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21話:ポスト2001-2100

この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku

一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。

「なんであんなにがめつい運営しちゃったんだ。アホすぎんか」「運営にも事情があったんだろ」「にしてもあの会見はねえわ。あれが致命的」

「再スタートする町の住民はどうなるの?前の人らみんなどっか行ったんだろ?また呼び戻すの?」「いえ、メラーが新たに募集するようですよ」

「前の奴らは顔がいいだけの素行不良ばかりだったしな。大した罰がなかったとはいえ簡単にルールを破るとか人としてあり得ない。クビで当然」

「メラーが運営するなら安くて上質なサービスになるのかな」「基本は女性だけの街と同じようになるらしい。差をつけたら不公平だから」

「でもJVの頃に投げ銭とかで払った分は、メラーに交代して無駄になっちゃったんだよね。何百万も払った熱心なファンだっていたのに可哀想」

「いや、JV時代に客から巻き上げた金はメラーが代わりに全部返金するらしいよ。JV買収でデータもゲットして支払いの履歴が残ってるんだと」

「それめちゃくちゃ莫大な金額になるんじゃない?」「つかメラーが肩代わりする義務ないよな。何の意味があってそこまでするんだろ」

「自分に対抗できるライバルを作り上げて、勝手に倒れても綺麗にその尻拭いまでするってやっぱメラーは神。JVと何もかも違う」

「そういう評価を集めるための返金ってことかな。太っ腹な態度を見れば誰だって町の再興に期待が持てる」「さすがに割に合ってなさすぎだろ」

「本当にメラーには感謝してるよ。求めてた男性だけの町が理想形で再出発するんだから」「女ドルヲタには長い冬だったが、ようやく報われるな」

「まだどんな男が移住するか分からないのに気が早すぎ。好きになれるアイドルがいないかもしれない」「メラーならそこは大丈夫でしょう」

大方の期待通り、町ではメラーが厳選した良質な人材のみが移住者として採用された。容姿は大事だが、それ以上にルールを守れなければならない。

移住者もJV運営を反面教師とし、何が求められているのか分かっている。二度とあのような失敗は繰り返されないだろう。

これでようやく、那尊の計画に一区切りがついた。女性だけの街を作ると言い始めた時から、今の状況になるように動いていた。

男性だけの町をメラーに運営してほしいと世間に求められるために、このような回りくどい手順を踏んできたのである。

そもそも男性だけの町など誰も望んでいなかったため、需要を喚起するところから始める必要があった。

女性だけの街も、元々は男性のいない環境に移り住みたいという女性の負の欲求からイメージされた抽象的な概念にすぎない。

厳選した女性アイドルを餌にして男性の正の欲求を喚起し、メラーの甚大な資本を注いでビジネス化することで強引に現実化した。

事業として安定させるためにアイドルの人気を高め、街そのものへの人気に変換し、さらに平凡な人材にまで波及させるという手順を踏んだ。

この成功を見れば、同じような事業で一攫千金を狙う者が出てくるのは想像にかたくない。唯一、真似をすればイメージが悪くなる点が問題だった。

しかし当のメラーが真似を許容し、支援までするというのだから乗らない手はない。専売特許を持つ者の公認なら、世間にも叩かれにくい。

第二の女性だけの街を作られる場合も想定していたが、那尊は事前の発言で男性だけの町を作らせるようにライバルを誘導しておいた。

どうしても第二の女性だけの街を作ると言って譲らなければ、支援せず真っ向から叩き潰せばよいだけである。

実のところ安定した事業運営は見様見真似で遂げられるほどたやすくなく、絶妙なさじ加減と正しい手順が必要なのだ。

最初に融資という枷をはめられた時点で困難だが、その上でメラーを相手に戦わねばならないのだから現実的に不可能となる。

融資関連の数字の公開も一種の枷である。数字は嘘をつかない。だが見せ方次第ではどうにでも印象を操作できる。

無理をしてでも早期に多く返済するのは必定で、事業が成功しなければ後になるほど息切れやすく、返済ペースが落ちてゆくのも必然なのだ。

大衆が数字で失速を目の当たりにすれば失望するのは当たり前で、その分だけ女性だけの街に羨望が集まるのも明白である。

数字の公開を何の脈絡もなくJVに持ちかければ警戒され、枷という狙いまで気づかれていたかもしれない。

しかしメラーは街の種々の数字をエンタメと称して開業当初から公開してきている。それによって怪しさは大きく低減したのだ。

ライバルを出し抜くため、他にも無数の伏線を何年もかけて張り巡らせており、那尊以外にその全容を知る者はいない。

こうして男性だけの町を他者に作らせて女性の正の欲求を喚起し、その上で失敗させてメラーによる運営を求めさせることに成功した。

那尊「以前、街を新たに作る計画があると言いましたが、今こそ始動させます。女性だけの街、男性だけの町を新しく作るのです」

「え、マジ?」「そーいやそんな話、してたな」「それは女性だけの街と男性だけの町をひとつずつ増やすということですか?」

那尊「いえ、陰上各地に複数ずつです。が、女性だけの街に関してはしばらく前にほんのごくわずかだけ作っていたと表現できるかもしれません」

那尊「穢不治や越蛙や而影には、すでにライブ会場を作りました。あれらに女性だけの街を併設するのです。男性だけの町は完全に新設ですが」

「あーあの無料ライブのやつ?田舎なのにめっちゃ人気あるらしいね」「なんでも、周辺地域にめざましい経済効果を生み出しているとか」

「会場の時点で街の場所決めだけはもう済んでたっつーわけだな。でもよ、会場のとこに作る理由はあんのかよ?」

那尊「自治体の了承を得られました。水面下ではライブ会場の建設計画の段階から、将来的に街を作るところまで自治体と話し合っていたのです」

那尊「納得させるためには既存の街やライブ会場を成功させ、地域への利益を現実に示す必要がありました」

「なるほど、段階を踏んでいたのですね。そしてライブ会場は交渉材料だったと」「そんな前から新しい街作るつもりだったのかよ」「すごーい」

那尊「地元の人々にもご納得いただけそうです。その直接の交渉は自治体の役割ですが、メラーとしても充分な還元策を用意しておりますので」

那尊「もちろんビジネスである以上、利益の追求は先決です。しかし利益を独占していては長期的な成功は望めません」

「JVがそれだったよね」「あいつらも商売人として成り上がってきたのになんであんな失敗したんだろうな」「功を焦ってしまったんですかね」

那尊「売り手よし、買い手よし、世間よしでなければならないのです。新たなまちでも弊社は買い手と世間のためのビジネスを展開します」

那尊「自治体には売り手である弊社の事業を地域に受け入れていただきました。次は買い手と世間のための政治をすべきでしょう」

那尊「ある議会では早くも、観光公害に対応するために新条例を制定する動きも出ているようです」

「裏ではめっちゃ話進んでる感じじゃん」「ま、観光公害は個人や企業だけで対応できるもんじゃねーからな。政治の力も必要だろうよ」

「あの、すみません。そのような話はあまり、おおやけに明かさない方がよろしいのでは?政治的な駆け引きと言いますか……」

那尊「ふふ、そうですね。では少し違う話題にはぐらかしましょうか。既存のまちに併設している会場でのライブは今後無料にします」

那尊「新たなまちを併設する会場では全国ライブという理由で無料としておりますが、まちが完成すればホームグラウンドでのライブですからね」

那尊「ホームグラウンドになったからといって有料にはしません。しかしそれでは既存の方が有料のままでは不公平なので、無料にするわけです」

「不公平って、メラーにとっちゃ金儲けだろ?そんなんでいいのか?」「いいじゃんいいじゃん。タダにしてくれるんだからみんなハッピーじゃん」

那尊「これも買い手への還元の一環です。とはいえさすがに、まちの中のライブは無料というわけにはいきません。まちは高い入場料が必要なので」

那尊「他にも新たな展開を多数用意しております。新たなまちを作るのですから、それに見合うものを用意できなければエンタメではありません」

「なんか妙に焦ってるように見えるぜ。そんな急いで複数のまちを作る必要なんてねえだろ。焦りすぎたらJVの二の舞いになっちまう」「しんぱい」

那尊「見抜かれてしまいましたね。本当に焦っております。町を弊社事業に加えたばかりで気が早いようですが、やむを得ない事情があるのです」

那尊「実は買収した企業が抱えていた従業員、今は弊社所属ですが、あまりに人数が多くて仕事がありません。人が余っているのです」

「いきなり窓際族か」「今は社内ニートって呼ぶんだよ」「それ違う意味だろうが」「買収前にその問題を考えていなかったのですか?」

那尊「ええ、JVの出資社を多く買収することを優先したので。町の失敗で倒産なんて可哀想でしょう」「追い打ちをかけたのはメラーじゃねーか」

那尊「とはいえ彼らには優れたノウハウがあったのです。町を作るノウハウです。手に入ったのは幸運でした」

那尊「当時は弊社も微力ながら力添えしましたが、彼らのそれは充分に頼れるものだと考えています。ならば活かさない手はありません」

「町を作るノウハウなんて普通は持ってないもんね」「話がつながりました。その人たちに新たなまち作りを担当させようというわけですね」

那尊「そのとおりです。うってつけの役割でしょう。すべては人材です。人材をベースに事業拡大していくのです」

「別に無理やり事業拡大してまで人材を活かす必要なくねえか?余ってる奴なんて会社買収した時にバッサバッサ切っちまえばよかっただけだろ」

「そんなの可哀想じゃん」「社員というのは会社が地位を保証しているので、そうたやすく解雇できませんよ。他社による買収時でも同様です」

那尊「人材の配置はできるだけ元のままです。つまり組織図は買収前からほぼ変えません。部署名や役職名はさすがに変わる場合もありますが」

「メラーに買収されたからといって、会社の中身が一変するわけではないというわけですね。労働環境が保たれるのは従業員にとって大切です」

那尊「業務の割り振りも可能な限りは組織単位です。あ、少し脱線しました。買収にともなう人事など、どうでもいいですね。別の話をしましょう」

「いえいえ、買収された会社に所属していた方々が厚遇を受けられるようで、なんだか安心しました」「こき使われるって話に聞こえたがな」

那尊「さて、ここからも人事の話ですが……」「えー、またぁ?」「おいおいボケたか?今日の朝何食ったか思い出せるか?」

那尊「買収とは別です。新たに複数のまちを作るとなると、逆に人が足りなくなります。さながらシーソーゲームですね」

那尊「作った後も運営したり周辺で商業施設を展開したりするため、たくさんの人が必要なのです。それを確保せねばなりません」

那尊「というわけで新たな従業員を募集します。求人です」「テレビの生放送で求人出す奴初めて見たぜ。やっぱボケてんだろ」

那尊「今回の求人は平時から行なっているものとは異なり、一定以上のファン等級を持っている方が対象となります」

那尊「雇用の形態や給料、福利厚生、その他の待遇は等級が強く影響します。無論、等級が高いほど当人にとって有利です」

那尊「特に等級が高ければ、細かい条件は抜きに一発で正社員として採用します。求人の詳細は後ほど公式サイトに掲載いたします」

「ボケてるんじゃなくて狂ってたんだな」「街にお金をいっぱい払った人は社員にしてあげますってこと?そういうのってアリ?」

「近年は採用試験を受ける時にその企業の株式を持っているのをアピールポイントにする人が増えているようですが……」

「あれ実際のとこ会社側にはあんましウケないらしいぜ。株なんてちょっとなら誰でも買えるからな」「んじゃ等級で雇うのってダメくない?」

那尊「企業の方針次第でしょう。弊社の今回の人材採用において、等級を基準とするのはダメくないのです」

那尊「また、一般的な採用活動のようにご本人の経歴や技能や適正なども当然、評価に加味します。これについては完全に加点方式です」

那尊「規定の等級を満たしているはずなのに、経歴や適正などによって減点して採用を見送るなどということはございません。余さず採用します」

那尊「とはいえ、そのようにして従業員になったからといって、等級を維持している限り絶対に解雇の対象とならないわけではありません」

那尊「等級はあくまで採用の基準であり解雇とは別です。さすがに従業員がどれほどの問題を起こしても解雇しないというのは、むずかしいのです」

「クビの話はどうでもいいけどよ、会社が失敗した時に責任をおっ被せるつもりで雇うんじゃねえだろうな?重要事業を新入りに任せるなんてよ」

「その点はたしかに不自然ですね。世間からの批判をかわすためのスケープゴートに仕立て上げるというわけですか」「えー?そういうことなの?」

那尊「そのようなつもりはございません。買収した企業にいた者や新たに雇用する者に任せると言っても、責任はその判断を下した私にあります」

那尊「やるからには成功を目指し、足りない部分は既存の戦力を投入します。勝手が分からない新戦力に何もかも丸投げするわけではありません」

那尊「小さな失敗など無数に起きるでしょう。それでも全体が成功すればよいのです。全体が失敗しても責任を押し付けて尻尾切りなどしません」

「じゃあなんで新入りに重要事業をやらせるんだい?」「高い等級を獲得するほどのファンならモチベーションが高い、という理由でしょうか?」

那尊「そうですね。モチベーション、せんずるところ好きという気持ちは能率に直結します。大いに頑張ってくれるでしょう」

那尊「好きなことをしてお給料を得られるというのは素晴らしいではありませんか。弊社は人と仕事を結びつけ、事業展開に活用するのです」

那尊「女性だけの街を作る以前なら、そんな仕事をしたがる人など世間にはほとんどいなかったはずです。しかし現在はどうでしょうか」

那尊「手前味噌ですが、今までのまちの成功がモチベーションにつながっているはずだと自負しております」

那尊「そしてモチベーションが上がるほど新たな成功にもつながりやすくなります。よい循環が生まれるのです」

「でもさ、普段のメラーってすごい高学歴な人しか正社員になれないんでしょ?なのに今回は等級が高いだけでいきなし正社員ってヤバくない?」

那尊「それだけ人材をたくさん欲している状況というわけです。まちを新たに複数作るので、相応に多数の人材を確保せねばなりません」

那尊「等級の高さは、弊社のまち事業への期待の度合いでもあると捉えます。私は期待して下さっている方々と共に、次の成功を目指したいのです」

美辞麗句を並べ立てたが、一番の目的は他社からの引き抜きも兼ねた人材確保である。敵戦力を自らのものにするという合理的戦略が可能となった。

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