13話:ポスト1201-1300
この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku
一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。
「ボランティアはファン等級が最高の奴よりさらに早くチケットを購入できるようになってる。あいつらが最速」
「本当?等級上げるよりボランティアやる方がいい」「上げるためにやるんだろ。てか金銭報酬ないからチケット買うのはかなり厳しいはず」
「ボランティア専用の無料席も最初から少数だけ用意されてる。あと客のキャンセル分が埋まらなければ無料で割り当てられる」
「最優先かつ無料でライブ行けるのか」「私もボランティアやりたくなってきた」「全国でやるライブも無料招待してもらえるかもって噂がある」
「等級11以上だと街の入場料が安くなるって大きいよな。普通は500万炎だけど等級20なら20%引きで400万炎。等級1につき5万も得する」
「20とか無理でしょ。ボランティアになって住民投票に選ばれないと最後の1はもらえない」「19でも95万の得じゃん」
「住民個別の等級2x5人分の条件をクリアするのに100万以上かかるから街に入るだけが目的なら完全に無駄」
「等級20で20%引きってのは間違いだよ。入場料は疑似通貨でも払えるから実際はもっと得する」「ん?よく分からん。説明してくれ」
「入場料500万炎を20%引きの疑似通貨400万ポイントで払うわけだね。400万ポイントは10%引きの360万炎で買える。360万炎が実質500万炎」
「なるほど複利か。500x0.9x0.8」「等級20で140万炎の得なら1あたり7万の計算」「じゃあやっぱり無理してでも個別等級を上げておきたいな」
「メリットは他にも色々ある。低い奴より優先的にチケット確保できるとか。好きなアイドルのライブを逃さずに楽しみたいなら20は大前提」
「しかしそれでも上げるのはあまりにもキツい。利点が出費の割に合ってるとは考えにくいよ。結局は狂信者向けの域を出ない」
「今回は街の外のライブだけだったから入場料払う意味はなかった。でも街の中のライブやる時のために等級11以上は必須。20が望ましい」
「街の中のライブでは本当にそこだけの限定グッズとか売られる予定らしいからね。むしろ金銭的にも20まで上げた方が得するのかも」
「そういや街の外のライブのチケット持ってる奴まで街の入場料安くなるのって意味ある?入る理由なくね?」「ついでにって人もいるかも」
「つーか今まで入場料払って街入った男は存在すんの?」「数人は確認されてる。ライブやる前だったから450万は払ってたはず」「大富豪かよ」
「女性観光客は街の中の宿泊施設に泊まれるけど、男性は泊まれないし夜になると街から追い出されるんだよね。治安のためって理由で」
「まあ本来は女性だけの街だから仕方ない」「500万、最安なら360万でも永久に滞在できたら儲けにならないもんな。1日あたりの値段だよな」
ライブ会場となったホールについて、設備改善システムの導入をメラーはアナウンスする。曰く、劣悪な設備がこれによって改善されてゆく。
さらに、ライブでの大まかな収支を公表した。これはアイドル企画の商品開発のものと同じように素人向けの単純な数字である。
チケットや会場販売のグッズの売り上げ、かかった経費など一目瞭然となっている。その最終利益にメラーはいっさい、手をつけていない。
ライブの利益から一定割合が設備を改善するための資金としてプールされるのだ。ライブが儲かるほど会場の設備が改善されていくわけである。
ただし何の設備をどう改善するかは有権者が決める。ここで指す有権者とは0.1票以上の票を持つ者で、大別すれば住民とライブ客である。
住民数をライブ客数で割り、売上に占める個人ごとの購入額比率をかけた数字が、各ライブ客に対してライブの翌月初日に割り当てられる。
すべての住民は、毎月1票の持ち表を割り当てられる。住民もライブ客となり得るが、それとは無関係に1票から上下しない。
すべての住民は改善案を自由に提案できる。たとえばひとりの住民が一度に100個提案してもよい。ライブ会場に似つかわしくない設備でもよい。
相当に無茶な案でも法的、物理的、あるいはそれ以外の要因によって不可能でなければメラーは善処する。
提案された改善案について、機材の種類など細かい指定がなければメラーが選んで予算に反映し、見積もり金額を提示する。
既存の案と大きく被る内容が提案されると、擦り合わせて既存の方に一本化した上で見積もり金額を修正する場合もある。
また、これらの融通は住民と視聴者の反応を見た上でメラーが随意に決定するが、反発心や抵抗感を示す者が多い場合は差し戻す場合もある。
すべての有権者は月に一度、提案された改善案のうちひとつだけ選んで持ち票すべてを投じることができる。
ただし少数第二位以下は切り捨てる。たとえば0.59票持っていても、投票において有効なのはそのうちの0.5票だけである。
改善案ごとの獲得票数を全有権者の合計票数で割り、その比率に応じてプールから資金を分配する。
見積もり金額を満たした案はただちにメラーが実行する。機材を単純に運び込むだけで済む場合もあれば、大規模な工事になる場合もあるだろう。
見積もり金額に不足していても分配分は翌月以降に繰り越される。当月の獲得票数が全体の1%未満なら廃案となり、分配分はプールに返金される。
「なにこれどういうこと?住民の数をライブ客数で割るとか、購入額比率とか、資金プールとか、改善案とか、見積もり金額とか……意味不明」
「住民やファンは票を持ってる。投じられた票数によって案にカネが注入されてメラーの提示する見積もり金額に到達したらそれが叶うってこと」
「客が多いほど客一人当たりの持ち票数は減るけどライブで金を多く使った奴は増える。その月の合計金額によって次の月に票が割り当てられる」
「公式サイトで確認したら俺の票0.03になってんだけど」「それは有権者として扱われません。もっとライブでお金を使って0.1以上にしましょう」
「住民は何もせずに毎月1票もらえるんだよね。ずるい」「まあ住民が主役だから当たり前。提案できるのも主役だけ」
「全住民の票と全ライブ客の票は同数のはずだから対等」「0.1未満は切り捨てだから客が不利」「別に住民と客が競ってるわけじゃないでしょ」
「住民はちゃんとまともな改善案を提案するのだろうか」「まあ普通に視聴者と相談して決めるんじゃねえかな」「ネタで変な提案する住民多そう」
「これ意味あるのか?メラーが最初からいい感じのライブ会場を作っといてくれればそれで済んだ話のように思うが」
「成功するかも分からないライブに最初から大量の予算使いたくなかったんじゃないかな。成功するごとにそこから予算を出すってのは合理的だよ」
「メラーはそんなケチじゃないでしょ」「別に合理的でもないしな。ちびちび機材入れ替えたり工事したりすれば、むしろ余分に金がかかるだけ」
「改善案の順番によっては前のが無駄になる事態だってあり得る。まずは並の設備にして、その後でやっぱり優れた設備にするとか」
「良質な設備だとやっぱ高くなるだろうからね。でも資金が貯まるまで待つよりさっさと並にでもした方がライブ客が増えて金貯めやすくなるかも」
「住民とファンで話し合って有効な案を決めて、みんなで結束してそれだけに投票していくのが一番効率がいい。はみ出し者は糾弾する」
「糾弾なんてしてたら絶対に空気悪くなっていくわ」「変な案が出てきてもいいんじゃないかな。それも住民の個性でしょ」
「無記名投票のようだけど、他人の投票先をバラすのって許されるの?」「特に罰則は設けられてないと思う。自分から他人に言うのもアリ」
「組織票を作るためにリアルマネーが飛び交うかも」「実際の選挙のようになってきたな」「たかが機材入れ替えるだけで馬鹿馬鹿しい」
「投票で少数第二位以下が切り捨てられるなら、プールされてる資金全部を一回の投票で使い切るのは無理だよね」
「各個人の端数分を合わせれば相当な金額になるだろう。私は0.14票だからこの時点で0.04票分の資金は今回使われないのを意味する」
「住民は1票だから端数が出ない。全票数の半分は住民分だから資金の半分は絶対使われる」「投票しなければ持ち票分の資金は使われないだろ」
「投票された分だけ案にはプールから資金が分配されて確実に可決に近づいていくんだから、あんまり焦る必要ないんじゃね?」
「メラーの狙いはそういう感じかもな。みんなで結束した方が早く成功に近づくけど、別にそうしなくても少しずつ進んでいくっていう」
「でも毎月全体の1%以上獲得できない案は即廃案なんだろ?それまでに溜まった金は戻るから無駄になるわけじゃないけど、徒労感はあるだろうな」
「それより機材とか指定しなければメラーが勝手に選ぶってなんなの?そんなの許されるの?」「気に入らないなら指定すればいいだけじゃね?」
「普通はライブ施設で使う機材の専門知識とかないから仕方ない。視聴者に相談するとしてもメラー以上に知識ある奴なんて稀だろうし」
「こういう時メラーの力が本当頼りになる。マジで何でもできる企業」「まあそれくらいじゃないとこんな馬鹿げたシステムすぐ破綻するから」
「適当に思いついた案を雑に投げるだけでプロが手直ししてくれるってわけでしょ。すごい」「そんなもんコンサル業の基本だろ」
「メラーにとってはこれもビジネスだよな。投票のためにライブに多額の金を使うようになるし公式サイトも頻繁にチェックするようになる」
「どんな提案がされそうか、どれだけ投票されそうか、次のライブで資金が何炎増えそうかって各所でもう話題になってる」
「ライブでそれなりの金を使えば会場の運営にほんのちょびっとだけ関われるってことだもんな。面白い」「株主みたいなもんか」
「ライブの利益は本来プロデュースしてるメラーが総取りできるのに、それをこうやって使って話題性につなげるのは上手いやり方かもね」
ほどなくして、多数のアイドルグループのライブの開催が決定した。それだけ全体の実力が着々と育ってきているということだろう。
それらも大成功を収め、多額の利益を街にもたらした。アイドルはライブについても差し障りなく展開できているように見える。
しかし、ここで問題が起きた。ライブができるグループの数に比して、会場の数が少なすぎるのだ。というか、ホールひとつしかない。
会場を連日フル回転させてもライブ開催の順番待ちをしなければならないグループが出てくるというのは、贅沢な悩みである。
複数グループが一度に参加する合同ライブなどの形式にすればある程度は順番待ちを解消できるが、毎回合同というわけにもいかないだろう。
また、ホールの設備は少しずつ改善されているが、未だ劣悪と言わざるを得ない。毎回そこでのライブとなり、飽きる客も出始めている。
この事態に堪りかねた住民たちが、ライブ会場の新設を複数提案した。本来は既存のホールの設備改善を目的としているが、運営は柔軟に認める。
ただし資金プールはまだまだ乏しいため、優良な会場はむずかしい。ホールとはおもむきを変えるという要望を最大限に考慮する必要もある。
運営は提案者に対して、収容人数が数百人のライブハウスの新設を逆提案する。提案者は他の住民や視聴者と相談し、その案を呑んだ。
街の外周付近にライブハウスの新設が始まる。これで問題は緩和されていくだろう。足りなければ、さらに追加の提案によって新設もできる。
「数十個提案されたけどライブハウスに集約されたのか」「雑な案ばかりだったのにコンセプトや動線や工法まで細かく考えられてる」
「ライブハウスはホールと何が違うの?」「作りによって様々だが、概して客と演者の距離が近い」「アイドルと近いってのはいいね」
「客は立ったままライブを楽しむから臨場感を得やすいってのもある」「ライブハウスでも座るとこあるけどね」「スタンディングは疲れる」
「キャパ小さいから技量が未熟でも無理のないライブができるんじゃないかな」「てか安いってのがデカイ。今出せる予算によく収まったもんだ」
「相場よりかなり安いように思えます」「壁ぶち抜いて作られてるレッスン用のスタジオを改造して作るから」「居抜きってやつか」
「ライブがない日は練習に使えるわけね」「いつも練習するとこで本番するなら緊張も緩和されるはず」「なかなかメリットもあるんだな」
「ショボいもんかと思ったけど案外合理的なのか。メラーってもしかしてめっちゃ優秀なのでは?」「これくらいはメラーなら当たり前」
「ゆくゆくは何万人も入る大型会場でライブやるのが目標だろ?なのに最初に作った会場が数千人、次が数百人って後ずさりしてるのはどうなの」
「街のアイドルはそんな目標掲げてない」「会場の大きさでアイドルの格が決まるわけではないし、ライブハウスも需要があるから別にいいのでは」
「まあ落ちた感じはする。一旦メジャーデビューしたのに地下アイドルに戻ってきたみたいな」「数万人ライブはいつになるのやら」
複数の地方にライブ会場を作り始めたことをメラーはアナウンスする。いずれも収容人数は数万人規模。相当な広さである。
しかしやはり設備は劣悪だった。これも改善システムが採用されているのだ。資金は会場でのグッズや飲食物の販売利益から捻出される。
女性だけの街のアイドルが全国ライブを開催する会場として使用するのを目的としており、それ以外には使わない。
それらの会場のライブチケットは公式サイトのアカウントがなければ手に入らないが、いずれかの条件を満たせば無料となる。
条件は今のところ、ふたつ設定されている。ひとつは住所から最寄りのライブ会場であること。ひとつはアイドルの個別等級が上限の2であること。
「もう全国ライブかよ。早すぎる」「条件のうち片方でもクリアしてればいいなら、近所のライブってだけでタダ?すごすぎだろ」
「会場に併設されてる飯屋やグッズ物販とかは普通に金取られるようだけどね。当然、会場までの交通費も」「それでも充分だわ」
「あと無料なのは通常席だけっぽい。いい席はさすがに有料。無料だからって応募しても当選するとは限らないしね」
「新規客狙いだろうな。そのアイドルに興味なくても近所でやるライブに無料で行けるなら行くって人もいるはず」
「興味もないのにわざわざ遠くのライブ会場まで金払って行くとか絶対ないしね。世の中の大抵のライブはそれだから元からのファンしか来ない」
「いや、無料ライブ自体は高いチケット代取れる有名アーティストですら、たまにやってるんだけどね。新規層の開拓ってマジ必須だから」
「逆に重度のアイドル信者は全国ツアーの全ライブに参戦するのも当たり前。いわゆる全通」「そういう奴から搾り取ればいいってわけか」
「でも出演アイドルの個別等級が2なら全国どこでも無料なんだろ?信者だったら2に上げてて常に無料だろうし、搾り取れないんじゃね?」
「2なら普段からそのアイドルのために多額の金を払ってるはずだから、ライブ以前に既に搾取に成功してる」
「無料だからメラーが利益を捨ててるように見えるけど、実は等級のメリットを増やすことでそっちで利益確保してるわけか」