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警察署

遠方だった。

遠方の警察署へ義両親と3人で行った。

息子を両親に預けて……3人で向かった。

義父が運転する車の中は音も、声も全く無かった。

誰も音楽を掛けない。

誰も話さない。

沈黙だけが続く。

重苦しい時間だった。


「ホームレスを襲う若者が居るのです。

 亡くなった方もホームレスです。」

「ホームレス!…………なぜ………。」


妻を抱き支えている義母の手が震えている。

今にも倒れそうな二人を義父一人が支えているのだ。


「しっかりしなさい。お前は母親だろう。」

「…ええ……そうね。ごめんなさい、美月ちゃん。」

「……いいえ……いいえ……。」


「説明を続けさせて頂いても宜しいですか?」

「はい。お願いします。」

「写真も頂いていたんですが、暴行を受けて顔が酷い状態です。

 それで確認が出来ません。

 身体を見て頂いて、ご主人と同じ特徴があるかどうかを確認して頂きたいので

 す。」

「……はい。」

「奥様が難しいようでしたら、ご両親様にお願い致します。」

「いいえ! 私が確認致します。」


義母に支えられながら歩いている妻は、歩いているという感覚さえも無くなっていた。

恐怖が襲ってくる。

妻は心の中で⦅あなた……あなたじゃないわよね……あなたじゃないわよ、ね。⦆と繰り返していた。

夫ではないことを祈る気持ちで部屋に入った。

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