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03話:ポスト201-300

この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku

一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。

那尊「では話を戻しましょう。今一度申し上げますが、男性は高いお金を支払うお客以外にも、公務の方々がいらっしゃいます」

那尊「女性だけの街をうたいながらも、これだけはどうにもできません。特に問題があるとも思えませんが、ご了承ください」

那尊「また、未成年は完全に立ち入り禁止です。居住はおろか、いかなる方法でも入れないため、ある意味で男性以上の排外と言えるでしょう」

那尊「公序良俗に反することをするわけではありませんが、あまりに特殊な環境で、様々な要因によって子供が入るには不適切ですから」

那尊「さて、次は壁の外の男性に関する説明です。街の外側には壁を作ります。人が簡単には侵入できないような壁です」

那尊「中世ヨーラウハの城塞都市をご想像ください。その周辺にはたくさんの男性が生活するようになるはずです」

「また男の話かよ。男ばっかだなこの街」「よく分かりませんが、壁の外は普通の男女比より男性の割合が多くなるということですか?」

那尊「はい。基本は壁のすぐ周辺に宿泊して、弊社から委託する警備や物流の活動をしたいという方を優先します」

那尊「不正な侵入を試みる者から街を守ってもらわねばなりません。必要な物資を遠方から街の出入り口まで運んでもらわねばなりません」

那尊「外から街のために貢献できることは他にも数多くあるので、それを男性にお任せしたいのです」

「警備員やトラックドライバーなんて男じゃないと務まらねえわな」「あ、女性差別発言!いけないんだー」「差別じゃねえよ。事実だろうが」

那尊「その活動をするのが男性でなければならないというわけではありません。ただ、女性アイドルのファンはおしなべて男性の方が多いでしょう」

「ファン?あ、なるほど、ファンなら好きなアイドルが住んでいる街のために頑張って働いてくれるわけですね」

「そうとも限らねえよ。警備する立場だろうがファンならアイドルに会うため忍び込むことだって考えられる。男の助平心ってのはそんなもんだ」

那尊「ありえないとは断言できませんね。なので、壁の外にカメラだけでなく警備員が必要となります。互いも見張らねばなりません」

那尊「ちなみに内側には女性警備員を配置します。外も内も監視カメラと警備員だらけというわけです」

那尊「さて、外の男性については活動内容より先に、報酬の説明をしなければなりませんね。なにしろ金銭報酬はゼロなのですから」

「は?ゼロ?まさかボランティアでそういう仕事を全部やれってのか?」「ファンの扱いひどくない?みんなサボるに決まってんじゃん」

那尊「まさにボランティアとして募集するのです。しかしファンの方々ならご納得いただけると思いますよ。むしろ応募が殺到するのではないかと」

「すみません、そろそろ時間が押していますので、今回はこの辺りで」「もう終わりか。仕方ねえな」「那尊さんのお話もっと聞きたかったのに」

那尊「私も説明すべき内容がいくつも残っています。とはいえ計画が固まっているのは、今回でご信用いただけたのではないでしょうか」

「ま、そうかもな。それだけは認めてやらあ」「すごい面白くて私びっくりしちゃった」「私も感服いたしました。素晴らしいです」

前回と違い、反響は上々である。女性だけの街の実現に向けた具体的な説明がなされ、それは大方の予想より説得力を持っていたのだ。

しかも自治体との交渉という言葉まで出てきたことから、本気で取り組もうとしているメラーの態度も伺えた。

「なるほどねえ。アイドルをメインコンテンツにして収益を上げて、それを街の運営費にして、アイドル以外の女性を養うと」

「那尊は稼ぎによる序列なんて作らないとか言ってたけどアイドルが一番稼ぐならやっぱアイドルが一番デカいツラするようになるんじゃね?」

「個人の人間関係はそうかもな。でも那尊が言ってんのはシステム面だろ。街の中は明らかに他の場所とは異質だし」

「アイドルが陰上中でライブやっただけで街の運営費なんて稼ぎ切れるのかな」「街に男入れて金取るって言ってたでしょ」「足しても無理くせえ」

「那尊によればまだ説明してないことが多いらしいからそれ次第かと」「よく考えられた事業っぽいしなんとかなるだろ。しらんけど」

「ルールを守らなかったら街から追い出すというのは、本当に可能なんでしょうか?それはまかり通るのですか?信じられません」

「普通のアパートでもいちじるしい契約違反があれば追い出される。街全体がメラーの私有地ならきっとできるはず」

「でも賃貸住宅の追い出し条項って裁判で争って無効になった例もあるよ。街でルール違反しても追い出されずに住み続けられるかも」

「法律に詳しくないけど契約や私有地って要素で男を排除するのは大体納得できたわ。前の放送ではどういう理屈かさっぱり分からなかった」

「あの時点でもその辺に関してきっちり考えてたわけだよな。なんであんな雑な説明で終わったんだろう。あれのせいで無駄に評判下げた」

「今回全部説明してくれたんだからいいじゃん」「今回もまだまだ中途半端だった。最後にポロッと言ったタダ働きの仕事とか意味不明」

世間の風向きはよい方向に変わり始めていたが、またしても狭凪は那尊の語った計画をののしる。

狭凪「代価を払わずに仕事だけさせるなんて馬鹿げていますね。そんな仕事をしてくれる人がどこにいるんですか?」

狭凪「いえ、分かりますよ。番組内でも言及があったように、ファンならアイドルのために頑張ってくれるかもしれない。それこそ報酬ゼロでも」

狭凪「でもそんなのはごく一部のファンのみでしょう。好きだからという理由だけでいつまでもそんな仕事を続けられる人ばかりではないんです」

狭凪「おそらく、そうやって街の外の男性から搾取した労働力で利益につなげようという狙いでしょう。要は搾取ビジネスですよ」

狭凪「芸能事務所として、アイドルをトップに据えた街というのは、まあ現実離れしていながら面白い発想だとは思います。が、問題が大きすぎる」

狭凪「芸能事務所だからこそ、ファンをないがしろにするなと私は言いたい。ファン相手の商売ですからね。ファン様は神様です」

狭凪「男性を奴隷化しなければ成り立たないなんて、破綻するに決まってます。いびつですよ。現代社会において許されません」

狭凪「それに、男性を犯罪者予備軍などと呼ぶ人たちに安寧を与えるとも言っていましたね。男性差別主義者に、くみする態度です」

狭凪「女性だけの街というのは、世の男性を馬鹿にするもののような気がしてなりません。残念ですが、私にはとても応援できない」

狭凪「自治体からの誘致話を待つとかなんとか言ってましたけど、逆でしょ。偉そうに待つ側でなく頭を下げてでも交渉しにいく立場ですよ」

狭凪「まあ、頭を下げたところで乗ってくれる自治体がいるかは分かりませんが。なんせ奴隷労働ありきの街なんだから」

狭凪「メラーさんが巨額を投じて街を作ってくれるというのは、自治体からすればたしかに魅力はあるでしょうけど、そんないわく付きではね」

このコメントをきっかけに、やはり今回も逆風が吹き始めた。ナズはメディアに太いパイプがあり、メラー叩きの報道をさせているのだ。

芸能界で長く後塵を拝し続けてきたナズとしては、メラーが見せた弱みに付け入り、追い落とすためのまたとない機会である。

メラーはメディアに対してそれ以上の影響力を発揮して黙らせることもできるが、好き放題に言わせている。今は布石を打つ段階なのだ。

自信満々に手札を晒しておきながら事態が何ら好転していない。あえてその醜態を世に見せつける。客観的にメラーは失敗が続いていた。

那尊はここから急にメディア露出を控えるようになる。結局は中途半端な説明で終わってしまった形である。

これだけ旗色が悪いのだから出てこられないのは当たり前であり、事業はこのまま静かに立ち消えてゆくのだろうと大衆は捉えた。

しかしナズの差し金でメディアは定期的に蒸し返して批判する。メラーの評判はこれによってますます落ちていった。

しばらく経ってメディアが直接取材する。どこかの自治体から誘致の話は来たのか?メラーの広報担当は、ひとつも来ていないとだけ答えた。

女性だけの街を夢見ていた者たちも、今はもうメラーに期待していない。これほどの失態を演じていては仕方のない帰結だろう。

さらに月日が流れ、ナズによるネガティブキャンペーンが収まり、誰もが忘れた頃に詠尾(えいび)県の山間でそれは見つかった。

広大な面積で大規模な工事が行なわれてるのだ。発見したのは遊覧ヘリのサービスを展開している民間企業のパイロットである。

付近一帯の山はすべて民間企業の所有地で、現場はその中心に位置しているため外部の人間が地上から望むことはできない。

発見者は当初、伐採や採掘など資源目的の工事かと思っていたが、何度か見ているうちにそのようなものではないと確信し、怪しむようになった。

あまりに面積が広く、敷地内は碁盤目状に道路が舗装され、多数の建物が建造されているのである。どう見ても土地の造成と施設の整備だ。

メディアも嗅ぎつけ、取材する。工事業者はメラーの関係会社および委託された地元企業であり、街を作ると語った。無論、女性だけの街である。

「え、まだ諦めてなかったの?あれだけ叩かれたのに」「水面下でずっと計画が動いてたのか」「ていうかどういう計画だっけ?もう忘れたよ」

「そういえばメラーの社長さんが言ってたよね。作るなら誰もいないド田舎にって」「あれ?自治体との交渉がどうとかって、上手くいったのかな」

「少なくとも自治体が承諾しなければこんな工事は無理。当然、管轄する警察やら消防やらの行政機関にも連絡は行ってるはず」

「関係者はみんな知ってたのに今まで話が明るみに出てこなかったのか」「まともな組織なら業務上の情報なんてそう簡単に漏らさないでしょ」

「ここまでの大規模な事業なら株主に説明しないといけないでしょ。なんで株主から情報が漏れてこないの?」「メラーは株式上場してないよ」

「それよりよ、男を街の外に住ませて給料も払わずこき使うって話だろ。それが叩かれてポシャったんじゃなかったのかよ」

「なんか分からんけどでっかい工事がもう始まってるなら、諸々の問題はもう解決済みなのでは?さすがに問題を抱えたまま始める規模ではない」

「私は諦めてなかったよ。那尊さんならやってくれるって信じてた。女性だけの街は終わってなかった」「まだ始まってすらいないが」

まったく想定外の展開が舞い込んできたが、狭凪はこれもチャンスと見て上機嫌にコメントする。

狭凪「社会全体にあれほど批判されたのに、まだ本気でやろうとしているようですね。信じられないというか、正直驚いてます」

狭凪「芸能界の舞台裏を少し明かしますが、どうもメラーエンタテインメントの業績は近年、かんばしくありません」

狭凪「メラーから他の事務所に移籍する芸能人も増えてます。那尊さんはファンを奴隷扱いすると言ったのだから当たり前ですよね」

狭凪「状況を打開するために女性だけの街の事業に踏み切ったのは分かり切っています。だって街ではアイドルを主役にするんでしょう」

狭凪「あと、メラーは陰上中のいたるところに土地を持っていますが、ほとんどは山奥の未開発な土地なんですよね。もちろん価値は二束三文」

狭凪「長年放置しているそれを少しでも有効活用したかったというのもあると思いますよ。使わない土地なんて赤字を垂れ流し続けるだけですから」

狭凪「まあ要するに苦し紛れですよ。どうにも悪い雰囲気なので、奇策でも弄して流れを引き戻そうという狙いではないですかね」

狭凪「そこで私は今一度、断言しておきます。やはりこの事業は失敗します。状況がまるでよくなっていないのですから」

狭凪「大々的に発表していないようですから、なにか後ろ暗い内情があるんでしょう。自治体との交渉が難航しているのかもしれません」

狭凪「変わった事業をやろうというのに、コソコソと隠れるように動いている。煮え切らない半端な態度だと思います。メラーの悪い癖ですよ」

あしざまにおとしめられたが、メラーは相変わらず沈黙している。世間のことも狭凪のことも、まるで意に介していない。

その様子から、さらに不審がる者も多い。なぜ説明しないのか。なぜ今になって街作りを始めたのか。分からないままに時は過ぎていった。

やがてメラーが女性だけの街への移住希望者を募集し始めた。街は着々と工事が進んでおり、開業の見通しが立ったようだ。

ところが人々の予想通り、応募者はあまり多くはない。街に対するイメージははなはだしく悪いので、言わずもがなである。

しかも、ただ応募しただけで即採用というわけでもない。条件があるのだ。男性排除のために規定されているルールを遵守するなど最低限である。

アイドルでもそれ以外でも、すべての移住者はメラーとの間で業務委託契約や住居の賃貸契約を結ばねばならない。

だが、壁の中に移住する女性に対しては住居の家賃が法外な高さに設定されている。そして業務の報酬は固定給+歩合制である。

家賃と固定給は同額らしい。メラーがなぜそのようにするのか、ろくな説明もなしには理解しがたく、応募をためらう者が続出している。

壁の周辺でボランティア活動する男性に対しては逆に宿泊費、水光熱費が無料、三食付きとなっている。また、有償だがどうやら金銭報酬ではない。

やはりこれも多くの者がいぶかしがり、応募を決心できずにいる。今のところ納得できる材料がないのだから仕方がない。

応募者や内定者の数を公表しているのも不可解である。それをわざわざ外部へ周知してもメラーにメリットはないのだから。

他にも意図が不明な募集要項が多い。明らかに大衆の話題をあおる目的が含まれており、今のところそれだけは狙い通りになっている。

説明を求める声が最高潮に達し、世界中が注目する中でついに那尊が応える時が来た。今回は記者会見である。

那尊「募集のとおり、女性の業務の報酬は固定給と歩合制の併用です。決まった金額と、出来高によって変動する金額の合計になります」

那尊「出来高というのは普通の芸能人のように業務の内容や量、成果を評価する仕組みです。詳細は個別の契約ごとに異なります」

那尊「さて皆様が疑問に思われているのは、なぜ住居の家賃が異常に高額なのか、そしてなぜ固定給部分と同額なのかでしょう」

那尊「これはルール違反対策です。女性だけの街のルールについて重大な違反をした者は街から出ていってもらいます」

那尊「しかし出て行けと言っただけで排除するのは難しいのです。たとえば街にいる正当な理由がない場合でなければ領侵罪での排除はできません」

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