夫からの贈り物
同僚たちが帰ってから、妻は義両親、両親が居る時に夫からの贈り物を開けた。
段ボール箱を開けた。
綺麗に包まれた細長い贈り物とメッセージカードが入っていた。
それは何も書かれていないメッセージカードだった。
どうやらメッセージを夫は書くつもりだったようだ。
妻は何も書かれていないメッセージが哀しかった。
このメッセージカードに夫は何を書こうと思ったのか―妻はメッセージカードを、何も書かれていないメッセージカードを顔に当てて泣いた。
その妻の背中を母が優しく撫でた。
一頻り泣いて、顔を上げた妻は泣き顔に笑みを作って、綺麗に包まれた細長い贈り物を開けた。
そこに入っていたのはネックレスだった。
小さな宝石が付いているネックレス。
ダイヤモンド0.03ct×1と記されている。
手作りの一品で、注文して届くまで1年以上必要な工房の品だと分かった。
「なんで?
なんで1年以上も前に注文したの?
誰に送る為?」
「美月、あんたに決まってるじゃないの!」
「でも……私にって訳じゃないかもしんないでしょ?」
「美月、これを届けて下さった佐々木さんたちに失礼だぞ。
お前に海斗君が作ってくれたと信じて、わざわざ持って来て下さったんだ。
休みの日なのに……。」
「そうよ。美月、これは海斗さんからの贈り物よ。
あんたが貰ったんだから、あんたへの贈り物!
そう信じなさい、ねっ。」
「美月さん、二人の何かの記念日に渡そうとしたかもしれない……。
そう思って下さい。
お願いします。」
「お願いします。」
「お義父さん、お義母さん……。」
「まだ今日聞いた石井朱里さんという名前の女性が、海斗の不倫相手と決まった訳
じゃないからね。
まだ、決まった訳じゃないんだ……だから、今は美月さんへの贈り物だと思って
いて欲しい。
お願いします。」
「………うっ……ううう………。」
もう1年も経っているのに涙は今も流れ落ちていく。




