07話:ポスト601-700
この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku
一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。
「アイドルが街の収入に重要って言ってたからアイドルが稼ぎまくるんだろう」「じゃあアイドルがどんだけ稼げば住民養えるんだよ」
「街はアイドルを求めてるって話だけど、そもそもアイドルをどうやって用意するの?街への移住者の中から選ぶの?」
「選ぶというか、まずやりたい人がアイドルの業務を受託するんだろ。レッスンしてみて才能があれば配信の投げ銭で稼げるから後は勝手に伸びる」
「そんなやり方で本当に稼げるアイドル育てられるのかな」「最初はメラーの既存の所属アイドルを何人か移住させてアイドル活動させるらしいよ」
「根本的にアイドルって虚業だろ?何も世の中の役に立ってない。そんなので銭儲けをして街を維持しようなんて魂胆が気に入らないんだよ」
「まぁ要は信者から搾取するシステムだもんな。怪しい宗教と変わらない」「よく言われてるけどアイドルって偶像のことだからね」
「虚業とか実業とかどうでもいいよ。金が動けば景気はよくなる。もとより営利活動だから世の中の役に立つとか考える必要ないし」
「てかあんなに長い会見したのに分からないこと増えてないか?」「前々から思ってたけど那尊さんが説明すると逆に謎が増えていくよね」
「全国各地でやるライブが安くなるのが一番気になる」「実際安くできるもんなの?ライブの費用や収益って多数の事業者が関わってるんだろ」
「地方ライブなんかは普通の料金でも主催側が赤字になりやすいんだよな。スタッフの移動費や宿泊費かかる割に客少ないから」
「宣伝のために安くするってもそんなんで最終的に黒字出せるならみんなやってるわ。ライブ事情をナメすぎ」
「メラーはむしろこの国で一番その辺に詳しいはずでしょう。芸能界の最大手ですし」「最近ナズに抜かれたらしいが」
「全国で宣伝目的の安いライブやって、街周辺あるいは街の中で儲け目的のライブをやるというわけだろう」「儲け目的ってつまり高額なんでしょ」
「本当に客来るのかね。詠尾って首都の隣県ではあるけどド田舎じゃん」「おらが県を馬鹿にすんな!県庁があるとこはすんげえ都会だべ!」
「田舎なら女の子が移住しないのでは?」「まあ女は都会にしか住みたがらないよね」「それは田舎の男がクソなせいだよ」「まーた始まった」
「街は山間部に作られてるけどアクセスはそれほど悪くない模様」「道路も整備されたしな。距離は最寄りのOR駅までバスで20分ってとこ」
「あんなとこ1日にバス5本も出てないだろ」「人が増えれば自治体がバスを増やすと思うよ」「電車も増えればいいなあ。難しいかな」
「交通よりむしろ泊まる場所がねーんだよこの辺り。駅近は小さいビジホもあるけどライブ客が泊まるには少ない」「元は何もない秘境だからね」
「ライブすると普通どれくらいの客が近くのホテルに泊まるの?」「動員数による。人気歌手なら周辺のでっかいホテル全部埋まるのも珍しくない」
「街の近くにホテルや店もたくさん作られていってるってテレビで言ってたけどそういうことだったのか。ライブ客ってそのまま観光客だもんな」
「じゃあホテルや店の利益は全部メラーのもの?」「テナント契約で他の事業者に土地や建物貸してショバ代で稼ぐ算段かも」
「なんかあれだな。女性だけの街って人が住むための街かと思ってたけど、むしろテーマパークって感じなんだろう。観光収入を見込んでるはず」
「ライブ客は観光なんてするのかな。目当てのアイドルのライブ終わったらさっさと帰る気がする」「そこは観光資源次第じゃね?」
「稼ぎの本命は街の中のライブに決まってんじゃん。街に入るだけで500万」「やっぱ高すぎだろ」「本来は男を入れないための価格設定だから」
「平均的なサラリーマンの手取り1年分以上を小娘の集まりが数時間のライブ一回やるだけで搾り取れるならそりゃボロ儲けだろうな」
「それだけ取るからには豪華なライブになるんだろうね。見合うだけのクオリティじゃないと客来ない」「500万に見合うライブってどんなんだよ」
「でも配信を見たり安いライブに行ったからって、アイドルにそこまでハマるか?」「アイドルに何百万も使うほど執心する奴はたまにいる」
「配信の投げ銭も理解できねえわ。画面の向こうの人間に金投げて何が楽しいんだか」「感謝される。嬉しい。みんな幸せ」「でもどこか悲しい」
「アイドルに自分が認知してもらえるってすごくない?お金を払って認知してもらうというのがおかしいのは分かってる。でも嬉しいんだよ」
「まあ本人が満足ならいいんじゃないかな……」「今更だろ。ネットすらない時代から有名人に顔覚えてもらうために大金を貢ぐ奴はいた」
「それよりプレゼントのシステムも謎なんだが。投げ銭じゃなくて実物が届けられるってどういうことよ?」「ていうか誰が届けるんだ?」
「住民への業務委託じゃね?視聴者が住民に何かをプレゼントしたら別の住民にその配達業務が依頼されるとか」「なんだパシリか」
「実物贈るメリットって何かある?」「配信者の望んでる物をリアルタイムにプレゼントできたら、よろこんでもらえるはず。面白いと思う」
「とはいえ運営があらかじめ用意したリストに限定されてるわけだよな。そこに配信者の欲しい物がなかったらどうするんだ」「我慢するしかない」
「メラーってグループ全体では色んなビジネスやってるから色んな物を準備できるんじゃない?むしろ欲しい物だらけになるんじゃない?」
「食料品、衣類、家電、車、家まで作ってるもんな」「重電や医療や化学も強い」「インフラやエネルギーも押さえてるし最近は農業にも参入した」
「何でも屋さんかよ」「芸能事務所から始めて一代でここまで築き上げた那尊とかいう怪物」「100年以上の歴史があった財閥まで飲み込んだしね」
「ていうか投げ銭しても3割しか配信者の利益にならないって少なすぎだろ」「いや、3割ならそこまで少ないわけでもないよ」
「7割が当たり前って聞いたけど?」「それは個人勢な。企業お抱えなら当然企業の利益も必要だから。それに街は他の住民にまで還元するらしいし」
「プレゼントなら贈った分が全部その配信者だけのものになるんだよな。目当てのアイドルに金を使いたいならプレゼントの方が効率がいい」
「こういう金じゃなく実物が届くサービスって他の配信サイトでやってるとこないの?」「私は聞いたことがありませんね。存在しないのでは?」
「物を用意する手間がかかるわけだしな。それは配信プラットフォームとしては手に余るっつうか、もう別の業種じゃねえかっていう」
「個人が自宅でできるってのが配信サービスのアイデンティティだからね。普通はプラットフォーマーが個人宅に物届ける意味がない」
「視聴者が配信者にバッヂやステッカーを贈れる配信サービスはあるらしい」「客からそんなもん大量にもらってどうすんだよ。嬉しいのか?」
「そういうのはバッヂとか疑似的なものを買って贈るって形にしてワンクッション挟んでるだけで実質投げ銭と同じだよ。ただの建前」
「なんでそんな風になってんの?」「直接カネを投げるのに抵抗覚える視聴者もいるから。あと税金のかかり方が違うとか運営側の事情がある」
「女性だけの街は大勢のアイドルが集まって住むから届けるのが楽だし、自社で作ってる製品の宣伝にもなるんだよな。うまい考えだ」
「それまで興味なかった製品でも自分の好きなアイドルがちょっと褒めただけで選んで買い始めるファンって多いしね」
「要するに配信の投げ銭やライブ収益だけでなく、街に観光させて宿代や買い物代で稼いでさらに自社製品の売上アップも狙ってると」
「それが都合よくいくならたしかにビジネスとして成立するかもな。実際にどれくらいの収支になるのか知らないが」
「しかし今の時点で山間に街ひとつ作って近隣も開発して巨額の出費をしてるのは間違いない。これを回収するのに何十年かかるのやら」
「ずっと気になってたんだけど街を作るにはどれくらいのお金がかかるの?本当に民間企業が出せる程度の額なの?」
「そりゃ場所とか広さとか何を建てるかによるだろ。街とは名ばかりの農地だらけの村ってか里ってか集落レベルだと当然安くなるわな」
「詠尾の山ん中だけど、あの広さでまあまあ大きな建物も作ってインフラ完備しようとしてるから、普通に兆単位でしょ」
「住宅だけで1兆超えるかもな。おそらくほとんどが単独世帯だから集合住宅だらけで安上がりのはずだけど、街ひとつって数万世帯にのぼるから」
「那尊が言ってたような色々なことをするなら、さらにコストが嵩んでいく。数十兆とかになるんじゃね?作った後だって維持費かかるしな」
「街中の配信用カメラは防犯カメラと違って高画質が求められるよね。なら値段も相当高くなる。どれくらいの数を設置するか分からないけど」
「最近うちの近所の駅前をちょっと再開発しただけで数百億炎かかったらしい。当然、税金だけどさ。メラーは自社で全負担するつもりなんだろ」
「普通は家に住む人、店で商売する人が各々で物件を建てたり買ったりするのに。その費用を街ひとつ丸ごと出すって正気の沙汰ではない」
「何十兆炎を本当に出せるのかってのも疑問だけど、出せたとしても簡単に回収できるとは思えない。失敗しそうだな、この事業」
「私は男がいない環境に住みたいだけなのに、なんでこんな変な街を作るって話になってるのかな。住人が見世物にされるとか絶対おかしいよ」
「期待してたのと全然違うよね。心底ガッカリ」「それは普通のやり方で男だけ排除した街なんて無理だからだろ。この話何回繰り返すんだよ」
「そういえば、なんで未成年は立入禁止なのかと思ってたけど、街中が世界に配信で晒されるからなのか」「あとビジネス色が強すぎるよね」
「訪れるだけでネット上に自分の姿がずっと残り続けるんだから、判断力の低いガキが気軽に行って場所じゃねえよなあ」
「今は承認欲求を満たすため自分からネットに顔や名前を晒す子も珍しくもないよ。小銭稼ぎ目的でそうやって我が子を利用する親すらいる」
「一昔前は馬鹿をやればネットに情報が一生残り続ける、デジタルタトゥーなんて言われてたけど案外すぐに忘れ去られる場合も多いしな」
「エロいものがあるから未成年は入れないって意味ではないの?」「そういうのは街中でも住民の個人的な配信でも完全に排除するらしいよ」
「小さい子と親が一緒に映像を見ていられるくらいの健全性を目指すんだってさ。それに反した住民はきっと街から放り出される」
またもや狭凪はコメントする。今や芸能界ではメラーより優位である。以前ほどの必死さは消え、批判的というより小馬鹿にした感じがあった。
狭凪「芸能人とのマネジメント契約は普通なら年単位なので、数十分や数時間の業務委託という形ではもうアイドルとは呼べない気がしますね」
狭凪「さておき事業の方はぜひ頑張ってもらいたいと思っています。街ひとつ作るための巨額のコストをどうやって回収するのか見ものでしょう」
狭凪「型破りなビジネスメソッドで大層話題になっていて羨ましい限りです。でもうちは堅実にやるのみですよ。それで成功してますから」
狭凪「もしかしたらメラーさんは引っ込みがつかなくなっているのかもしれませんが、世間の方々はどうか温かい目で見守ってあげてください」
それまでわずかだった移住応募者が那尊の会見から急増している。意味不明だった募集要項も、説明によって合点がいく者が多かったのだ。
人数は最初から公表されており、その変動の具合から会見が好評だったのは間違いないだろう。数値で会見の出来不出来が可視化されている。
が、応募したからといって街への移住が即内定するわけでもない。応募者数に比べれば内定者数の増え方はすこぶる鈍い。
メラーは厳しい基準で街への移住者をえりすぐっている。巨額を投じたビジネスなのだから下手な人材など入れるわけにいかない。
那尊は会見で自由という言葉を多用したが、自由に移住できるわけではないのだ。そして実際には最低限の規律は守られる必要がある。
少しくらいは横着だろうが軽率だろうが問題ない。それも愛嬌となる。しかし男性との接触が最悪の禁忌だと認識できていなければならない。
ところが、応募者には自由と不規律さえ区別できていない者も多い。単なる冷やかしで応募した者、自己アピールができない者も論外だろう。
アイドルになり得る人材なのだから、自らの魅力を正しく把握し、伝えることに長けていなければならない。また、当然だが容姿も肝心だ。
民衆の興味の基準において、容姿の良し悪しは大きな比重を占めている。多様性という理想で世が啓蒙されようが、人の本質は面食いである。
いかに内面が優れていても外に現れないその魅力を伝えるにはまず注目されねばならず、注目されるには優れた外面が手っ取り早いのだ。
ただし必ずしもひとりの人間が内と外を兼ね揃える必要はない。内面の優れた者の魅力を伝えるには、まず外面の優れた者が人目を引けばよい。
一般にアイドル向きでない容姿でも、女性だけの街では一芸に秀でてさえいればアイドルの素質がある。そのような人材もやはり重要なのだ。
すべての住民がアイドルでなくとも構わないが、素質を持った者が多いのに損はない。全国から応募者が殺到しているので好きなだけ厳選できる。
街の外の人材もふるいにかける。単なるボランティア活動者であり住民に比べれば重要ではないが、質がよいに越したことはない。
世のボランティアは大概が完全な無償で、主催側が頭を下げてでも乞うものだ。このようにえり好みできる状況は特異と言えるだろう。
それを可能にしているのは、やはり有償のためである。宿や食事だけでなく、アイドルのファンとして破格の見返りを得られる。
街への移住者、つまりアイドルが公表されていない段階にもかかわらず、ボランティアも応募が殺到しているのはその見返りの大きさゆえだろう。
「まだよく分からないことだらけなのに、なんでこんなに応募が集まってんの?」「そもそも女性だけの街なんて前例ないしな。怪しすぎだろ」
「那尊さんの話だと住むのにかかる費用は正味ゼロな上に報酬が高いんだろ」「外の男もファン等級を稼げるメリットがある」
「その那尊の話がどれだけ信じられるんだよ。実際は大した見返りもなくただ搾取されるだけかもしれないじゃん」
「ていうか等級とかいう形のないもので釣って金払わせるのが怪しい。徳が上がるからって数珠買わされるのと一緒だろ」
「等級みたいなシステムって珍しいの?」「宗教の階級はまさにそれじゃね?司祭だの僧正だの」「それはお布施で上がるとは限らないけどね」
「動画サイトでたまに見かける。等級が高ければコメントにマークが付いて他のユーザーにマウント取れるとか」「マウント?アホくさ」
「まあ具体的なメリットを設定してるケースはほぼない」「じゃあメラーはメリットがある分だけすごいんじゃん」
「等級1につき疑似通貨の購入レートが1%良くなるんだっけ?規約変更一発で0.5%とかにできちゃうよね」「ゲームでよくあるヌアーフだな」
「社運をかけてこれだけ何年も下準備してるんだから、簡単に信用を失う愚行なんてするわけない」「その決めつけに浸け込まれるパターンでしょ」
「でもこの先そういう改悪がなければ、早い段階から移住したりボランティアしてる方が恩恵が大きくなると思うよ。疑ってる奴は乗り遅れる」