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11話:ポスト1001-1100

この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku

一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。

なのにその芽を早々と摘んでしまった。ビジネス重視を謳っている那尊らしからぬ判断に、困惑が広がる。

処分の重さに、ファンのみならず他の住民からも悲嘆の声が上がった。あまりに唐突な仲間との別れを、受け入れられない者が多数出ている。

アイドル活動ができなくなろうとも、せめて街からの追放だけは容赦してほしいとの陳情も集まる。

那尊「男性との接触という最悪のルール違反を犯す住民を出したのは、すべて私の不徳の致すところです。大変申し訳ございませんでした」

那尊「当方の監督不行き届きがこのような事態を招き、ファンの方々を裏切ってしまいました。私はお客様との約束を守れなかったのです」

那尊「しかしすでに当該住民の処遇は決定しています。撤回はいたしません。これを軽々しく曲げているようでは街の規律が保たれないのです」

那尊「女性だけの街の住民である以上、男性と触れ合ってはいけません。故意にそうしたのですから、罰されなければなりません」

那尊「これは街に移住してくる時に確認し、本人が契約内容に合意し、締結しています。そして今回の処分にも納得しているようです」

那尊「という説明だけでは世の人々が納得されませんね。問題についてもう少し詳しくお話いたしましょう」

那尊「当該住民はアイドル業務として外周壁のスタジオで練習していました。そのスタジオ内には街の外側に続く窓や出口があります」

那尊「外側にはファンの方々が頻繁に訪れてくださっております。それ自体は禁じておらず、大変結構です」

那尊「ファンが女性なら、レッスン中の住民の裁量でスタジオ内に招き入れ、触れ合うのも特に問題ありません」

那尊「しかし男性なのです。所定の入場料を支払っていない男性はスタジオへの接近も許されません。女性だけの街なのですから当然でしょう」

那尊「具体的にはスタジオ外側の壁から1m以内に近づいた時点で不法侵入として街の運営本部へ通報される可能性があります」

那尊「これは警備ボランティアにお願いしているのですが、強制ではありません。雇用ではなくあくまでボランティアですから」

那尊「今回、当該住民はスタジオ内から男性観光客に声をかけて1m以内に近づかせ、窓越しとはいえ持参していた手料理を振る舞いました」

那尊「スタジオ内のカメラに映っており、その場で共にレッスンしていた住民も証言しています。何より本人も認めているので間違いないでしょう」

那尊「この事態が何度も起きていながらボランティアからの通報は一度もありませんでした。視聴者からの通報は多数ありましたが」

那尊「一般には微笑ましい光景なので、現場では許容されるような雰囲気だったのかもしれませんね。しかしやはり、街では許されません」

那尊「それをやめるよう運営は戒告をしてきたのですが、当該住民は無視して同じ行為を繰り返したというのが顛末です」

那尊「当該住民はお料理が趣味で、普段からそれを人に振る舞うことも多かったと聞き及んでおります」

那尊「ですから、今回の男性と特別に親しかったとまでは断定できません。単にアイドルとファンの適切な関係だったのかもしれません」

那尊「が、処分しなければ規律は形骸化してしまうでしょう。処分に手心を加えてほしいとの声もいただいておりますが、できないのです」

那尊「街は自由を旨としますが、それは規律の上に成り立ちます。街の中で規律より重いものはありません。問題のてんまつは以上です」

那尊「なお、当該住民は処分後、弊社での雇用が決定しております。街の近隣にある観光客向け飲食店の店員として従事していただきます」

那尊「コック兼接客という立場になります。街の住民ではなくなるので、男性客と自由に触れ合ってもらって構いません」

那尊「さらに、今まで当該住民に投げ銭やプレゼントをしていただいた方には、弊社負担で全額返金します。私の役員報酬は12ヶ月100%減額します」

那尊「これはファンの方々への最低限の誠意であり、深刻な失態に対する責任の取り方です。言葉だけの謝罪では痛みも反省もありません」

那尊「また、当該男性を不法侵入として弊社が問題視することはありません。近づいてしまったのは、住民に声をかけられたせいなのですから」

「取り付く島もないって感じだったな」「ま、一度決定した方針をいちいちファンの頼み聞いて変えてたら組織として示しがつかんでしょ」

「にしてもファンがこれだけやめてくれって言ってるんだから少しは聞くべきじゃない?あまりにも冷たすぎるよ」

「ファンを第一に考えてるからこそのクビだろ。男と仲良くしたらこうなるって分かったから、他のアイドルは気をつけるようになる」

「でもたかが手料理でってのはなあ……クビにされた子にしてみればほとんど善意のファンサービスだろ」「ていのよい見せしめでしょうね」

「何回も繰り返してからの処分だろ?ライン越えた瞬間に一発で処分じゃないだけ全然甘いと思うよ。むしろ規律はどこ行ったんだと言いたい」

「冷淡な物言いの中にも温かみがあったよね。街からは排除するけど雇ってあげるっていう」「しかも料理好きだから飯屋ってのが素晴らしい」

「てか投げ銭の返金もすごくね?普通アイドルがクビになったからってファンにグッズやチケット購入費を返したりしねえだろ。なんだこの神対応」

「まあどのファンがどれだけの金をそれまで払ったかなんて記録してないしね。街はアカウント作ってデータの履歴で追えるからそれができるけど」

「できても普通やらないよな。やる必要がない。ドルオタなんて好きなアイドルが消えても懲りずに他のアイドルを好きになって金払うから」

「配信カメラ操作するために払った金まで返金してるらしい。金払って操作した時にクビになった子が映ってれば返金」「ひえ~そこまでやるのか」

「那尊はビジネスビジネス言ってるのになんで自分から儲けを捨てるんだろう」「だからこそじゃね?信用がないとビジネスは成り立たない」

「信用をつなぎ止めるためとしても、こんな良心的なのは異常だ」「那尊さんってやっぱすごいわ。ビジネスとしてっていうか人として信用できる」

「お前らにそうやって持ち上げられるのを見越しての返金と雇用に決まってるだろ」「那尊なら本当にそれくらい計算してそう」

「コックと接客の兼任はおかしい。普通はどっちか専任でしょ」「小さい個人飲食店だとオーナー兼シェフ兼接客とか当たり前だけどね」

「本人の適性を尊重したのかな。料理上手いし人当たりもいいから」「看板娘が手料理を出してくれる店なら人気も出るはず」「俺店通うわ」

「ファンにしてみればむしろこうなってよかったという考え方もできるのでは?」「アイドルとして羽ばたいてほしかったという気持ちもある」

「実際のとこ、その処分されたアイドルってどんな人間性なの?やっぱ男に奔放な感じ?」「いや、特にそういうのではないと思うけど」

「単に人懐っこくて誰にでも優しいだけ」「器量よし、性格よし。天使だよ」「それってファンの欲目だろ」「本当にいい子だから!」

「ところで、侵入した男に手料理食わせるのを見過ごしてたボランティアはどうなる?」「全然触れなかったから許されたんじゃないか?」

「そこは大して注目されてないから、あえて言及しなかっただけかも。あれも処分、これも処分って発表だとカドが立ってイメージ悪くなる」

「最後にわざわざ男性客を問題視しないって言ったのもそういう理由だろうな」「那尊さん実はとんでもなく話術が巧妙な気がする」

「視聴者は通報して運営がそのたびに住民に注意したのに、ボランティアたちは一回も通報しなかったんだろ。処分されても仕方ない」

「ボランティアは侵入者を見過ごしたらファン等級を剥奪されるんだっけ。ファン等級のためにボランティアやってるんだから最悪の罰だ」

「あと追い出されて多分二度とボランティアとして使ってもらえなくなる。ただの噂だけどね」「メラーからの信用を失うわけだからそうかもな」

「つーかあのスタジオは壁を貫通するように作られてるんだろ?男ファンと触れ合うのが禁止なら、なんでわざわざそれができる構造にしてんの?」

「まあそこはファンを惹きつけるためでしょうね。手が届きそうな距離まで接近できるから観光に行くというわけで」

「まるで動物園だな」「最初から見世物小屋とか言われてるし」「客が動物に餌付けされる側だけどね」「今回はそれが比喩じゃなかった」

「アイドルの自由を最大限に尊重しつつ、男性との触れ合いは禁止っていう最低限を守るためにこうなってるんじゃないかな」

件の元住民が勤務する飲食店は人気を博し、有力な観光資源となった。彼女を目当てに訪れる観光客も多く、街全体の人気にも寄与している。

後日、那尊が直接来店して本人の手料理を食べ、褒めてみせたことでさらに拍車がかかる。あざといパフォーマンスだが那尊の影響力は絶大だ。

また、不祥事に対する厳しい処断は街のアイドルの信用とブランド価値を高める結果にもつながっていた。

隠れて男性と不適切な付き合いをしているかもしれないというのは、ファンにとって最大の心配事であり、アイドルを信じるための障壁である。

それをほぼ度外視できるのが今回、改めて強く周知された。ルール違反に対する那尊の毅然とした対応が、ファンにとっては心強い。

世間のアイドルファンの間でも、無二の利点に魅力を感じて街のアイドルへの乗り換えが相次いでいる。ついに市場のシェアを奪い始めた。

公式サイトには住民ごとの活動履歴が映像とともに詳細に公表されており、アカウントさえ作れば誰でも無料で閲覧できる。

業務以外の日常生活の姿まで多く鑑賞できるため容易に人物像を把握でき、親近感を抱きやすい。新しくファンになるための障壁も低いのだ。

乗り換えてしまえば、そのアイドルを信じられる。疑い続ける必要のある世間のアイドルのファンになど二度と戻れなくなってしまう。

なによりファン等級を上げればメリットがあるため、それを捨てるのは惜しい。街のシステム自体が囲い込みに特化したものと言えるだろう。

ファン等級システムの拡張をメラーはアナウンスする。住民個別のファン等級の導入である。

ひとりの住民に対して一定期間に一定ポイント以上の投げ銭やプレゼントをすれば等級を得られる。

ただし住民ひとりあたり上限は2。何人でも2に上げられるが、等級の合計値には10までしか反映されない。

条件のラインは厳しく、クリアして等級を一度得ても、それを割ると0に戻る。ふたたび得るには同じラインのクリアが必要となる。

相当に熱心なファンでなければ、これで得た等級を維持するのは困難だろう。特に10を維持し続けるには莫大な投資をしなければならない。

さらに新システムの導入をメラーはアナウンスする。住民が欲しい物リストに設定した商品を、視聴者が安く購入できるシステムだという。

今までは疑似通貨を購入する場合のみ、ファン等級の合計に応じて割引されていた。具体的には100-ファン等級%のレートである。

疑似通貨は投げ銭やプレゼントにしか使えない。しかし今後は通常購入する商品にもこのレートが適用されるのだ。

「住民個別の等級システムやばいね。搾り取りにきた」「全然割に合ってなくない?こんなもん無理して個別等級上げる奴いるの?」

「いるんだよ。好きなアイドルのために無限に貢ぎたい信者が」「ハマッた信者から骨の髄まで搾り取るってアイドル商法の醍醐味だからな」

「でも割に合ってないかどうかはまだ分からないよね。那尊さんは前にファン等級を上げるメリットを充分に用意するって言ってたから」

「あれまだ伏せられてるんだっけ」「アイドルが本格的にライブできるようになったら明かされるって噂はあるけど定かではない」

「住民1人あたり等級2ってのが分からんのだけど、条件クリアの具合によっては1しかもらえなかったりするの?」

「いや、1だけってのはあり得ない。0か2。所定の条件をクリアできなければ何ももらえなくて、クリアできれば2もらえる」

「おかしくね?なんで1がなくていきなり2なの?」「条件が厳しいせいかな。他の等級との釣り合いを取ってるんだろう」

「等級の合計に10までしか反映されないのは住民5人分までしか反映されないって意味か」「なんで10までなんだろう」「全体のバランスでしょ」

「ファン等級の合計はこれまで上限10だったけど今回新しく10追加されて上限20になったからね。インフレしてるからバランス調整は必要」

「一気に上限2倍ってもうバランス調整ミスってねえか?ボランティアで4、投票で1なのに金払うだけで簡単に10もらえるっておかしいだろ」

「その10を維持するのに大金がかかるんだよ。ボランティアも投票も金かからないし上がれば勝手に維持される。単純に数値だけで比較できない」

「新システムの話だけどさ、住民のうち誰か一人でも欲しい物リストに入れてたら全視聴者はその商品を安く買えるの?」「そのはず」

「住民の欲しい物と視聴者の欲しい物って別じゃない?何の関係があるわけ?」「アイドルと同じ物を欲しがるファンって結構多いよ」

「有名人の持ってるブランド品を身につけたがる人って昔からいるもんね」「有名人はスポンサーの宣伝のために持ってるだけなのにな」

「好きなアイドルが配信中に頻繁に食う菓子なんかも、爆買いして配信見ながら一緒に食うのが楽しいんだと」

「そのためのシステムか。アイドルにプレゼントして同時に自分も買って食う」「届くのが同時とは限らないけどな。街は早けりゃ10分で届くし」

「アイドルが待てばいいだけじゃね?それくらいはファンサービスじゃね?」「実際、次の配信で何食べるとか告知してるアイドルいるからな」

「面白いトークとかできなくてもネット越しのファンと一緒に飲み食いするだけでも配信として成り立つんだから楽なもんだ」

「で、等級20なら20%オフでその商品を買えるわけか」「2割引のために個別等級2を5人分はちょっと金がキツいなあ……」

「私は個別どころか疑似通貨購入分の5だけで精一杯」「俺なんてまだ3だよ。まあ3%でも安くなるならちょっと嬉しいけど」

「どんな商品でも2割引の可能性があるってのがヤバイ。運営が提示してるリストには数万炎の商品もあるから」

「そうか、客は何が安くなるか気になるから頻繁に住民の欲しい物リストをチェックするようになるんだな」

「そんで逆に自分の好きな商品を住民がリストに入れてたら親近感が湧いてファンになっていくってパターンもあるんじゃねーかな」

「欲しい物リストは個数も同時に設定し、プレゼントされるたびにそれが減るようだが、割引を受けられるファンはとても少なくなるのでは?」

「個数カウントが0になってからも24時間は割引が持続するらしい」「マジでサービスよすぎだろ、メラー」

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