮らしたいと思って、家を探してたんだ。」

「えっ?」

「出来たら、美月のご両親の傍で……って思ってるんだ。

 ひーくんの保育園も小学校も変わらなくていいだろう。

 だから、家を見つけたら……俺はそこに住むよ。

 例え一人でも……可能なら三人家族で……が理想だけど、な。」

「ひーくんのことを一番に考えてくれるの?」

「勿論だ!」

「そう……。」

「再考してくれ! 頼む!」


夫は頭が床に着くほど深く土下座した。

妻の心は揺れていた。

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