翌日
洗濯物を干し終えて、公園に息子を連れて行き遊んだ。
昼からは買い物に行き、息子の昼寝が終わったら、また息子と公園に行った。
夕方になると夕食を作り、息子にはテレビの子ども番組を見させた。
夕食を作り終えて、夫を待ったがなかなか帰って来なかった。
息子の夕食を終えて、妻は夕食を摂らずに夫を待った。
息子の入浴を終えても、夫は帰って来なかった。
妻はスマホの画面を見たが、夫からのメッセージは無かった。
⦅いつもは連絡してくれるのに……何故? 何かあったのかしら? 怖い……。⦆と、夫が交通事故にでも遭ったのではないかと妻は不安に思った。
その日、夫は帰って来なかった。
夫からのメッセージは送られて来なかった。
妻はまんじりともせず夜を明かした。
一睡も出来なかった身体でも、息子が居る。
妻はいつものように洗濯や掃除をした。
そして、会社に電話を架けた。
会社に行っているのかを知りたかったのだ。
⦅会社に行っていれば……夫は無事だ。⦆と妻は思った。
「お世話になっております。
加納の妻でございます。」
「えっ?……加納さん……の奥様で……あの……何か?」
「あの………主人は会社に……あの……出ておりますでしょうか……。」
「えっ? 奥様……あの………加納さんは退職されましたが……。」
「えっ?」
「加納さんは……退職を……奥様、ご存知なかったんですか?」
どのようにして電話を切ったのかさえ妻は覚えていなかった。
血の気が失われていくような感覚だった。
気が付くと息子を抱き締めていた。強く抱き締めていた。
ただ分かったことがある。
それは夫が失踪したという事実だけだった。




