14話:ポスト1301-1400
この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku
一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。
「2だとグッズも割引されるしな。ライブ無料だから金に余裕ができて、その分だけ会場限定販売のグッズの売れ行きがかなり増えると思う」
「最近は魅力的なグッズが増えてるからそっちに金を割けるのは助かる」「なるほど。無料のせいで改善の資金が貯まらないかと思ったけど杞憂か」
「ライブの出演アイドルが複数の場合って全員を2に上げとかないと無料の条件達成できないの?」「いや、ひとりでも出演者に含まれてればいい」
「これ失策だろ。新規客が無料だからって近所のライブ行ってショボい会場を見せられたら街とアイドルへの不満しか出てこない。第一印象最悪」
「ファンは新規にそう思われるのが嫌で設備改善のためにグッズを買いまくるのでは?」「そういう心理まで利用するのか……えげつない」
「もうアイドル単体より街全体に精神依存してる奴も多いしな。街の評判を気にする謎の経営者目線」「俺が那尊だ」「箱推しの感覚じゃないかな」
「まあ通常なら安くても数千炎かかるチケットが無料になるわけですから、会場の設備が粗末でもある程度は許容されるでしょうけどね」
「っていうより設備の事情は陰上人なら誰でも知ってるから会場にも最初から納得してるはず。それすら知らずにチケット応募する奴なんていない」
「立地で不満が出ると思うよ。会場を建造するのは穢不治とか越蛙とか而影とか、どこも女性だけの街と同レベルの田舎」
「でも越蛙の会場は街みたいな山間って感じじゃないね。むしろ盆地。地下水が豊富で大昔から巨大な農業地帯」「畑の中でライブすんのか?」
「而影は兎跿湖のほとりに会場を作るようですが」「それならもう箱なんて作らずに砂浜で野外フェスしたらいい気がするよ」
「なんでへんぴな土地ばかりなんだろう」「ロケーションごとに特色はあるね」「近所の無料ライブでも交通費が高くつきそう。移動時間もかかる」
「メラーにも田舎を選んだ利点はなさそうに思える。地域振興が目的なのかな」「土地代が安いからコストを抑えられるんじゃない?」
「立地はともかく、無料でやって認知を広めるのはアイドルだけでなくメラーにも大きなメリットがあるはずだ。街の人気に直結してるから」
「そりゃそうだわな。アイドルが有名になれば街も人気が出て投げ銭やら何やらで儲かる。それに比べれば普通のライブの稼ぎなんて微々たるもの」
「会場では街のアイドルのライブしかやらないってのが重要なんでしょ。セットのパターンがある程度決まってるなら段取りが楽になる」
「スタッフのコストが小さくなるわけか」「ライブの支出って人件費や機材費や会場費がほとんどを占めてるからね。それを削れるのは大きい」
「会場がメラーの持ち物ってのが強みだよね」「イメージ戦略としても上手いかもな。会場が街のアイドルの象徴になる。ブランド化される」
「ならなおさら粗末な状態で始めて設備改善に頼るのは失敗では?」「それをアイドルとファンが作り上げていくってのがコンテンツになるんだよ」
「コスパ考えたら、頻繁にライブをやって稼働率を上げた方がいいはずだよね。アイドルはいっぱい全国ツアーするのかな」
「街でアイドル育成に力を入れてるのも、このためだろう。ライブができる程度の力量まで育ったアイドルはどんどん増えている」
「ところで最寄り会場ってどうやって決まってんの?俺設定した覚えがないのに今アカウント情報見たらもう決められてたんだけど」
「住所情報からシステムが自動で決めてるんだよ。けどそれだと不都合が出る場合もあるから年に一回は自分で変更できる」
「不都合って?てかなんで年一回?」「ふたつの会場の中間くらいに住んでてその一方に勝手に決められて変更できなかったらムカつくでしょ」
「地元民しか分からない交通アクセス事情ってあるしな。システムが最短だと判断しても実際はそれより短い時間で別の会場に行けたり」
「年一縛りは悪用防止だろうね。最寄り会場の設定を頻繁に変更可能なら、個別等級を上げてなくても全部無料にできちゃうから」
「どの会場を最寄りにするかは自由だから、逆にすごく遠いとこでもいいらしいよ。数十kmで行ける会場があるのに100km先の会場を設定するとか」
「なんのためにそんなことするの」「遠方に出かけて予定が空いてたら強引にねじ込める。アイドルにしてみればそれだけ新規客を増やすチャンス」
「年末年始で帰省したら案外時間を持て余すとかありがちだもんな」「それ長期バカンスでもよくある。羽根を伸ばすつもりが最後の方は暇になる」
「年に一回とはいえ許されるの?システムの隙を突いた詐欺行為では?」「いや、むしろ公式が推奨してる」「会場の回転率を上げたいんだろうね」
「チケットが無料ならライブには行かなくても損しないわけだよな?そういう奴が多発したら空席だらけになるんじゃないか?」
「キャンセル入れずにそれ繰り返すと例によって相応の罰を受けると思うよ。アカウントで管理されてるんだから変なことはできない」
無料ライブの反響はすさまじく、チケットは有料席まで含めて完売する。条件さえ満たしていれば常に無料というのは強い集客力があるのだ。
近所のライブが無料だからという理由のみで観覧した新規客が、そのアイドルに魅力を見出してファンとなる。
ファンはやがて個別等級を上げ、近所以外のライブも無料で観覧し、時には高級な有料席を買い、グッズを求め、アイドルの利益に貢献する。
会場はどれも一流アーティストでなければ満員にするのがむずかしい大きさにもかかわらず、街のアイドルは初の全国ライブでもそれを成せた。
もちろん、アイドル自身の力のみによるものではなく、無料による集客力や街人気で水増しされた分が大きいのだが、メラーとしては充分だった。
街は自由を重視すためアイドルの力量のムラが大きく、事業の安定のためにはそのような不安定な要素を当てにできない。
仕組みによって安定させることが肝心である。強力な仕組みさえ作ってしまえば、アイドルの力量とは無関係に成功させられる。
だがそれはアイドルが不要という意味ではない。アイドル自体は不可欠だが、必ずしも力量が伴っていなくともよいのだ。
もはや街のアイドルは何をしても成功し、莫大な収益を上げるようになっていた。それが話題となり、さらに客が増えて成功を呼ぶ。
ライブ市場においてもシェアを急速に伸ばしている。もちろん、割りを食うのは外部のアイドルやアーティスト、イベントビジネス関係者だ。
メラーに全国で無料ライブを連発されたのでは、自分たちの有料ライブなど見向きもされない。客が減って赤字になるためライブを開催できない。
圧倒的な実力によるライブパフォーマンスを売りにしようと、やはり無料ライブから客を奪い返すのは簡単ではない。
無料ライブでの対抗は、メラーのように複数の要素で利益を出せる大掛かりな仕組みになっていない以上、短期はともかく長期的には必敗である。
無料自体は客への正当な利益還元なので批判すらできない。有料にしろと同業者が呼びかけるのは不正なカルテルに近い行為で問題になりかねない。
陰上の一般的なアイドルやアーティストの収益はライブが大きな割合を占めており、それが見込めなくなっている現状は致命的である。
ほどなくして、その中から引退する者が出てきた。収支の悪化で活動を存続できなくなったので仕方ない。もちろんメラーが遠因だろう。
彼らは、無料という究極の価格攻勢を仕掛けてなお莫大な利益を上げる反則のような敵に正攻法で勝てなかっただけであり、決して無能ではない。
そうした者との積極的な契約をメラーはアナウンスする。街に所属させるわけではないが、活動存続に充分なギャラを支払うとのことである。
他社から移籍する者が相次いでいる。メラーにとってこの措置自体は直接の利益にならない。むしろ赤字の場合が大半だ。
しかしライバル企業からアイドルやアーティストを奪うのは重大な意味を持つ。武器を失くせば、それだけで勝負が決するのだから。
そうして経営が傾いた企業に買収話を持ちかける。相手にしてみれば廃業しかなかったので、大歓迎である。
組織内部はほとんどそのままで、元々プロデュースしていたアイドルやアーティストもできるだけそのまま担当させる。すべて円満に行なわれた。
これによって大衆からの心証は保たれた。好きなアイドルやアーティストが引退に追い込まれれば、メラーを恨む者も出てきただろう。
「そういえば一般的には成功したアイドルやアーティストって引退したらグッズの生産はどうなるの?ストップするの?」
「利益次第だね。大概は引退の時点でグッズの売れ行きが急減するから生産終了。ごくまれに利益が出ると判断されて生産が少し続く」
「穏便な引退、アイドルにおけるいわゆる卒業ならその可能性も残されるけど、問題起こしてクビだったら一発で打ち切りになったりする」
「ネットオークションでは長い間取り引きされてるよな。数十年前に引退した歌手のグッズが何万炎もするとかザラ」「それは希少性次第でもある」
「街のアイドルだってそのうち引退してグッズが生産されなくなるんだよな。今のうちにたくさん買っとかないと手に入らなくなるのかな」
「アイドルが開発した商品も多分そう。街の住民としてプロデュースやマネジメントをしてるわけだし、引退して街から出ていけば商品も消える」
「その辺の権利関係ってどうなってんだろう。引退したアイドルは事務所やメーカーに対してグッズ生産し続けてくれって言えないもんなのかな」
「大抵、商業関連の権利はマネジメント契約結ぶ時に事務所のものになる。だから現役アイドルでも自分のグッズの売り方にさえ口出しできない」
「私の好きなアイドルが、家庭の事情で街を出ないといけないかもって言ってるんだけど……」「あー、あの子ね。ご愁傷さま」
メラーは街から出ていく住民の関連製品の生産を、できる限り長く続けるという声明を出した。ただし重大な問題を起こした者はその限りではない。
いつまで続けるかという具体的な期間の約束はできず、生産量、生産地、材料や製法についても保証できないのだという。
さらに購入には条件があり、その住民が街から出ていく時点で個別等級を2以上にしておかねばならない。引退時点で等級を上げられなくなるからだ。
また、それらの売り上げの全額が引退した元住民本人に支払われる。引退しても収入を得られるわけである。
「なんかメラーにしては珍しく曖昧だな。いつまでどれだけ作り続けるかは保証できないってさ。単に前向きな態度を大まかに示しただけ」
「それでも全然いいよ。卒業した後までグッズや開発商品を買えるなんてすごいことだから」「本当に買えるか分からないって話だろ」
「引退した次の日に生産を打ち切っても嘘にならないんだもんな。頑張ったけど無理でしたって言える」「メラーはそんなセコくないでしょ」
「何も保証できないのは利益の問題だろうね。引退アイドルのグッズなんて黒字出るわけない。なのに材料や生産ラインは維持しないといけない」
「そこまでする理由って何?」「信用が欲しいんじゃない?ファンにしてみれば嬉しいから、メラーを褒めちぎるには充分な理由」
「俺は売り上げ全額をメラーが元住民に支払うってのが一番ヤバイと思うよ。売り上げ全額って、これはちょっとどうかしてる……」
「まあなかなかできる対応ではないだろうけど、今までも住民に色んな利益を分配してきたからその延長じゃないの?」
「製品に関して、いつもはすべての経費を差っ引いた後の純利益からの分配だけど、今回はそれを引く前の売り上げからの分配なんだよね」
「メラーは材料費や加工費やら諸々のコスト分だけ丸損して1炎の得にもならない。売れば売るほど赤字」「え?それやらない方がマシじゃん」
「引退者のための慈善事業なのか?」「毎回サラッとこういうことやるよね」「うおおおおおおメラーすげええ!一生ついていく!」
「そうやって持ち上げられるためにやってんだろ。お前ら短絡的なんだよ」「称賛のために損を取るってのが普通無理でしょ」
「あながち損を取ってるわけでもないと思うけどね。引退前に個別等級2にしとく必要があるってのが肝」
「気になってるアイドルがいたら、とりあえず2に上げておきたくなるわな。そのために金を払うんだから、メラーは最初に利を得てる」
「なんだ、気前よく見えて結局はメラーが得するのか」「それでもやっぱり引退後までアイドルとファンの面倒を見てくれるのは心強いよ」
「引退後のアイドルの生活を助けられると思うと、頑張って等級を上げて製品を買い続けようと思える」「それもう完全に信者脳だろ。正気に戻れ」
「そこまでの人気アイドルなら現役時代だけで一生分の資産を稼ぎ終わってるはずだから引退後の心配なんてする必要ない」
「年収数百万の凡人が億稼ぐアイドルを応援してる時点で滑稽」「まあそれはスポーツ選手とかにも言えるけどね」「悲しくなるから言わないで」
「2まで上げた状態でアイドルが街から出ていって引退したら、ずっと2として扱われるの?」「個別等級はそう。データ上は永久に残るらしい」
「でも等級の合計には街を出た住民の個別等級は反映されない。個別等級を5人までしか2に上げられないって縛りも出ていった住民分は含まれない」
「なんか複雑になってきたな。頭がこんがらがって話についていけない」「俺は個別等級システムが出てきたあたりで考えるのを諦めた」
「ひとつ気がかりなんですけど、この措置によってアイドル自身は気軽に引退できるようになってしまうのでは?」
「それはあるかもね。でも辞めたいのに辞められないより健全じゃないかな」「街は住民の自由を尊重してるし仕方ない」
バーチャルアイドルの演者について、街を出ていった後も変わらずにプロデュースやマネジメントを続けることをメラーはアナウンスする。
街でVI活動を始めるには演者とメラーが相談してキャラクターの設定やデザインを決め、それを元にメラーがキャラのモデルを作り、演者が使う。
今までは演者が街を出ていけばモデルは使えなくなる契約だったが、出ていってもVI活動のためにモデルを使い続けられるよう変更する。
厳密には住民との間で結ばれる通常の契約とは別口で、VI演者向けの新たな契約を設ける。演者はふたつの契約を結ぶのだ。
住民は基本、出ていけばその時点でメラーとの契約は完全に切れるが、VI演者の場合は片方が切れるだけでもう片方は継続するわけである。
ただし好き放題な目的にモデルを使えるわけではない。あくまで街の中にいた時のようにメラーの配信プラットフォーム上でのVI活動に限定される。
また、当然だが活動についても著しくキャラ設定に反したり、公序良俗に背く内容は許されない。これは街の中にいる時と同様である。
大切なのは街を出た後も活動している限りメラーから手厚く幅広い支援を、無料で受け続けられる点だろう。
配信サポートや動画制作、企画立案、スケジュール管理、SNS運用、関連製品の新開発と生産、それらによって出た収益の分配までされる。
多大なメリットがあるため、既存の演者はこころよくメラーとの新契約を結んだ。この機会にVI活動を始める住民も多い。