指定の場所へ
スマホに表示された「海斗さん」の文字を見て、妻は一瞬躊躇った。
父の「誰からなんだ?」という声で、「海斗さんから……。」と答えてから、躊躇いを振り払うように電話に出た。
「海斗さん?」
「美月……電話に出てくれて、ありがとう。」
「……あの……何か用?」
「これからのことを話し合いたいと思って……ひーくんのことも……。
会いたいんだ。美月とひーくんに……駄目かな?」
その時、義父が言った。
「スピーカーにして! 美月さん。」
「はい。」
「美月?」
「海斗か?」
「父さん! なんで?」
「今から言う場所に来い! 来られたら来い!」
「何?」
「早く来いよ! 場所は………。」
「分かったけど、なんで?」
「お前の同期の佐々木さんが美月さんを呼び出した。
その指定場所だ。」
「美月を!」
「美月さんには、お父さんと私が付いている。
だが、これはお前が終わらせる必要がある。」
「分かった。行く!」
「海斗君、頼むよ。」
「お義父さん! 済みません。こんなことに巻き込んでしまって……。」
「謝るのは私にではないはずだ。違うかな?」
「いいえ、仰る通りです。
今から向かいます。」
「頼むよ。」
電話を切ったのは、妻の父だった。
「あっ……切ってしまった。」
「いいよ、お父さん。」
妻は義父に聞いた。
「あの、お義父さん。」
「なんだい?」
「海斗さんが間に合うとお思いですか?」
「多分、海斗は北海道には居ない。
多分、首都圏に居ると思う。
あの記事を書いた出版社の本社があるのは首都圏だ。」
「そうですか……。」
「兎に角、向かおう。」
「はい。」
それから3人は歩いた。
指定された場所へ向かうために歩いた。
再び訪れた沈黙の中を3人は歩いた。




