05話:ポスト401-500
この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku
一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。
那尊「5回連続で契約違反しても、その後7回連続で契約満了すれば違反は3回として判断され、さらに2回連続満了すれば違反は1回になります」
那尊「また、一定の日数が経過しても違反カウントは減少します。ペナルティのせいで受託できなくとも、放っておけばいつかは解除されるのです」
那尊「違反に対しては責任を負うべきですが、いつまでも背負わされれば諦めてしまうでしょう。やり直しせるからこそ人は頑張れるのです」
那尊「と、偉そうに人生観のようはものを語ってみましたが、単にその方がエンタメとして面白くなるからというのが本音です」
那尊「不真面目な者が反省して真面目に頑張るというのはドラマチックな展開でしょう。見ていて胸を打たれるでしょう」
那尊「住民に契約違反を勧めているわけではありません。そんな安直な展開ばかりではエンタメになるわけもないのですから」
「業務とはコンビニ店員以外にどのようなものがあるんですか?やはり女性向けのものが多くなるんですか?」
那尊「女性向けというのは、おそらく一般に女性の割合が多い仕事を指しているのだろうと思いますが、あまりそれにはこだわりません」
那尊「男性の割合が多い仕事も業務としてオファーを出すことを想定しています。顕著なものなら工事現場での作業員とか」
「え、女性が工事現場で力仕事をするのですか?それはちょっと無理がある……とまでは言いませんが、なんというか……」
那尊「仰りたい趣旨は分かります。集団として捉えれば女性は男性に比べて筋力が弱い。体の構造上、これは仕方ありません」
那尊「しかし個人の話は別です。周囲の男性より筋力が強い女性など世の中にいくらでもいるでしょう」
那尊「それに、筋力が少しくらい弱くても工事現場で働きたいなら働けばよいではありませんか。その自由を否定するわけにはいきません」
那尊「男女が共存する社会なら、土木や建築には総じて男性ばかりが採用されます。女性がそうした仕事に二の足を踏みがちとの事情もありますが」
那尊「女性だけの街で工事が必要なら、女性がやるべきでしょう。誰もやりたがらないから男性にやってもらうなどという甘えは許しません」
那尊「女性の力だけで社会が成り立つのを証明しましょう。そのためには女性が力仕事をするという選択肢を、弊社が示す必要があるのです」
那尊「選択肢を示すと言っても、業務としてオファーするだけではそう簡単に人材は集まりません。工事というのは専門の国家資格が必要ですから」
那尊「説明が前後しますが、全業務のオファーを全住民に通知するわけではないのです。資格を持っている人にのみ通知する業務もあります」
那尊「当然、資格が必要な業務は報酬も高額になります。それをできる人は視聴者の印象にも強く残り、投げ銭を多くもらえるかもしれませんね」
那尊「なので、街の周辺で弊社スタッフによる資格講座を常に開講し、それも配信します。勉強を頑張る姿も応援したくなるなるものです」
那尊「とはいえ業務を選ぶのも個人の自由です。道路が陥没して早く直さなければならないのに、長期にわたって誰も選ばない場合もあるでしょう」
那尊「そのような場合は、やむを得ず弊社の女性スタッフが街の住民に変わって直すという状況も起こり得ます」
那尊「また、インフラ関連はどうしても法律に則した手続きや検査が必要になり、そのために自治体から男性作業員が派遣されるやもしれません」
那尊「街の中の問題はできる限り住民の力だけでどうにかしよう、というだけの話です。どうにもできない問題は仕方ないのです」
那尊「そしてやはりこれもエンタメとして面白いというのが大きいのです。女性が泥と油と汗にまみれて力仕事。意外性がありますね」
那尊「逆に、いわゆるホワイトカラー業務はできるだけ排除していく予定です。机に向かって事務作業など、何の面白みもないでしょう」
那尊「もちろんそういう仕事をしたいという住民の需要にも少しは応える必要はありますが、そこでなくともできる仕事なのです」
那尊「女性だけの街でやる意味が薄い、エンタメとしても面白くない。だから少なくするというわけです」
「お話をうかがう限り、女性だけの街というのはきわめて不自然な気がしてなりません。まるで箱庭というか、演出として作られているというか」
「普通ならパンを食べたいという需要に応じるためにパン屋を出店して、客に売るわけですよね。でも女性だけの街はそれとは全然違う」
「店、客だけでなく、配信視聴者、街を運営するメラーの事情によって調整されているわけでしょう?エンタメなんでしょう?」
「その状態を本当に街と呼べるのですか?住民の自然な生活ではないと思います。気持ち悪いというのが私の率直な感想です」
那尊「その通りです。不純な要素だらけですね。あえて悪い言い方をすれば、見世物小屋です。視聴者を楽しませて儲けるビジネスです」
那尊「ただ、かろうじて女性だけの街と言えそうなものにするには、こうするしかないのです。申し訳ありませんが弊社の力ではこれが限界です」
那尊「以前にも申し上げたのですが、普通の街のあらゆる空間から男性を排除するのは無理でしょう」
那尊「無理を通すためには莫大なお金が必要で、それを効率よく稼ぐには見世物にするのが手っ取り早いのです」
那尊「しかしこの街が軌道に乗って成功すれば、不純な要素をできる限り廃した街も、ゆくゆくは作れると思っています」
那尊「つまり女性だけの街は、これだけではないのです。続きがあるのです。そのためにはお金だけでなく女性の人材が必要になります」
那尊「先ほど少し触れた、住民に色々な仕事をしてもらうとか、資格講座まで開催するというのも、その計画に必要な人材を生むためです」
那尊「弊社には、グループ全体で豊富な女性人材が在籍しています。技能があり、資金も潤沢です」
那尊「それを使って作った、この女性だけの街は不純です。最初の時点で少なからず男性社員の力も含まれてしまっているのですから」
那尊「が、女性だけの街で生み出した人材と資金でさらに新しく女性だけの街を作れば、純粋に女性の力によるものと言えるのではないでしょうか」
那尊「今は最終的に純度の高いものを作るための前段階というわけです。見世物小屋を一足飛ばしにしても、純度の高い女性だけの街は作れません」
「なんだかよく分かりませんが、その計画、純度の高い女性だけの街、ですか?それについて詳しいお話を……」
那尊「今のところ詳しく説明できる段階ではないので、どうかご容赦ください。成功する見込みがどの程度かも、判断しかねているので」
「先ほどから、妙にあけすけですね。エンタメとか、ビジネスとか、面白ければいいとか、見世物小屋とか。さらに新しい計画の話まで」
「リアルタイムで放送されて世界中が見てますが、いいんですか?取り返しがつかない内容を喋っていませんか?」
那尊「隠すような話ではありませんから。方針をできる限りはっきり宣言しておいた方が理解を得られやすいという判断です」
那尊「少し補足するならば、見世物小屋などとおとしめる言い方をしましたが、そこに住む女性の待遇を悪くするわけではありません」
那尊「住民とメラーはあくまでもビジネスライクな関係です。しかし彼女たちに冷淡な態度を取っていてはビジネスが失敗するでしょう」
那尊「メラーは彼女たちの人間性を利用してお金儲けをさせてもらうのです。ならば人間性に充分配慮しなければなりません。それは最優先です」
那尊「少なくとも金銭面において不自由させることはないでしょう。業務の報酬は世間の水準以上を保証いたします」
那尊「その上で投げ銭などのプラスアルファの利益も与えるのです。弊社が精一杯に譲歩しているとご認識いただければさいわいです」
「では金銭面についての質問です。また家賃の話に戻ってしまうのですが、というかご説明がなかったように思うのですが」
「なぜ業務の報酬に固定給部分があるのですか?業務委託なら成果に応じた完全歩合制でなければ違法ではないのですか?」
「そしてその固定給部分は、なぜ住宅の家賃と同じ1000万炎なのですか?もう少し詳しくお願いします」
那尊「申し訳ございません、説明が抜け落ちていましたね。固定給は毎月最初に満了した業務の報酬にのみ、組み込まれます」
那尊「これを固定給と呼んでいいものかと議論の余地はあるでしょうが、言葉の定義は重要でないため今は置いておきましょう」
那尊「要は月一回だけ、業務を一度でも真面目にこなせば1000万炎もらえるのです。とはいえこれは、毎月同額の家賃として消えるのですが」
那尊「そのような無意味に思えることをする理由は先ほども申し上げたとおり、街のルールに違反した者を街から出て行かせるためなのです」
那尊「違反者は業務を受託できないため1000万炎をもらえません。しかし家賃に1000万炎かかります。払うのは難しいので出ていくしかありません」
那尊「敷金、礼金、管理費、共益費、修繕積立金などの名目で請求するものはありません。メラーがいただくのは賃料1000万炎のみです」
那尊「お気付きの方もいらっしゃると思いますが、実質的に住民は家賃が無料になります。これも住民に対する譲歩と配慮の一環なのです」
那尊「女性だけの街はできる限りの自由を住民に提供したいのです。住むことに不自由するなら自由ではありませんから」
那尊「そしてこれもお気付きの方はいらっしゃるでしょう。1000万炎というお金を毎月、全住民との間で転がすには大きな税金がかかります」
那尊「住民も毎月それだけのお金をもらっていれば収入税や市民税など、累進性の高い税金を多く取られるはずです」
那尊「もちろん弊社はその住民が収めなければならない税金なども加味した報酬を払います。実際の固定給は1000万炎だけではないのです」
那尊「すべて必要経費なのです。私企業が決めたルールによって違反者を街から追い出す。そんな無理を通すにはこれしかありません」
那尊「業務委託なのに固定給部分があるのは違法ではないか?というご指摘はごもっともです」
那尊「業務委託を謳いながら実態は労働者のような扱いをしている場合、違法と判断されるかもしれません。要は労働者性の問題ですね」
那尊「弊社内部においても、このやり方は働約法や働準法に抵触するのではないか、どうにか合法で済ませられないものか、紛糾しました」
那尊「源泉徴収の義務を回避する方法とか、雇用契約と見なされない方法とか……まあ専門的な話はここでは冗長なので割愛いたします」
那尊「結論から申し上げましょう。生働省に確認したところ合法となる見込みが強いとのお墨付きをもらえました。すなわちおそらくセーフです」
那尊「一民間企業の始まってすらいない事業に、政府からこのような判断をいただけるのは異例であり、大変ありがたく思います」
那尊「しかし絶対にセーフとまでは言えません。実際に訴訟が起これば裁判所には違法と判断されるかもしれません。その保証まではありません」
那尊「また、後になってお役所が態度をひるがえし、違法なのでやり方を変えろと言ってくるかもしれません」
那尊「そうなったらそうなったで別の方策も用意しているのですが、今はとりあえず先述のようにしたいと考えております」
「一ヶ月に一回は業務をこなさなければ1000万炎の固定給はもらえないわけですよね?病気などで一ヶ月以上働けない人は家賃が払えないのでは?」
「長期療養さえ許されない街ではありませんか?休むのに不自由する街ではないですか?そこに自由は認められないのですか?」
那尊「違反者でないなら家賃の滞納を許容し、その上で翌月の最初の報酬の固定給部分を2000万炎にすればよいのです」
那尊「療養期間が長引くならその分だけ滞納を認め、次の固定給を増額しましょう。どうとでも融通を利かせて帳尻を合わせられます」
那尊「あるいは未払い家賃の請求権を破棄してもよいですね。その方が税金関連のコストがかからず弊社としても好都合です」
那尊「この固定給と家賃の仕組みは、あくまで違反を取り締まるための措置です。違反していない者を苦しめたり、おとしいれる目的はありません」
「壁の周辺の男性労働者について詳細なご説明をお願いします。物流や警備をするとか、報酬はお金ではないとのことですが」
那尊「法で定義される労働者ではなく、あくまで有償のボランティア活動です。男性に限定しているわけでもありません。女性も大歓迎です」
那尊「ボランティアには宿泊施設、食事、活動に必要な作業着や雑貨を支給します。あくまで宿泊施設であり、住宅ではありません」
那尊「簡単に言えば、不適切な者はたやすく追い出せます。それは街の中の女性住民とは比べ物にならないほどの容易さです」
那尊「さて、これだけでは特に魅力はありませんね。こんなボランティアという建前の労働を誰が好きこのんでやるのか、という感じですね」
那尊「メリットはあります。ファン等級が上がるのです。ファンといっても特定アイドルのファンではなく、街全体のファンと呼ぶ方が適切です」
那尊「弊社のネットサービスでアカウント登録をすると、ファン等級は0からスタートします。これが上がれば様々な恩恵を受けられます」
那尊「等級の前に少し、疑似通貨の説明をします。投げ銭やプレゼントをするには疑似通貨が必要になります。事前にそれを金銭で購入するのです」
那尊「基本は疑似通貨100ポイントを100炎で購入できます。逆に疑似通貨から炎への換金はできません。投げ銭以外では他人への譲渡もできません」
那尊「ファン等級が上がれば疑似通貨の購入レートで有利になります。等級0なら100ポイントは100炎ですが、等級1なら99炎、等級5なら95炎です」
那尊「一定量のポイントを購入するごとに等級は0から1、2と増えていきます。これによる上限は5です。しかし放っておくと下がります」
那尊「疑似通貨の購入によって上がった等級を維持するには3ヶ月に一度は、最小購入単位の100ポイントだけでも購入してください」
那尊「3ヶ月間まったく購入しなければ等級は1下がります。5まで上げても15ヶ月放っておくと0になります。まあ維持は難しくないでしょう」
那尊「本題はボランティアでしたね。街の壁の外でボランティをすれば、その期間と内容に応じて等級が増えていきます。これによる上限は4です」
那尊「ただし活動期間中に重大なルール違反などがあれば下がる場合もあります。雑な警備などされると困るので、仕方のないペナルティです」
那尊「警備ボランティアが街への侵入者を目撃しておきながらみすみす見逃したのなら、等級を下げざるを得ません」
那尊「物流ボランティアも同様です。荷物を故意に汚損、廃棄、盗難などすればそれはもう犯罪行為ですし、当然等級も下げます」