父と息子
息子が夫の傍から離れない。
元々、人見知りしない子。
その子が父親の存在を物心ついて初めて感じられたのだ。
嬉しさに溢れている。
輝く瞳に、笑顔に……嬉しさが溢れている。
夫と話せなかった。
義両親も何も聞けなかった。
息子が夫を独占して離れなかったのだ。
「今日は我が家でお泊り頂けるんですよね。」
「……泊まらせて頂けるのですか?」
「勿論です。」
「そのつもりでお待ちしていたんですよ。」
「……お言葉に甘えさせて頂いても宜しいでしょうか?
人数が多いのですけれども……。」
「勿論です。」
「先ずは、夕食をご一緒に……。
それから、お風呂にも入って頂いて……。
お話はお子さんがお休みになられてから…が、宜しいのではありませんか?」
「御配慮ありがとうございます。
そうして頂けると助かります。な、美月さん。」
「はい。ご迷惑をお掛けしますが、何卒宜しくお願い致します。」
「いいえ、楽しいです。」
大人7人と子ども1人で夕食を摂った。
何も無かったかのような賑やかな食卓だった。
義両親も、北海道の夫婦も、従兄も……妻も、想いを今は伏せている。
伝えたいこと、聞きたいことを伏せて賑やかな食卓を囲んでいる。
ただ一人、息子だけが終始笑顔だった。
そして、夫の傍から離れなかった。
「僕、パパとお風呂に入りたい……駄目?」
「駄目じゃないよ。一緒に入ろう。」
「……赤ちゃんの頃……ひーくんはパパにお風呂に入れて貰ってたのよ。」
「そうなの!」
「ええ………そうよ。」
入浴後、「パパと寝る!」と言った息子の願いを夫は叶えた。
息子が寝てから、夫は自分が手放した家族に向き合う時間になった。




