着信
検察庁が動いたようで、連日テレビを賑わしている。
そんな状況になった頃、夫の元同僚から電話が架かって来た。
「奥さん、お久し振りです。
佐々木です。」
「佐々木さん、お久し振りです。」
「近日中にお目に掛かりたいんですけれども……如何でしょうか?」
「……あの、どのようなことで?」
「あの事件についてです。」
「……私が聞いて良いのですか?」
「ええ、関係者のご家族ですからね。」
「関係者……って、主人のことですか?」
「ええ、そうですよ。」
「……主人が何か?」
「何もご存知ないんですか?」
「ええ、全く。」
「聞いてるでしょう! 加納から!」
「……何のことでしょう。」
「嘘はいけませんよ。」
「本当のことです。嘘などどうして吐く必要があるんですか?」
「……まぁ、いいでしょう。
こちらが指定した場所へ来て貰います。
ご主人と一緒に、ね。」
「主人とは連絡も取れておりません。」
「今から言う場所へ来て下さい。
場所は………。」
妻は慌ててメモを取った。
佐々木は「来て下さいよ。」と言って一方的に電話を切った。
妻の身体は震えていた。
「ママぁ~。」と呼んだ息子を抱きしめた。
妻は母に話してから、義両親の家へ電話を架けた。
「佐々木さんから、そんな電話が架かって来たんだな。」
「はい、お義父さん。」
「分かった。私も同席するよ。」
「お願いします。
………あの……海斗さんのスマホ……。」
「あぁ、私が預かったスマホだね。」
「ええ、北海道に行く時に持って行くのを忘れてて……。
お義父さんに預けました。」
「うん、受け取って直ぐに北海道へ送ったんだ。」
「そうですか。会いに行かれなかったんですね。」
「会いに行くのが正解だったと思うんだが……それは普通の時で……。
会社の闇を知った者が身を隠したんだ。
あまり動かない方が良いと判断した。」
「そうですね。」
「海斗から電話が架かって来ないままなんだな。」
「はい。」
「そうか……まだ終わっていないからな。」
「お義父さんは今の状況を作ったのは海斗さんだと思っておられるんですか?」
「それしか無いだろう……そう思っているよ。」
「そうですね。」
「美月さん、海斗から必ず電話が架かって来る。」
「そうでしょうか。」
「架かって来るから……その電話を受け取ったら夫婦の話が出来るからね。」
「はい。」
「その前に佐々木さんとの話し合いを無事に終えないといけないな。」
「はい、お願いします。」
「行こう。」
妻は息子を母に見て貰い、父と義父と3人で佐々木が指定した場所へ、指定した時間に着くように向かった。
その道中で、会話は無かった。
無言で歩く3人だった。
その時だった。
妻のスマホに着信があった。
表示された名前は、「海斗さん」だった。




