16話:ポスト1501-1600
この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku
一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。
「住民だけでなく観光客にもやらせるってふざけすぎだろ」「お金を取られる上に労働させられるの?おかしいよ」
「嫌ならやらなければいいでしょ。誰もやらないなら施設はなかなか完成しないってだけ。困るのは住民」「意味不明な脅しだな」
「もう金払って働いてる客は多いみたいだけどね。人気アイドルがすぐそばで直接指示してくれるから」「お姫様と親衛隊か」
「これもファンにとっては俺が育てたって気分になるんだろう」「なるほど。メリットもあると」「それでも金払って働くのは馬鹿げてる」
「プロが観光に来るのを狙ってるのかも」「厄介者の教え魔や指示厨がリアルで本領発揮できる場だもんな。ここぞとばかりに助けに行くだろうな」
「住民が男に直接触られたりしないの?」「ボランティアが常に数人付いて守ってる。配信用と防犯用を兼ねてボディカメラも着けてる」
「熊や猪が来ないように山の中を巡回してるボランティアもいる」「ただのボランティアにそんな危険な活動させてるの?命がけじゃん」
「街作った時点でメラーが近隣の山から危険な動物追い出してバリケード立てた上にカメラ仕掛けてるから実際には念のためくらいの意味だけどね」
「数百mごとに金属の格子で区切られてるから動物は簡単に入ってこれないし、入れても自由に移動できないし、大量のセンサーで全部見つかる」
「なんだ、施設が完成してないって言っても環境は割と至れり尽くせりっぽいな」「でもそれ以外は本当にほとんど何もしてないよ」
「釣り用の渓流なんてほぼ自然のままなんだろ」「事故防止の工事だけは徹底してるけどね。自治体に立ち会わせて何度も確認したんだとか」
「渓流釣りって水難事故多そうだもんな」「岩場のコケで滑って川に落ちるパターンがやばい。専用の靴やライフジャケットがないとガチで危険」
「日光が水面に反射して目が充血するからサングラスもいる。釣具とセットで装備一式レンタルできるようにしとく必要があるだろうね」
「田畑は種や苗すらないらしいけど今何やってんの?」「土たがやすんじゃね?」「まだその前。石や枯れ木を除去してるよ」「そんなとこからか」
「牧場も最低限なんだよな。小さい牛舎と囲いの柵だけ。家畜が一匹もいない。まあ飼料もないから家畜入れると飢えるけど」
「そーゆーもろもろをなんとかするために設備改善システムを活用しろっつーこったな」「先が長そう」
「改善のための資金って本当に貯まるのか?」「何もないのにアイドルに会って作業するだけのために客が入って金払ってるから多分大丈夫」
「狩猟用の山も作ってるんだろ?どういう改善が必要なのかすら謎だな」「バリケードの形を工夫して動物を狩り場に入れやすいようにするとか?」
「光に寄ってきたり嫌がったりする動物は多いからライト設置しとけば誘導できる。音や電気も使える」「電気柵は法的な縛りが多くて設置が面倒」
「銃や罠を使うとこに観光客を入れるのって危なくない?」「そういう山は街や観光施設の遠くに整備して資格がないと入れないようにするらしい」
「獲った獣の肉をジビエ加工する施設の新設案が早くも出されてる。住民と客が一緒に猟やって解体から調理までして食うんだと。土産物にもなる」
「肉に魚に野菜。そのうち自給自足できるね」「レストランもある。当然、観光施設で取れた食材を使う」「アイドルの付加価値でめっちゃ高そう」
「好きなアイドルと一緒に田植えとか釣りとか家畜の世話とかできたら楽しそうだよね。スローライフって感じ。何十万炎でも払えるよ」
「集落っぽいのも作ってて田園風景に囲まれて古民家で宿泊できるようになってる。一種のグランピング」「ラッシュ村みたいなもんか」
「キャンプ場の改善で売店での薪の販売が提案されてるんだが必要?その辺の茂みに落ちてる木を燃やせばよくない?」「収益のためでは?」
「いや、落ちてる木とかほぼ使い物にならないよ。なかなか火がつかなかったり煙が出まくったりする。ちゃんと種類選んで加工した薪は必要」
「そういう初歩くらいは分かってる住民が提案したってことだろうね」「他の施設も最低限の知識がないとできない提案がいくつか出てる」
「しかし住民が業務でやるっても、つまるところ素人のお遊びだよな。客にやらせるのも。そんなんで上手に運用できるのかな」
「素人とは違うでしょ。今回は資格持ちの住民を大量に入れてる」「資格や知識だけ持ってても素人は素人だよ。現場の経験がないと話にならない」
「建物が倒壊したり取り付けた設備がいきなり外れて落下したり……」「観光客で死人出たら大問題になりそう。街終わるだろ」「メラーも終わる」
「普通は工事現場に素人が入るだけでもその案件を受けた会社が責任追及されて下手すりゃ二度と仕事もらえなくなるからな」
「まあ最低限はメラーが責任持って尻拭いするようだけどね。法令違反で行政処分食らって営業できなくだけでもマズイから」
「国が今のところ何も言ってないから問題ないんじゃないの」「不自然なほどに行政はダンマリ。やっぱ汚職か?」「陰謀論やめろ」
「さっき言ってたジビエは大丈夫なのかな。普通の飲食店でも肉が原因でよく食中毒出てるし」「野生動物の肉なんて寄生虫の温床だからな」
「法律で定められた手順は当然遵守するだろうけど、街の中の飲食店と同じように加工や調理の様子を配信するんじゃないか」
「世界中が見てるからミスがあればすぐ誰かがメラーに通報して現場に知らせるってわけか」「メラー社員もリアルタイムで見てるはずだけどね」
「牧場は拡張するために客が大勢で竹藪を伐採してるらしい」「伐採しても山だから斜面だらけだろ?敷地の拡張って素人には難しそう」
「斜面なんて適当にならせばいいよ。建物とか建てる場所じゃないなら測量やって完璧な水平出す必要はない。素人でもできる作業は多い」
「メラーも住民にいくらかは指導してるし禁止事項も設けてる。山だらけとはいえ好き勝手に土地拡張されると多分メラーが後々困るから」
「設備改善で大掛かりな工事する場合もあるはずだよな。冬は雪崩とか大丈夫なのか?騒音って雪崩を誘発するんだろ?」「それ実は俗説らしいが」
「詠尾は積雪量が少ない地域だから大丈夫だと思う。街作りが始まってからはおそらく一回も雪が積もってないし」
「もしかしたらメラーは最初からそういった気候まで考えて詠尾を選んだのではないか」「単に自治体との交渉の結果じゃね?」
「施設の改善のたびに住民は騒音を聞かされそう」「街の工事もちょっと前までやってて配信でもたまにその音が聞こえてきた」
「どうでもいいけどボランティアのやる仕事どんどん増えてきてない?」「観光客も増えてるから警備の密度も以前より高くしないとね」
「住民と同じくボランティアも大幅に増員されてる」「それ以上に希望者がすごい勢いで増えてるからもっと増員しまくった方がいいよ」
「ボランティアの宿泊や食事はメラーが負担してるんだろ?そのコストも相当な額になってそう。メラーは元を取れてるのかな」
「前の決算によれば女性だけの街のおかげでメラーグループ全体の業績がめちゃくちゃに上がってるから余裕だろ。必要経費だよ」
「ボランティア増員ってことは、住民投票で選ばれたボランティアが等級もらえるってやつ、あの倍率も厳しくなってんじゃないの?」
「もらえる人数はボランティア全体の人数に比例するから倍率は同じ。まあ元からめっちゃ厳しいんだけど。今は票数上位の数十人がもらえる」
「山の巡回やSPで住民の近くにいたら印象がよくなって住民投票で選ばれやすいからってそういう役割をやりたがるボランティアが多いらしい」
「もとよりボランティアのほとんどはアイドルのファンだしな。投票とか抜きでも普通にアイドルの近くにいたいもんだろう」
「ずっとアイドルの近くで仕事できるのってすごい楽しそう。私もボランティア応募しようかな」
「好きなアイドルの近くを担当できるとは限らないけどね。新しく入ってきた地味な住民かもしれないし、壁の外周警備かもしれない」
「なんだかんだでボランティアの顔覚えて投票する住民も当初よりすごく増えてるよね。それだけで配信ネタになるから」
各施設の人気と収益は最初から高く、貧弱な状態で始まった設備はその収益による改善で少しずつ充実していった。
一番の目玉はアイドルだが、そのようなシステムにすることで設備をコンテンツ化し、長期にわたって興味を惹き続けられる。
最初はアイドル目当てに訪れたのだとしても、自分の払った金によって施設が発展していくなら、その行く末が気になるものなのだ。
払った金額が多ければ改善案に投票もできるのでさらに感情移入し、再び観光客として訪れる可能性も高い。立派なリピーターである。
観光施設には常に目当てのアイドルがいるとは限らない。しかし施設自体に強く精神依存すれば、もうアイドル抜きでもよいのだ。
管理業務という名目でひとつの施設には常に数人の住民がおり、観光客と一緒になって楽しんでいる。男性客は一定距離以内に近づけないが。
誰がいつどの施設の管理業務をするのかは事前に告知されいるので、目当ての住民を狙って施設を訪れる客も多い。
やはり人気の高いアイドルがいる施設ほど客は多いが、それ以外の目立たなかった住民も客を直接相手することで徐々に認知されてきている。
建設計画や改善案にかかわったり、その日の管理業務をしているだけで施設内や公式サイトでピックアップされる。人気につなげるチャンスだろう。
農業ができる、家畜の世話の仕方を知っている、狩猟の才能がある、魚釣りが上手い、土木や建築関連の高度な資格を有している……。
そのような内的な魅力は言葉だけではなかなか伝わらない。まずは人々に実体験させ、注目される場を作る必要があったのだ。
平凡な住民でも大勢の男性客の中では自然とちやほやされる。ともに半日行動するだけでファンになる客も多い。いわゆるオタサーの姫である。
これもひとえにアイドルの人気のおかげなのだ。伝わりにくい魅力を伝えるには、伝わりやすい魅力をエサとして利用するのが手っ取り早い。
アイドルによって集まった関心は、次第に他の住民や観光施設へと波及している。街は見事にアイドル以外のコンテンツを生み出していた。
しかしすべての住民がアイドルのように注目されるのを願っているわけではない。男性がいない環境で生活したいだけの者も多数混ざっている。
以前より街の中は商店や飲食店がほとんど機能していないという不満があった。店員の業務を受託する住民がいなければ開店すらできないのだから。
視聴者からの投げ銭やプレゼントで住民の生活は充分に支えられているが、やはり休日のショッピングすら満足に楽しめないのは問題だろう。
それに対応するためにも、観光客の相手をするのではなく街の中の需要に合わせた業務を淡々とこなす住民は必要だった。
新たに増やした住民にはそのような者も多い。メラーが人材を精査した結果であることは言をまたない。
ただし、本人の意志とは無関係にカメラで撮影され、その配信の視聴者がファンになり、投げ銭やプレゼントをされる場合も多々見られる。
地味な仕事を真面目に務める姿に心惹かれる者もいるのだ。アイドルだけでは獲得できなかった客層だろう。
キラキラと輝くようなアイドルを求める視聴者の間でも、たまにはこうした素朴な裏方を眺めるのも癒やしになると評判である。
業務が活発になって住環境全般が改善した。住民の不満は大きく解消され、収入はさらに増え、最近は街を後にする者も減少傾向だ。
以前のサービス業は質が劣悪だったが、それも大幅に改善した。おかげで周辺施設だけでなく街の中も観光地として魅力が出始めている。
女性は無料で街への入場が可能で、街の中の施設の料金は一般の相場より安いのだ。質さえまともなら客は来る。
「でもやっぱり客にしてみればイマイチらしいな。サービス業関連」「なんか悪い部分あるの?」「山ほどある。前ほどではないけど」
「業務オファーのシステム上、サービス業の経験が全然ない住民でも受託できちゃうから。やる気だけあっても経験が浅いとどうしてもね」
「ちゃんと人員が揃わない場合もよくあるんだよ。普通は固定の人員を揃えるために雇用するのに、街だと個人事業主で流動するから」
「朝起きて気分が乗らなくて休みたいと思った日は好きに休めるんだもんな。世間では申し訳ない気持ちで上司に仮病の電話入れて有給使うのに」
「業務を開始直前にドタキャンしても軽いペナルティだけで済む。責任も何もないんだからそりゃ仕事も雑になる。はっきり言ってただのお遊び」
「一般的な個人事業主ってまず仕事取ってくるのに時間と労力使うけど、街だとそれも勝手にオファーが来るから全然苦労しないんだよね」
「サービスの質は街の近くのメラー直営の店や宿の方が100倍いいよ。観光地だから料金高いけどね」「そりゃプロの接客業だから比べるのは失礼」
「いえ、プロどころか経験の浅い従業員も多いようですよ。なんでも、メラーが近隣の人々を好条件で正社員雇用してそこに勤務させているとか」
「どういうこと?それでメラーに何の得が?」「本当に経験浅くてもちゃんとやれてんの?」「メラーだから従業員教育も行き届いてるんだろう」
街に対する不満は中の住民や女性観光客によるものばかりではなかった。外でも街を疎ましく感じている地元民は多い。
街を作るための工事段階から、ひっきりなしにトラックが行き交い、騒音や悪臭を出して迷惑がられていた。
開業の直後は一旦落ち着いたものの、街でアイドル人気が爆発すると今後は観光客が押し寄せるようになった。
交通渋滞やゴミの不法投棄、地元民とのトラブルなどの観光公害は日に日に激しさを増している。
その分だけ駅前は繁盛したが、そこから街までバスで移動できるため、間にある商業施設は地域への客数の割にあまり潤っていない。
街のせいで平穏を害されるばかりで、釣り合うだけのメリットがもたらされず、不満を抱える人が多いのだ。
不正があったわけではないが、後から地域にやってきて女性だけの街などという大仰な迷惑施設を作ったメラーによい感情を抱くのは難しいだろう。
この問題への対策が必要だが、おそらく根本の解決はできない。今現在でも、メラーの私有地内では観光客にマナーを厳守させている。
街の住民に直接触れたりゴミをポイ捨てしたり何らかのトラブルを起こせば、私有地から追い出した上で最悪アカウントの抹消までしている。
大勢が集まる場所にはならず者も必ず混ざり、外からはひとつの集団と見なされてしまう。だからこそ規律と節度が必要なのだ。
しかし私有地内ならそれも通用するが、さすがに外での振る舞いにまでメラーがとやかく口を挟むのは行きすぎだろう。
アカウントの抹消で脅して外でもマナーを強制すれば、脅しは一体どこまでエスカレートするのかという事態になってくる。