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WORLD)SOUL(WORLD   作者: 六等星
消息盈虚編
6/22

5 消火不良

アウトロードと千速シンイチと名乗る1つの人型のエンジンは2人を乗せて、いや正確には少年に掴まらせて凄まじい速度で異世界を駆ける。物凄い風圧で少年が声を出そうとしても、唇が激しく揺れるだけだった。


「ばんべぼべばびぼばぶべべぶべばんば?」


━「ああ!?何言ってんだこのボケ!」━


━恐らく『なんで俺たちを助けてくれたんだ?』でしょうね。━


ガイードは引っ張られるときに少年の中に戻ったため、風圧を受けずに話せるようだ。何故少年の言っていることを理解できたのかは謎だが。


━「追崎からの指示だ!迷子になった挙句、繋界に吸い込まれたボケがいるっつうからわざわざド深夜に東京から爆走してきたんだわ!頭垂れて感謝しやがれ!」━


「ばびばぼぶ!」


━「だが、あの速度で突っ込んだのに耐えてるとこは褒めてやってもいいぜ!中々頑丈なボケじゃねえか!」━


「ばば…ばびばぼぶ!」


━「だから何言ってんだボケ!」━


━恐らく『ありがとう』だと。━


━「礼ならもっと別のもんで払いな!速さでよく見えなかったが、なんかやばそうな奴に襲われてたよな?そいつがまだ追ってくるかもしれねえからトップスピードで行くぞ!振り落とされんなよ!」━


「ばばばぼぶぶんぼばぼーっ!?」


少年は瞼をなんとか開きながら、エンジン音の唸る中必死にしがみついていった。


━「チッ…もう終わりか。おいボケ!そろそろ目的地だ!」━


「べびばびば!」

━繋界ですね!━


勢いは落とさず、繋界に突っ込む。世界側に出ると急ブレーキがかかり、火花と共に停止した。そして少年派必死に掴んでいた指の力を解き、鉄の地面にどてっと倒れる。


「……。」


━「ああ?走ってたのは俺たちなのになんでお前が疲れてんだ?」━


「あんなんほぼシートベルトなしのジェットコースターと変わんないから!耐えただけ褒めてくんない!?」

━私は楽しかったですよ。またお願いします。━


━「へっ、ボケの割には分かってんじゃねえか。」━


「お前は俺の中に入ってるだけだからそう言えんだぞ!一度でも必死に食らいついてみろ!」


そう4人が言い合っていたとき、見覚えのある人と魂が歩いてきた。追崎とチェイサーだ。


「よくやったシンイチ、アウトロード。流石の速さだ。お前たちを信じて正解だったな。」


━「へん!こんぐらい楽勝だわボケ!」━


追崎はまるで謝罪と顔に書いてあるような表情で、2人の前にしゃがみこむ。


「怪我は…ありそうだな。火傷に打撲に擦り傷…。申し訳ない。俺があそこで注意を怠ったせいで命の危険に晒してしまった。」


「別にいいよ!死んでないし。それに全部が全部悪いことじゃなかった。仲間を見つけたんだ。」


━呼びましたか?━


俺の隣にガイードがスッと現れた。


「えーっと、幽霊か何かか?」


「お前幽霊だったのか!?照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即…。」

━魂です!何貴方も般若心経唱えてるんですか!━


「いや、悪かった。ここまで人に近い姿をした魂は珍しいから驚いただけだ。足がないこと以外はほぼ人間だな。とりあえず、お前がお前の魂ってことで良いんだな?」


━「お前お前言ってても分かんねーよ。名前はねえのか?」━


━ふむ、確かに彼にはありませんが、私にはありますよ。私の名前はガイードです。━


「ガイードか。何の魂なんだ?」


━分かりません。━


━「…はあ?なんか隠してんじゃねえだろうなこのボケ!」━

━魂とは森羅万象に宿る意志の具現化。意志がないと成り立たないわけだから、自分が何の魂か分からないなど起こるはずがないんだが…━


「もしかしたら、お前同様、ガイードの方も記憶喪失なのかもな。ガイードに意志がないわけではない。意志が認識下にないんだ。」


追崎は少年が記憶喪失なことを2人に話した。魂という不可解な存在が跋扈するこの世界において、記憶喪失程度は大袈裟に驚くようなことではない。故に千速とアウトロードはいたって平静だった。


「ちなみにガイードの力はこんな感じ。」


俺は立ち上がって壁に触れ、ちょっと伸ばしてみせた。


「壁が伸びた?なんなんだこの力は?」


━伸縮、いや。粘性、これも違う。スライム…うーん、どれもしっくりこない。━

━「マジに意味わかんねえ力だな!本当に使えんのか?」━


「あんま舐めんなよ!30人くらい変な奴ら倒したんだからな!」

━そうですよ!まあ、ホンカイレンセーの大火?って言う恐ろしい者には負けかけましたが。━


一気に場が静まりかえる。アウトロードと千速もエンジン音を静かにするくらいだ。


「…聞き間違えじゃないか一応確認したいんだが、崩壊連星と言ったか?」


━そう、それです!とても恐ろしい人物でした。━

「ああ。とにかく強すぎる!多分手抜いてたと思うんだけどそれでも」


追崎は凄まじい勢いで無線を取り出し連絡を入れ始めた。


「川崎!今すぐに繋界を閉じてくれ!異世界側の近くに大火がいる!今すぐにだ!」


━「久々の全力で周りが見えてなかったぜクソが…!」━


「な、何そんなに焦ってんだよ?確かに只者じゃないだろうけど、このアウトロードと千速?に乗って絶対追いつけないような速度で逃げてきたんだぞ?」


━崩壊連星は只者じゃないで済ませられない。異世界関連の犯罪なら間違いなくトップ。ましてやその幹部の大火なら、恐らくこの程度の距離では…━


閉じかける繋界から炎の弾が5発飛び出した。


「チェイサー!」

━ああ!━

「『リワインド!』」


追崎とチェイサーの前で炎の弾はピタッと止まり、真反対に繋界の方へと飛んでいった。


「ちゃんと受け取ってよ。僕からの手土産だってのに。」


「随分と悪趣味な手土産だな。」


繋界から炎の体が見える。


「やあ2人とも。もう一戦よろしくね!」

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