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部下の刑事から連絡された場所は、阪神芦屋駅からすぐ近くの場所だった。
新庄敦司が現場へと向かうなり、彼の姿を見たのか――部下の刑事が話す。
「実は、市民公園の近くでこんなモノが見つかって……」
部下の刑事が手に取っていたモノは、まさしく事件の証言にあった「キツネのお面」だった。まさか、荷田敏彦はキツネのお面を脱ぎ捨てたのか?
そういう疑問を抱きつつ、新庄敦司は話す。
「それにしても、どうしてこんな場所にキツネのお面が……」
「新庄刑事、僕にも分かりませんよ。――でも、事件の容疑者はすぐそこにいるんじゃないんでしょうか?」
「なるほど」
新庄敦司がそう言ったところで、彼は白いパーカーを着た男性の背中を見つけた。――まさか。
嫌な予感を覚えつつ、彼は白い服の男性に近づいていく。
そして、間合いを取った上で――新庄敦司は白いパーカーの男性に声をかけた。
「――あなたが、荷田敏彦さんですね?」
男性は、新庄敦司の質問に頷いて、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「――はい」
焼けたただれた肌に、醜い顔。これがキツネ面の男の正体だろうか。
醜い男に対して、新庄敦司は質問を投げかける。
「荷田さん、あなたは少女たちの首を絞めて殺害し、彼女たちの横に一輪の彼岸花を添えた。それは間違いないですね?」
「――はい」
「どうして、そんなことをしたんでしょうか? 仮に上司への報復だとしても、上司の娘たちに手をかけるなんてもっての外ですよ?」
「それは分かっています。――でも、私は自分を地獄の底へと突き落とした落合鉄雄のことが許せなかった! だから、娘の命を奪った! それの何が悪いんだ!」
新庄敦司が何かを言いかけたところで、「自分じゃない誰か」が荷田敏彦に声をかけた。
「――俺の憶測は間違っていなかったようだな」
男性の後ろには、新庄敦司がよく知る女性――遺体の目撃者である伴埜都紀子――もいた。つまり、彼は渡瀬亮介で間違いないだろう。
新庄敦司は、思わず二人に対して声をかけた。
「渡瀬さん、伴埜さん、どうしてここに?」
新庄敦司の質問に、渡瀬亮介は答えていく。
「――詳しい事情は後だ。今は、荷田敏彦が被っている仮面を壊すことが先だ」
「そ、そうですか……それじゃあ、あとは任せましたよ」
そう言って、新庄敦司は渡瀬亮介という小説家にすべてを託した。
「――ここから先は、俺の領域だ」