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彼岸花が咲く丘の下で  作者: 卯月 絢華
Phase 02 白いフード
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2

 新庄さん、随分と焦った表情をして電話を掛けてきたけど……一体どうしたんだろうか? 私はそれが不思議で仕方なかった。どうせ新庄さんは私のことを犯人として見ているんだろうし、そんなことどうでも良いんだけど。


 そんなことを考えながら、私はなんとなく亮ちゃんのボロマンションに来ていた。


 当然だけど、彼は不機嫌そうな顔で話す。手にはレモン味のチュッパチャプスが握られている。


「都紀子、一体どうしたんだ?」

「なんとなく亮ちゃんの顔が見たくなったのよ。どうせアパートにいても考えが浮かぶ訳じゃないし」

「なるほど。――しかし、俺だって小説の原稿に行き詰まっているんだ。そこは弁えてくれ」

「それぐらい、分かってるわよ。でも、私だってさみしいのよね」


 私がそう言ったところで、亮ちゃんは正論をぶつけてくる。それはそうか。


「さみしいのか。――そういう理由で俺の顔を覗きに来たんだったら、今すぐ帰ってくれ」

「亮ちゃんはそう言うけど、私は帰らないわよ?」

「どうしてだ」


 私は、当たり前のことを亮ちゃんにぶつけた。


「――私が例の事件について証拠を持ってるとかそんな感じだったら、亮ちゃんはどうする?」

「なるほど。――それ、詳しく教えてくれ」


 意外と亮ちゃんの食いつきは良かった。――チョロいな。


 私は、一連の事件について持っている考えを亮ちゃんに話した。


「これは私の仮定だけど、犯人は何かで身を隠しているんじゃないのかって思ってるのよ。具体的に言えば『目出し帽』とか『フード』とかそんな感じよ。顔さえ隠せば犯人の足取りを掴むことは不可能だからね。それと、昨日芦屋署に行ったついでに不審者情報について調べてたけど、一つ怪しい情報が引っかかったのよね」

「怪しい情報? それって、何なんだ?」

「最近、芦屋川付近で白いフードの人物が目撃されているって話なのよ。多分、そいつが殺人犯なんだと思う」


 私がそう言ったところで、亮ちゃんはガッカリした表情を浮かべていた。


「そうか。――それなら、俺の出る幕はないな」

「やっぱり、そうなっちゃうか……。まあ、良いけどさ。――とにかく、白いフードの人物が誰なのかを調べれば自然と一連の事件の犯人にたどり着くんじゃないかって思ってるのよね」

「なるほど。――ちょっと待った」


 亮ちゃん、何か思う事でもあるんだろうか? 私は彼に詳しいことを聞いた。


「ちょっと待ったって、どうしたのよ?」


 亮ちゃんは、モジモジしながら私の質問に答えた。


「実は、俺……それっぽい人物を目撃したことがあるんだ」

「それ、マジなの?」

「お前の言葉を借りるなら『マジ』だ」


 それから、亮ちゃんは詳しいことを教えてくれた。


「俺がその人物を目撃したのは一週間前の深夜だ。その日の俺は腹が減ったからコンビニへ買い出しに行っていた。そうしたら――白いフードの人物が少女に襲いかかっているところを目撃してしまったんだ。あの時、俺がスマホで警察に連絡すればここまでの大事(おおごと)にはなっていなかったんだろうけど、身体が固まって動けなかったんだ。こればかりは俺の責任だと思っている」

「そうだったのね……。まあ、とっさの判断で警察に電話出来る方が珍しいわよ。亮ちゃんは何も悪くないと思うわ」

「そうだな……。今、事件に関するニュース記事を読んでいるところだが、俺が目撃したのは二人目の被害者の事件だな」

「二人目の被害者……。確か、中村咲那とかいう女子中学生だったっけ?」

「それだ。俺が目撃した事件はそれで間違いない。――ここは、実際に彼女の家へと向かうべきだろうか?」


 亮ちゃんは乗り気だけど、私は――反対だな。


「そういうのは、警察に任せた方が良いと思う。私たちみたいな一般人が関わるようなモノじゃないわよ」

「確かに、そこはお前の言う通りだな。俺たちはおとなしく事件の進展を見守るしか出来ない。――そうか、その手があったか」


 亮ちゃん、何か閃いたっぽいけど……何なんだ?


「その手って、どんな手なのよ?」

「お前、確か刑事のスマホの番号を登録していたな?」

「確かに、『遺体の発見者』ということで新庄さんからスマホの番号を教えてもらったけど……もしかして、亮ちゃんから新庄さんに連絡するつもりなの?」

「その通りだ。――ここは、俺に任せてくれ」


 どうやら、亮ちゃんは本気で事件に向き合うつもりなのか。――仕方ないな。


「分かったわよ。これ、新庄さんのスマホの番号だから」


 そう言って、私はスマホの画面に新庄さんの番号を表示させた。


 もちろん、亮ちゃんはスマホの番号のメモを取り――登録した。


「これで良いか? 確かに登録したぞ」

「分かったわ。――それじゃあ、後は任せたから」


 そう言って、私は亮ちゃんにすべてを任せることにした。

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