家族の行方
これから夫はどの道を選ぶのか―妻にとっては勿論、息子にとっても重要な話し合いを始める。
その前に妻が夫に聞いた。
「……しかるべき時に、しかるべき人へ話すつもりなんでしょ?」
「うん。」
「それって誰を想定してるの?」
「それは……考慮してる。」
「まだ考慮してるの?」
「そうとしか言えない。」
「何故?」
「誰に話すのかも、いつ話すのかも言えない。
美月は何も知らないで居て欲しいんだ。」
「なんで? なんで? 私は永遠に蚊帳の外なの?」
「知らない方が幸せなこともある。」
「怖いのか? まだ何かされる可能性があると思ってるんだな。」
「父さん…………そうだよ。
もう5年経ったけど、まだ5年なのかもしれないんだ。
もし、父さん母さんに何かあったら……。
美月や幼い陽向に何かあったら! 俺は……。
美月や陽向を危険に晒せない!
だから、今後のことだけど……俺はこのままで居たい。
もし、もし………美月が離婚を求めたら応じる、よ。」
「りこん……。」
「美月、守る術が今の俺には離れていることでしか出来ないんだ。
………ごめん。」
「あのね……海斗。」
「何? 母さん。」
「本当に、本当に、そんなドラマみたいなことが起きると思ってるの?
そんなことしたら、警察が動くでしょ。
そしたら、全て白日の下に晒されるわ。
そしたら、会社は大打撃よ。
そんな馬鹿なこと……するはずないじゃないの!」
「カイちゃん、脅された時の言い知れぬ恐怖が残ってるんだな。
だから、何かされると思い込んでるんだ。違うか?」
「分からないよ。
身を潜めて生きるしか無かったんだ。俺は……。」
「でも会社の妙なお金の流れは表に出したいのね。あなたは……。」
「そうだよ、美月。」
「出す方法を探ってるから、それが終わるまで待ってくれないか?」
「終わりが見えないわ……待てると思ってるの?」
「それは……俺の我儘だ。ごめん。」
「待てない……と思っていて。
でも、ひーくんのことだけは忘れないで!
あの子は、あなたを、待ち続けるわ。
あなたは父親なのよ! 親としての責任を果たして!」
「……うん! 忘れない!
ひーくん、大きくなって……ハイハイも、タッチも見たかった。
見たかったんだ………。」
「これからは見逃さないで! お願いだから……。」
「その前に終わらせるよ。」
「一日も早く終わらせて、そして帰って来て!」
「うん………帰らさせてくれ……。」
夫が言う「終わらせる」がどういう結果を齎すのか―妻には分からなかった。




