違和感
妻は、ほんの僅かな違和感を覚えながら夫と佐々木の話を聞いていた。
「加納、お前……今どこに居るんだ?
奥さんと住んでないんだろう?
帰ってないんだろう?」
「……うん……。」
「一人で暮らしてるのか?」
「……まぁ、な。」
「6年間も一体どこに居たんだ?」
「それは言えないんだ。」
「奥さんにもか?」
「そうだ。」
「夫婦だろう?
夫の居場所が分からないって不安だぞ。」
「分かってる。」
「分かってないよ。分かってたら、どこに居て何をしてるか伝えてるはずだ。
お前はそれをしていない。
今、どこから来たんだ?
誰かの支援を受けてるのか?
村上か……それとも他に居るのか?」
「何を知りたいんだ?」
「えっ………何を知りたいって……俺は奥さんの気持ちになって言っただけだ。」
「そうか……ありがとう。
でも、それは夫婦だけになってから話すことだと思う。」
「そうだな……俺は他人だからな。部外者だな。」
「夫婦間のことは二人になってから話し合う。」
「分かった……加納、お前が無事でいてくれて良かったよ。」
「心配かけて済まなかった。」
「否……気にしないでくれ。」
「佐々木、お前に話が終わったんなら帰るよ。
父と妻と帰るから……。」
「どこへ行くんだ? ご実家か? それとも奥さんの所?」
「それも、これからの話し合いで………。
佐々木、いつか……この問題が終わったら、ちゃんと話すから!」
「分かった。
奥さん……お父さん、今日はご足労頂き本当にありがとうございました。」
「いいえ……。」
「海斗に会って貰えて良かったと思います。」
「ええ……僕もそう思います。
………お父さん………。」
「はい、何か?」
「はっ………いいえ……何でもございません。」
「そうですか……佐々木さん。」
「はい。」
「御母堂様……いや……お母様とお二人だけで暮らしておられたんですね。」
「はい。」
「お父様とのご関係はお辛いと思います。」
「はい。」
「見守って下さっていますよ。お母様が……。」
「母が……。」
「お祖父様、お祖母様はお健やかで?」
「はい、恙無く……。」
「それは、良うございました。
お祖父様、お祖母様の為にも佐々木さんもご自愛ください。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ……元気でな。」
「あぁ……加納、お前も元気で……。」
「さようなら。」
「さようなら。」
ホテルを妻は父と義父と……そして夫と4人で出た。
複雑な気持ちのまま妻は歩いた。言葉なく………。




