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WORLD)SOUL(WORLD   作者: 六等星
消息盈虚編
12/22

11 特殊なブタイ

2人は長いエレベーターで下に降りていく。

扉が開き、まばらな人の流れを読んでエントランスと思われる方向へと進んでいく。そうしてエントランスに着いたとき、2人にとって見覚えのある姿がそこにはあった。


━おい、来たぞ。━

「よう、体は大丈夫か?」


「追崎!」

━それにチェイサーも。━


チェイサーに変わりはなかったが、追崎の手は包帯でぐるぐるに巻かれていて、目も少し疲れていた。


━元気そうだな。━


「スタビライザーへの入隊が決まったと聞いた。知らせを聞いたときは驚いたが、この道がお前たちにとって一番いい道かもな。

これからお前たちが所属するのは、俺たちと同じ『特殊派遣部隊』だ。」


特殊派遣部隊は一定の地域を防衛する普通の隊とは異なり、応援要請に応じて出動する。戦闘の増援、輸送の護衛などなど内容は様々。事件や事故に巻き込まれて異世界へ行き、偶然魂の相棒となってしまった人もおり、その中からスタビライザーへの入隊を希望する者の訓練所としても機能している。


「っていう感じの隊だ。」


「へぇー。それで、隊員はどれくらいいるんだ?」


「えーっと、お前を含めると人間は6人だな。」


「少な!?」


「そりゃそうだ。異世界へ行って偶々魂と相棒になったやつなんて本当に滅多にいない。でもその分訓練には集中できるはずだ。」


彼らは新宿から緑の電車、赤の電車を乗り継いで大田区の臨海部まで移動した。春の初めに吹く、涼しくて心地よい都会の潮風が頬を撫でる。高速道路を行き交う車の音の中、大きな公園や流通倉庫の横を歩き続けると目的地に辿り着いた。


「特殊派遣基地、ここが今日からお前の帰る場所になる。」


5階建ての建物と屋内運動場のような建物が隣接している。元々はスタビライザーの倉庫だったのを、基地として改修してできたのがここだ。基地というには少し小さいが、周囲の建物と比べても遜色ない立派な施設だ。

2人は追崎とチェイサーの後を追って、建物の中へと入る。


「お邪魔しまー」


「コラ!待ちなさい1号!」


━ミツキ!左です!━

「え?左がどうかしガッ!」


八代の頭に固いものが勢いよくぶつかった。結構な痛みと共に床に倒れる。


━(๑`^´๑)うう、ハナせ!メンテナンスはいや!━

「そう言ってもう4日目!今日という今日は逃さないんだから…!」

━ (๑`^´๑)いーやー!━

「コラそのアームをしまいなさい!このすっとこどっこい!」


「いてて、いったい何がアッ!?」


立ちあがろうとした八代を追撃するように、アームが頭を叩く。


「何してるんだアヤカ?」


「あ、コウイチ!この子がメンテナンスから逃げまくるからとっ捕まえようとしたんだけど、逃げ足がすごく速かったの!でもちゃんと捕まえたし、一件落着」


「一件事案が増えてるぞ。」


━墓石ってどんなのが良いんでしょうか?━

「ぎゃあー!死んでる!!!」

「生きてるし勝手に墓を選ぶな!」


八代は微かにまだ痛む頭を抑えて立ち上がる。


「ごめんなさい!あたしの子が見ず知らずの人に当たっちゃうなんて。」


「まるで俺には当たって良いみたいな言い方だな…。今日からコイツもここに所属する仲間になるんだぞ。」


「あ、さっきそういう連絡来てたね。特殊派遣部隊に新しい隊員が来るって。」


「俺は八代ミツキで、」

━私がガイードです。━

「今日からここに所属することになりました。」


「あー敬語じゃなくていいよ!ラフな方がやりやすいでしょ?」


「おっけよろしく!」


「ナイス適応!そして、お隣のガイードちゃんはどんな魂なの?」


2人簡単に状況を説明した。2人の名前が仮の名前のこと、ガイードは何の魂か分からないことなど。


「へえー何の魂か分からないことなんてあるんだね。それに崩壊連星相手に一矢報いたなんて…もしかして君たちサイボーグだったりする?ちょっと調べてもいいかな?」


「なんか怖いから駄目!」

━もしかしたら肉体改造すればもっと強くなれるかもしれませんよ?━

「だとしても嫌だ!問覚さんじゃないんだから!」

━問覚さんはサイボーグじゃありませんよ。━


「あ、そういえばあたしの自己紹介もまだだったね。あたしは計良アヤカ。アヤカって呼んで、ラフな方がいいでしょ?元々は工学を専攻してたんだけど…ある日この子と出会って、卒業も間近だったからそのままスタビライザーに入隊することにしたの。」

━( ; ; )うう…ハナして!━


計良に捕まえられた白い小型の機械には液晶が付いており、そこに悲しみを表す顔文字が浮かび上がっていた。


「この子は『プログラム』の魂、名前はオージャ。本当の姿はすっごく小さな信号らしいんだけど、当時あたしが開発していたお世話ロボットにバラバラに入り込んだみたいでね。それをちょちょっと改造して、今はこうやってロボットとして存在してるって感じ。だからこの子たちを呼ぶときは番号で呼んであげてね。

じゃあ、私はこれから1号のメンテナンスをしに行くから、また後で。」


意気消沈したのか、1号は黙ったまま計良に連れて行かれた。


「とまあ、少し変なところはあっても、良い奴だろ?」


その後2人は施設を案内してもらった。

2階のメインルームでは会議を行ったり、共有スペースとしてテレビやソファー、漫画などが置いてあった。


━…さっきから鳴っているこの打撃音はなんですか?━


「あー…またアイツやらかしたな。」


━「お、おい!おいコラ!やめろ!」━


八代とガイードにとって聞き覚えのある、しかし記憶に残っている印象とは異なる声色の声が、打撃音と共にキッチンで鳴っている。

2人は恐る恐るキッチンを覗くと、そこには木刀を手にアウトロードを殴りつける少女の姿があった。


「吐け。早く。」

━「だから!飲んじまったもんは吐けねえんだわこのボケ!」━

「うるさい。吐け!」

━「いつまで叩いてんだ!」━

「こうやって母親が子供を吐かせているの見たことある。」

━「そんなんやってたらガキは小児科通り越して骨折で入院だわボケ!」━


「えっと…こんにちは?」


八代が話しかけると少女の手は止まり振り返った。


「こんにちは。私は」

━「あん!?なんでコイツらがここにいんだ!?迷子は」━

「ふん!」

━「だーっもう分かったっての!」━

「ちょっと俺と離れていような。」


追崎はアウトロードと千速を引きずって消えていった。


「俺は八代ミツキで、」

━私がガイードです。━

「今日からここに配属になったんだ。よろしく。」


「あ、うん。よろしく。」


少女はあっさりと答えたあと、ガイードをじーっと見つめていた。だんだん近寄っていき、ガイードは少し驚いて八代の後ろに隠れた。それでも集中力を切らさない少女は八代の顔が近くにあってもガイードを見ていた。


「あ、あの…。ちょーっと近すぎるかと…。」


そう言って八代が少女の肩をそーっと押すと、少女は驚いて少し顔を赤らめて後ろに下がった。


「あ…ごめん。その、後ろのガイードが人なのか魂なのか分からなくて。」


━私は魂ですよ。━


「魂だったんだ。人間そっくりだったから見分けがつかなかったよ。」


━それは追崎さんにも言われました。━


「やっぱりみんな驚くんだ。ガイードは何の魂?」


「それが、分からないんだよな。」

━です。━


「分からない?」


2人は少女に計良のときと同様ここに至るまでの経緯を簡単に話した。


「珍しい経歴。特殊に来るのも納得。そういえば、私から名乗ろうとしたのに結局まだ紹介できてなかった。…全部このエンジンのせいか。」

━「こっち来んなこの野蛮女!」━


「私は雨龍シズク。今は特殊派遣部隊で研修中。」


「研修中ってことは、本当は別の隊に所属しているってこと?」


「うん。本当は鎌倉隊。でも鎌倉隊は特殊な隊だから、スタビライザーについての基本的なルールを学んで来いって、隊長の兄貴の命令で。」


━ここは果たして基本的なんでしょうか?━


「うーん。まあ、鎌倉よりは。隊長は出張が多いけど仕事はちゃんとやってるし。兄貴は目を離すとすぐに仕事投げ出して街に遊びに行っちゃうの。」


「鎌倉って大変なんだなあ…。」


━「…プハーッ!」━

「おい馬鹿!」


何処かへ行っていたはずのアウトロードと千速は、冷蔵庫を開けてジュースを飲んでいた。雨龍は木刀を振り上げてアウトロードの首を狙った。


「それ、私の。」

━「やっべ。」━


逃げるアウトロードを雨龍は軽やかにキッチンを飛び越えて追いかけていった。


「いつもあんなことを?」


「アイツが勝手に旨そうだと思ったものを口にしていくからな。自業自得だ。」


━あの子、特殊派遣部隊の方が適性あるんじゃないですかね。━


2人は新たな仲間と出会うというイベントを挟んで、引き続き施設の案内をしてもらった。

その中で俺の部屋も案内してもらった。


「部屋だー!」

━ベッドは私のものです!━

「だからガイードはベッドで寝る必要ないだろ!」


「スタビライザーの隊員は基地での居住が強制されるわけじゃない。お前も給料で家を買ったら、休日はそこで過ごすというのも視野に入れてもいいからな。」


「みんな自分の家を持ってるのか?」


「俺は持っていないな。というか、ここの隊員は皆それぞれ違った理由で持っていない。例えばアヤカは『個人的な研究費に回したいの!家賃ケチれるなんてラッキー!』って言ってここに住んでる。」


「ふーん。まあ、俺もここでいいかな。」

━ベッドもありますしね。━

「目を離した隙に掛け布団まで使って…!」


八代がガイードをベッドから引きずり出そうとした瞬間、

グゥゥゥゥ…

「あ」

っと、お腹が鳴った。八代は昨晩から何も食べていない。自然の摂理だ。


「お腹空いたな…。」


「勿論それは承知の上だ。ほら、そろそろ夕飯の時間じゃないか?」


良い匂いが部屋の中へと運ばれてくる。八代は部屋を出てキッチンへと向かうと、数台のロボットが調理をしている光景が目に映った。


━( ̄^ ̄)はいそのトマトとって。━

━(`ω´ )あいよ!━

━( ̄^ ̄)そのリンゴをこっちに。━

━( ´θ`)へいおマカせを!━


━ロボットが料理をしていますね!━


「ふふーすごいでしょ私の7、8、9号!オージャのお陰で料理っていうロボットには難しい作業も簡単にできちゃうってわけ!」


「すごい、すごいんだけど…」


━( ̄^ ̄)んががががが…。これカンセイ。ハコべ。━


7号は口のようなところから食材を飲み込み、腹のようなところからカレーライスを皿へと出していく。八代には正直色合いも相待ってアレを想起させた。


「もうちょっとなんとかならなかった?」

「なーに?いきなり文句?調理のスピードは上げられないよ。これでも結構限界突き詰めたし。」

「いやスピードはすごく早いと思うけど絵面が。」

「ん?口から飲み込んで腹で消化するのは基本でしょ?」

「それは食べた後の話で食べる前のものはそうやって出さないんじゃないか?」

「あ。盲点。」

「実は俺も前からそう思ってた。というかそこからカレーはなんというか、結構まずくないか?」

「気にしないでよ。食用は可能だから。」

「う、うるさい!7号は作るのとっても大変だったんだから!味に問題ないならいいでしょ!」

━「ああそうだぜ!うまけりゃなんだっていいわボケ!」━

「おいエンジン野郎出来た料理をそのまま食おうとすんじゃねえ!」

━( ̄^ ̄)デクチにイブツをタンチ。ハイジョしろ。━

━(`ω´ )あいよ!( ´θ`)━

━「ぎゃーっこっちに来るんじゃねえ!」━


騒がしい準備も終わり、みんな席に着く。


「じゃあ八代ミツキくんの入隊を祝って!」

「いただきます?」「いただきます。」「いただきます!」━「いただくぜー!」━「いただきます。」


八代はカレーライスに毒が入っていないか鼻を頼りに確認してから、口に運ぶ。


「あれ?ミツキくんって香りを楽しんでからちゃんと食べるんだね。丁寧だ!」


「え?あれ?俺なんでこうやって食ってるんだ?」


「食を楽しむのはいいことじゃないか。」


混じり合う様々なスパイス、よく煮込まれて舌の上で溶ける肉、丁度良い野菜の大きさ。八代はこれをとても気に入った。


「これめっちゃ美味しい!」


━( ̄^ ̄)ふん、トウゼン。━

━(`ω´ )おうよ!( ´θ`)━


「なんだかカレーライスって嬉しい気持ちになることが多いから、ミツキくんの入隊記念にこのメニューを選んだんだ!」


━いい選択ですね。━


「そういやガイードっていうか、魂ってご飯食べないのか?」


━お腹が空くって言う感覚は分かりませんね。━

━俺たちの源は意志のエネルギーだからな。食事を摂らなくてもいいんだ。━


「でも、そこのは食べてるけど?」


━「おかわり!」━


魂装(そうそう)状態だからな。━


「そうそう…?」


━人と魂の融合状態みたいなもんだ。━


「ふーん。まあ詳しくはまた今度聞くか。」


「追崎。黒淵隊長が帰ってくるのって明日?」

「ああ、そうだな。お土産もあるとか言ってたぞ。」

「やった。」


「訓練って俺たちも受けるんだよな?その黒淵隊長っていう人が指導してくれるのか?」


「ああ。明日帰ってくるからそのときに挨拶をするといい。」


「気をつけて。黒淵隊長の訓練、凄く重い。」

━「この野蛮女の言う通り重いぜっておい飯中はナシだろやめろ!」━

「重い…確かに重いな。」


━キツいじゃなくて重いなんですね。━

「どういうことだろ?体に重く響くとか?」

━まあなんとかなりますよ。━

「楽観の極み。」


夕食の時間も終わり、八代は風呂に入ってから自室に戻る。


「よし、じゃあ明日に備えて寝るか。」

━そうですね。重い訓練に耐えるために。━


部屋に緊張感が走る。2人がゆっくりと目を横に動かす。目と目が合ったその瞬間。


「俺が先!」━私が先です!━


「残念だったな!俺が毛布を70%分は奪ったGG対あり次の試合はありませーん!」

━ふ、ベッドを半分以上確保されているのに掛け布団をとってどうするんですか?━


毛布の上での不毛な戦いは、30分に渡って続いた。

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