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WORLD)SOUL(WORLD   作者: 六等星
京葉編
22/23

20 束の間

「皆さん!無事だったすか!」


京葉基地から京葉隊が管理する近くの別の埋立地へと避難した。

出動車から降りると行森兄妹が特殊派遣部隊のもとへ駆け寄ってきた。


「爺さんは?」


「ちゃんと生きてるよマイブラザーたち。本当にありがとう。ただ、火傷を負ったみたいで今は治療を受けてるんだ。」

「やっぱり皆さんを信じて正解だったっすね。ありがとうございました。SST8にもお礼を伝えておいて欲しいっす。あの頑固な爺さんは絶対口に出さないと思うんで。」


「おーい特殊の皆さん!」


SST8、7thが特殊派遣部隊の隊員たちに向けて手を振っている。


「念の為に検査をするのと、千装隊長から話があるそうなので着いてきて下さい!」


「とのことだ。また会おう2人とも。」

「お爺さんにお大事にって伝えといて!」

「またな、行森…あそっか兄妹だからナオトとノア!」


「はい、また!」

「あ、忘れてそうだから言っておくが、出動車の点検は完璧にワタシ様たちがやっておいた!あとちょっとしたオマケも!また派手に乗り回すといい!」


━「またぶっ放していいのか!?」━

「エンジンが酷く劣化してたから暫く運転禁止ね。」

━「ふざけんなボケ!」━

「はーい行きまーす。」

「ちょっとしたオマケ…ってなんだ?」


SST8、7thに連れられて、救護室で全員検査を受けた。戦闘をしたアウトロードと千速含めて異常なしであったため、そのまま建物の奥の部屋に進んだ。そこには千装隊長と残りのSST8が待っていた。


「よく来てくれた。まずは先程の礼を。支援、感謝する。」


「いやあの俺たち本当のマジで何もしてないんだけど…。」

「まあ結果として、アウトロードとシンイチくんはよくやったよね。」

━「フン!まあ俺たちにかかれば暴走意志の一体くらい楽勝だっての!」━

「でも今度から一回連絡しろ!」


「賑やかでいいな。」


「あっいえ、すいません。」


「…ん?」


「追崎…だったよな。なんで頭を下げてるんだ?」


「うるさくしてしまって申し訳ないと。」


「私は賑やかでいいと言っただけなんだが…。」

「千装隊長が真顔で言ったから皮肉に感じ取られたんですよ!もっと笑顔で話しましょう!」

「そ、そうか。」


千装隊長は口角を不自然に尖らせ、不気味な笑みを浮かべた。


「ね、ねえ千装隊長めっちゃ怒ってるよ!」

「どうする追崎?一旦土下座する?」

「乾杯のノリでやるもんじゃないだろ!」


張り詰める緊張感の中、ガイードは目をSST8の方へ向けると、端末を手と服で隠してレンズを千装隊長の方へと向けるのが見えた。


「…。」


━(まさかあれは…スパイ!?どうしましょう、早く伝え…いやそれははやとちりかもしれませんし…。)━


「可愛いなあ…。」


━(はい、そうですよね。不安に思った私が馬鹿でした。)━


「不慣れな笑顔に挑戦する千装隊長、ほんと可愛い…。」

「そ、それ後で俺に送ってくれよ。」

「嫌、これは私だけのものなんだから。」


「えーっと、いいか?とりあえず本題に入ろう。佐々いや3rd、資料を。」


「その呼び方にも慣れてくださいよ。こちらです。」


3rdはプロジェクターに先ほどの襲撃の際の記録映像、写真を映し出した。


「これは空中監視カメラの映像と写真だ。先ほどの襲撃の詳細を記録している。

今回の襲撃で発生した火災の状況も伝えておこう。

今のペースで消化活動を行えば、焼けるのは北ブロックのみで済みそうだと報告が入った。熱探知で北ブロック全体を見渡し、逃げ遅れた隊員はSST8で救護した。念の為、他のブロックも既に避難中だ。」


「不幸中の幸いってやつか。」

━行森兄妹のお爺さんもなんとか無事とのことで良かったです。━


「それで、この襲撃の犯人なんだが…。」


千装隊長は拳を固く握って俯きながら話した。その声には深い怒りと悲しみをできる限り薄くした、そんな感情が入り混じっていた。


「アウトロード、暴れるなよ。」


━「…あ?」━


「これが今回の犯人だ。」


佐々木は冷や汗をかきながら甲州隊長に目配せをして資料を映し出した。拡大していくと、そこにはドレスを身につけた女が映っていた。


━「白のドレス…赤黒い染み…黒い汚れ…!」━


「抑えろ、アウトロード。」


━「………!」━


アウトロードと千速は言葉こそ発さずにいたものの、今までに誰も聞いたことのないような低く唸るエンジン音を響かせていた。


「ど、どうしたんだよアウトロ」

「ミツキ。」


八代を追崎は目配せをして止めた。何か事情があるようだが、それは後で話す、と言ったメッセージを八代は感じ取り口を閉じた。


「今回の襲撃の犯人は"アン"と呼ばれる女。崩壊連星の一員だ。」


アン。色白の肌に赤黒い髪、白いドレスに赤黒い染みと黒い汚れと、白百合に血痕がついたような外見をしている少女。近年突如として現れた崩壊連星の一員。事故現場付近によく現れるという情報から、『知恵』の魂、ロゴスから聞き出した知念総隊長が『事故』の魂の力であると断定した。


「『事故』の魂…もしかしてこの姿が魂装?」


「いや、崩壊連星は皆魂を取り込んでいる。あれはアン自身の姿だ。」


「魂を取り込む?」

━ほら、前知念総隊長が言っていたじゃないですか!大火も『火災』の魂を取り込んでいるって。━


「魂と相棒ではなく主従の関係になる。一体どうやっているのかは分からないが、魂の力を完全に支配している以上、並大抵の者よりは強い。油断のならない相手だ。」


アンの最も厄介な点は、力が未知数ということ。

6年前、関越道花園ICと嵐山PAの間で14名死亡、12名負傷の自動車15台が絡む事故が発生した。その際に炎上する自動車の中を一つずつ覗き込み、死体を見ながら笑みを浮かべている映像がスマートフォンから発見された。それの持ち主は自動車の残骸に腹を貫かれ、高速道路の脇に宙吊りにされ死亡しているのが確認された。

以来、アンが関わったと断定された事故は6件しか確認されておらず、それも自動車の事故のみだった。


「大火のように世代を超えて長く戦い続けていれば、自ずとデータは集まりどんな能力なのか分かる。ただたった6年、しかも同じような使い方となれば未知数としか言いようがない。」


「自動車と自動車をぶつけるだけの力っていうことはないんですか?」


「ないでしょうね。崩壊連星はあの知念総隊長でも分からない情報を多く抱えているとされています。恐らく人間では捌ききれない情報量なのでしょう。そんな集団に自動車と自動車をぶつけるだけの力では到底入れないかと。」


「そうですか…事故ってことは転落や爆発も含まれますし、相当危険な力を持っている可能性もありますね。」


「そういうことだ。とにかく、私たちはアンの次の動きに警戒しなければならない。そのためにもこの襲撃の目的を知る必要がある。」


千装隊長はポケットからボイスレコーダーを取り出した。


「これは私がアンと会話した際の記録だ。」


千装隊長がボタンを押すと、ボイスレコーダーから千装隊長とアンの数分の会話が流れた。音声が先に続くにつれて、エンジン音は荒くなっていった。


━「ご挨拶にパーティだと…?ふざけんじゃ」━


「アウトロード。」


━「ぐっ…。」━


アウトロードと千速は千装隊長の一声で声を殺した。


「ご挨拶、それにこれから始まるパーティ…。」


「アンはまたやってくるってことか!」

━小学生みたいな推理はやめて下さい。━

「小学生なら頭良いじゃん!」

━それ前テレビでやっていた赤い蝶ネクタイの子供のことですよね?━


「でも、なんでだろう?京葉基地にそんな大切なものがあるのかな?」


皆が静かに考えてると、SST8の1人が何かを閃いた様子で顔を上げた。


「…まさか。千装隊長。」


「ああ、私もアレに心当たりがある。」


「アレとは?」


「新型の世界鍵だ。」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「って、考えているでしょうね。」


「ほ、本当にそう思ってるのかなあ?ももももし僕たちの目的がバレたら」


「しーっ。」


アンは怯える少年の口を優しく閉じ、耳元で囁く。


「大丈夫。あのお方の計画が最も成功確率が高いのです。信じましょう。ね?」


「う、うん。でも僕、その目的が達成できるのか、未だに自信湧かないよ…!」


「不安に思う必要はありません。ダイはとっても強いんですから。」


「そんなことないよ!僕まだ世に出てばっかだし…。」


「師必ずしも弟子より賢ならず。ダイは世に跋扈する師たちを打ち倒せるほどの力を持つ、文字通りの超大型の弟子。今回はその力を限ることなく使って、ありのままの姿を見せてください。」


アンは少年の頬に接吻をした。


「さあ、常識外れの夜にいたしましょう。」

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