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対峙

ドアがノックされた音を聞いて佐々木は言った。


「何も頼んでいないのに……なんだろう?」

「……出ます。」⦅もしかしたら……海斗さん?⦆

「奥さん?」


妻がドアを開けた。


「美月!」

「……あなた……。」

「加納! なんで?」

「俺が電話したんだ。」

「えっ?」

「佐々木さん……。」

「佐々木、偶然だったんだ。

 家に戻りたくて電話をしたんだ。

 そしたら、佐々木と会うって聞いて……。」

「偶然? そんなこと……あるのか……。」

「そうだよな。」

「タイミングが良すぎる。」

「そうだな、絶妙のタイミングだ。」

「加納………。」

「俺のこと恨むか? 佐々木。」

「恨む? 従業員のこと考えなかったのか?

 信じられない……会社の経営が成り立たなくなるかもしれないのに……。」

「そうだよな。信じられないのは当たり前だよな……俺とは別の道だから……。」

「別の道ぃ?

 俺は何も聞いてなかったんだぞ。

 何も相談せずに上に言ったのは誰なんだよっ!」

「俺だよ、誰にも話さずに調べた。」

「加納、なんで……なんで週刊誌に売ったりしたんだ。

 内部告発を握りつぶした専務は……自業自得だけどな。

 週刊誌に売るんじゃなく、別の方法が無かったのかよっ!」

「売ったりしていない。」

「売ったから出たんだ。」

「金銭の授受はしていない。」

「ほんとかよ……困ってたんじゃなかったのか?」

「困ってたから情報提供したんじゃない。

 内部告発者を守る気さえなかった会社に対しての……俺の反抗だ。」

「………会社には何も知らなかった従業員とその家族が居るんだぞ。」

「うん、そうだな。」

「あんなこと知ってた従業員は、ほんの一握りだ。」

「そうだな。」

「それでも、か?

 それでも、だったんだな。」

「そうだ。」

「週刊誌……と、どんな風に繋がったんだ?」

「退職した後輩が繋げてくれた。」

「えっ?」

「急に実家の家業を継ぐために辞めた後輩が居ただろう。」

「居たな……まさか……家業って言うのが週刊誌……。」

「違うよ。彼の友達がたまたま出版社に勤めていたんだ。」

「スマホ……持ってなかったのに、どうして?

 どうやって連絡したの?」

「メール、パソコンで……ごめんな、美月……美月に連絡しなかったのに……ごめ

 ん、ごめん。」

「それが、どうして、どうなって、表に出たんだ?

 ただの後輩の友達で知り合うはずが無かっただろ?

 それが、そうじゃなくなったのは、何時だ?」

「このことを出さないといけないと思ってたから、会社を辞めた後も、ずっと模索

 してた。」

「模索してた……模索して後輩に相談したのかよ。」 

「違う。相談を受けたのは俺だったんだ。

 最初に気付いたのは俺じゃないんだ。」

「あいつ、なのか?」

「あぁ、そうだ。

 ただ、村上は辞めなきゃならなくなった。

 お父さんの入院で……。

 それで、俺が村上の仕事を引き継いだから、連絡を取っていたんだ。」

「あいつの仕事……辞めた先輩から引き継いだんだったな。」

「そうだよ。ずっとあの会社との契約だけをやっていた山川さんから村上が引き

 継いだんだ。」

「山川さんが定年退職しなければ、表に出なかったんだな。」

「そうだな。」

「それで、村上は何を言って来たんだ?」

「出しましょう!と……俺の内部告発が握りつぶされた時に、彼はそう言った。

 そして、俺に友達を紹介してくれたんだ。

 それは、俺の退職後だったけどな。」

「資料は? 取られたんじゃなかったのか?」

「バックアップしてたから……USBメモリーに入れて持ち出した。」

「取られなかったのか?」

「あぁ、無事に村上に渡した。」

「何時?」

「退職してからだ。」

「それを村上が出版社に勤めているとかいう友達に渡したのか?」

「あぁ、そうだ。

 だがな、俺たちが動かなくとも出てたと思う。」

「何でだ?」

「週刊誌は嗅ぎつけてた。」

「まさか……そんな……。」

「議員と直接関係した会社は議員の親族の会社で、目星を付けてたみたいだ。」

「議員の懐は温かかったのか……。」

「そうだな……でも、会社も儲けたんだ。」

「まぁ……そうだな。

 …………加納。」

「何だ?」

「タイミング良すぎだ……たまたま帰りたいと電話をしたら、俺に会うことを知っ

 たって……タイミング良すぎだ。」

「ふっ……くくくっ……そうだな。」

「……会えて良かった。」

「会いたくなかったんじゃないのか?」

「会えるとは思ってなかったからな。

 でも、会いたかったのも本音だ。

 だから、奥さんに電話を架けた理由の一つが加納に会うことだった。

 謝りたかったから会えて良かった。」

「謝る? なんで? 佐々木が?」

「謝りたかったんだ……俺は……。」


佐々木はソファーに座った。

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