実家
妻は父に謝る夫の後姿をぼんやりと眺めていた。
愛息の父親の後姿を……待ち望んだ夫の後姿を……愛していた男性の後姿を……ぼんやりと眺めていた。
今は夫を愛しているのか分からない―そう妻は思った。
義父が「あの……。」と言葉を発した。
「話し合わないといけないことが多いと思うんですが……。」
「そうですね、美月と海斗君はこれからのことを話し合うべきですね。」
「僕はそのつもりです。美月……いい?」
「……えっ? 何?」
「これからのこと、二人で話し合いたいんだけど……いいかな?」
「これからのこと……ええ、話し合わないといけないわ。」
「海斗君、うちで話し合うのはどうかな?
美月、いいか?」
「……ええ。」
「陽向が待ってるからな。早く帰らないと……な。」
「ひなた……ひーくんに……会ってもいいんですか?」
「勿論だよ。美月もいいな。」
「……待って! ひーくん、1年間も会えなかったのよ。
それなのに…会うの?
会わせるの?」
「美月……これからは今までよりも会えるだろうから……。
例え離婚しても、な。」
「りこん………。」
「海斗、当然だ。」
「うん、父さん。」
「母さんを呼ぶぞ。」
「はい、父さん。」
「美月さん、うちのも話し合いに同席させて下さい。」
「お義母さんも……はい、結構です。」
「今日一日で決まるかどうかも分からないけれども……海斗君、今日、陽向に会う
ということは、これからは陽向が会いたいと言った時に会ってやって貰えるんで
しょうね。」
「はい! これからは会えます。」
「どこに居ても?」
「うん、約束するよ。美月……。」
「違えないかしら?」
「守るよ。」
「……その言葉、忘れないで。」
「うん。」
実家で義両親と両親を交えて夫と話しあうことにした。
4人で実家に向かった。
実家では母が待っていた。
息子は保育園に居る。
実家で両親に支えて貰いながら息子を育てている妻。
夫はどのような判断をしてやって来たのか―今は誰も知らない。




