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10話:ポスト901-1000

この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku

一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。

「アイドル業界って古参ファンが新参ファンにマウント取ったりできるから人気を最優先する奴も結構いるよ。推し活ってそういうもん」

「理解しがたい感覚だな」「活動歴が長いアイドルってそういう厄介な古参オタクがでかいツラしてる場合多いから新規には避けられがちだよね」

「街のカメラは誰を映すために何炎使ったとかログ残って誰でも確認できるから、古参にとっては最高のマウント材料じゃないかと思うよ」

「自分はこのアイドルが人気出る前から支え続けてましたって証拠になるんだもんな。映りのいい映像が撮れたら後のファンのためにもなる」

「ドルヲタってそんなどうでもいいこと誇るの?アイドルが好きってだけじゃ駄目なの?」「好きなアイドルを応援してる自分が好きって人は多い」

「大半は純粋にアイドルが好きでファンやってるけどね。マウント取ってくる奴がいたらどうしても影響される奴は出てくる」

「ファンの自己顕示欲をメラーは金儲けのために利用しようって魂胆か。悪どい」「そういう需要があるなら別にいいと思いますけど」

「配信者がただ街を歩いてるだけで金になる可能性が生まれるってのは画期的だね」「でも盗撮だろ。本人が事前に承諾してるとはいえ」

「今更だけど住民=配信者=アイドルなのか?」「その辺の境界は曖昧って那尊が言ってなかったっけ。誰でもアイドルになれるとかなんとか」

「個人配信してない住民だって多い。まあ今後するのかもしれんが」「街としてはまだ住民をアイドルとして活動させてないんじゃないかな」

「個人配信したらアイドルでよくない?」「じゃあ同接数が万年1桁の俺だってアイドルだな。配信なんて一般人でも普通にやってる」

「逆に活動方針として個人配信しないアイドルも世の中にはいくらでもいる。街の住民は配信もアイドル活動も強制されてない」

話題沸騰中の街に女性観光客が集まってきている。男性は高額な入場料を支払わねばならないが、女性は無料なのだ。

ある者は単純な好奇心から、ある者はアイドルに憧れて、ある者は女性だけの街という特殊な環境を実体験して外に伝えるためである。

しかし大方の予想どおり観光地としての評価は、かんばしくない。率直に表現すれば、あらゆるサービスの質が劣悪なのだ。

観光客向けのサービスはメラーからの業務のオファーを受けた住民が提供する。が、そのようなサービス業の経験がある住民は少数である。

事前にマニュアルに目を通すが、接客も担当作業もトラブル対処も何一つ満足にできない。本来なら客から金を取れるような段階ではない。

住民同士なら互いに迷惑をかけあうのが当たり前の間柄のため笑って済ませられるが、一方的にサービスを受ける観光客ではそうもいかない。

なにもかもを覚悟の上で訪れた客も多いが、それでもやはり厳しい意見が相次ぐ。ひいき目に見ても、フォローしきれないほどひどいのだ。

また、街ではほとんどのエリアで撮影が禁止されている。住民の肖像権を根拠としており、承諾せねば街に入れない仕組みである。

そして街中に大量に仕掛けられたカメラでは一方的に撮影され、配信もされる。このストレスに我慢ならず、すぐに帰ってしまう客も多い。

「全然駄目駄目じゃん」「みんな素人だし仕方ない」「接客って慣れないとムズいから。まず初対面の人間に話しかけるってのがね」

「そんなん言い訳だろ。客に対して手落ちがあるなんて許されない。那尊は責任者としてはよ謝罪会見しろ」「悪質クレーマーかよ」

「店とか宿とかは一般的な相場より安めの料金らしいからある程度は客の溜飲が下がってるんじゃないかな」

「でもそれだとメラーとしては赤字なのでは?」「これも那尊に言わせればエンタメなんじゃないの?赤字でも話題になればいいとか」

「見てる分には面白いし話題になってるからな」「半分炎上じゃねえか」「本気で期待して裏切られて叩いてる人は多分ほとんどいないけどね」

「こうなるって分かってて行ってんだもんな。客だって話のネタ程度の感覚だろ。ネットにレポ書くだけでも結構ウケてる」

「ミスした住民にその場で投げ銭する客すらいるとか」「可愛いから許されてるだけ。俺のような汚ッサンがミスってもそうならない」

「というかタクシーすらないんだろ。不便すぎる」「低速移動のゴルフカーっぽいのはある」「あれ乗ってる住民ほとんどいないよな」

「なんか特殊な免許とか必要なの?」「いや、一般自動車免許でいける。荷物の配達やフードデリバリーにも使っていいらしい」

「単にその業務をやる住民が少ないだけでしょ」「真面目に業務やらなくても勝手に視聴者の投げたカネが降ってくるんだもんな」

「人身事故とか起こしたら洒落にならん」「車のAIは街のサーバーと常に同期して全域の歩行者の動きを捕捉してる。事故リスクは低いはず」

「しかし観光地としてどうなんだこれ」「サービス面が駄目なら客も寄り付かないかもね」「そういう趣向のテーマパークとしてなら……」

「私は住民が見たいのであって観光客が見たいわけじゃない。客が増えてカメラに映り込んでくるくらいなら観光地として不人気の方がいい」

「撮影禁止って破ったらどうなる?」「街から叩き出されるんじゃね?」「住民が写ってたら盗撮になるはずだし肖像権の侵害で訴えられるかも」

「女でも街に入るにはアカウント必須だからな。訴訟以前にまずアカウント削除されるだろうね。公式サイトで配信見ることすらできなくなる」

「削除されても別アカ作ればいいだけでは?名前も住所も嘘でいいだろ」「身分証明書の撮影画像が必須だからそれは難しい」

「メラーの他のサービスともアカ共有してるから削除されるのは痛すぎるよ」「俺離島住みだからBAN食らったら通販できなくなって死活問題だわ」

開業からしばらく経ち、住民が街の生活に慣れてきた頃、アイドル業務のオファーが初めて出された。しかし多くの者はそれを見送る。

皆、現状で充分豊かに暮らせているため新しい要素に飛びつく必要性が薄い。アイドル志望の住民も多いが、受託者はほんの数人に留まった。

オファーの内容は、厳密にはふたつ。アイドル役としての歌やダンスの練習と、その指導役である。

指導に向いた資格や経験を有している住民はごく限られており、街にとって貴重だ。そうした人材には特別に高額オファーが出された。

歌やダンスというのは素人の個人練習では上達の効率が悪く、一定以上の技量へ至るのはむずかしい。プロの指導者が必須なのだ。

ゆえに、指導役が受託されてからアイドル役のオファーという流れとなっている。指導役が決まらなければアイドル役のオファーは出されない。

練習は専用のスタジオで行われる。今回はダンスのみ。アイドル役は全員が素人なので基礎から始まった。技量はまるで稚拙だが熱意は確かである。

もちろん、この風景も配信されている。街として初のアイドルレッスンなので話題性があり、視聴数は見る間に急増する。

努力の様子に感銘を受ける者も多く、投げ銭は普段より高額かつ高頻度だ。練習の合間、カメラに向かって笑顔で手を振るとそれがより顕著になった。

元々、人に好かれる素質に優れた者たちである。少し愛想よくするだけで容易にファンを獲得できるし、そのための環境が整っている。

この日、アイドル役の住民は評判となってチャンネル登録者数が急増した。無論、次からのオファーは多数の住民がこぞって受託するようになる。

指導役も例外ではない。アイドル役以上に注目を集める立場であり、高い技量を持っているのだ。着実に人気を伸ばしてゆく。

住民たちは個人配信でアイドルレッスンの体験について語り、視聴者にアドバイスを受けたり、自室での個人レッスンの様子を見せたりする。

それがさらに好評を博し、人気につながり、他の住民にもよい影響として伝播する。女性だけの街にアイドルのイメージが定着し始めた。

街の外周にもスタジオが複数設営されていた。正確には数十mの厚みがある壁の中に作られており、街の中から直接出入りできる。

音楽やダンスのスタジオとしては不向きだが、あえて遮蔽物を少なくしており、周辺から内部が見えやすい構造となっている。

ただしこの空間も街の中と同じ扱いであるため男性は基本、入れない。使用中は女性でも許可がなければ立ち入り禁止である。

近辺に立っている警備ボランティアにとっては、アイドルがそこで練習するなら特等席なのだ。味わえる雰囲気がカメラ越しとは異なる。

業務内容はアイドルレッスンでも、どこで何をするかは本人らの自由である。練習にスタジオを使う必要はないし、最悪何もせずともよい。

街の中のスタジオより距離があるため、そこを使うのは時間と手間がかかる。しかし、住民は自然とそうする場合が多くなった。

そうした方がボランティアから直の反応が感じられるのだ。ゆくゆくはライブ公演を見据えており、客に慣れておくのは肝心である。

次第に観光客が訪れ始める。もちろん、このスタジオでのアイドルの練習風景が目当てだった。街にとって初の観光資源といってもよいだろう。

街から少し離れた所にはメラーが経営する観光客向けの宿泊施設があり、ここで宿泊しながらアイドルの練習時間を待つ者が多い。

メラーに対して、アイドルグッズの制作と販売を求めるファンの声が早くも上がり始めた。これを受けて住民にグッズ企画のオファーを出す。

このような企画にたずさわった経験のある者を優先する。また、本人らに自由に作らせ価格設定も任せる。その方がファンによろこばれるのだ。

他の部分は予算も含めてメラーが負担する。採算性は度外視し、少々なら赤字でも構わない。利益より成功体験が必要である。

配信しながらファンの意見も参考に企画が進められ、やがて案が固まり、サンプル品が作られ、確認や調整が行われ製造される。

アイドルらしい活動は基礎レッスン以外に何もしてないので安価で無難な日用品が数点のみだが、初回生産分はネット販売だけで即日完売した。

今後は他のアイドルにも企画させ、さらに種類と生産数を増やし、観光客向けの施設でも販売していくようになるだろう。

アイドルにも次のステップが求められ始めている。すなわち、楽曲作りである。だがその前にグループを作らなければならない。

結成が望まれるグループをファン投票によって明確にし、上位グループのメンバーの承諾が得られれば即決定となる。

運営によるメンバーの審査などはない。住民の自由と客の要望を最大限に尊重するため、水を差すわけにはいかないのだ。

ややあって公式サイトにグループの専用ページと配信チャンネルが新設される。だが、メンバー紹介以外にコンテンツ内容はまだほとんどない。

楽曲作りに向いた住民に業務のオファーを出す。しばらくの期間を要し、無事に及第点を満たす楽曲が完成した。

グループのメンバーは重点的に歌唱の練習を積んでいる。収録した音源を調整して専用ページで公開すると反響は上々だった。

一般のプロによるものほど高品質ではないが、ファンにとってそれはどうでもよい。好きなアイドルの楽曲が作られたのが何よりめでたいのだから。

女性だけの街として初のアイドルグループ、初の楽曲は世間でも話題となった。専用ページでしか視聴できないため、アクセスが集中する。

次は振付である。ライブで歌って踊るには振付がなくてはならない。これも振付師にオファーが出され、同じ流れで無事に完成した。

さらに楽曲のプロモーションビデオの作成に入りたいところだが、それに必要な高度なスキルを持った人材が街にはいなかった。

代わりに、グループメンバーによるダンス動画が専用ページで配信される。その程度なら簡単な動画編集だけで作成できるのだ。

「グループ結成した意味ってあんの?那尊はグループ作ってもメンバーは流動的になるとかなんとか言ってたよな」

「まあグループってのはメンバーを固定するための枠だから、流動的なら意味ないかもな。でも結成は話題になるし別にいいんじゃね?」

「メンバーがコロコロ変わっていくアーティストグループもたまにあるけどね。グループという単位は必ずしもメンバーを固定するものではないよ」

「今後も投票でメンバー決めていくらしいよ。それで既存のメンバーも変わっていく可能性があるとか」「ファンの声を重視してくれるのか」

「てかPVくらい作ってあげればいいのに。メラーなら余裕でできるはずだろ」「住民にやらせるのに意味があるのでは?自律がどうのこうの」

「正直PVって無駄な演出だらけで好きじゃないから、簡素なダンス動画の方が助かる」「助かるって何が?」「自分も踊りたいってことだろ」

「ファンなら振付の完コピとか当たり前ですからね」「歌も全部歌えないと話にならない。私は大抵キー下げるけど」

「もしかして世間の大抵のアイドルソングが簡単な理由って……」「まあファンが歌いやすいからってのは大きいだろうね。ダンスに関しても」

「ライブでアイドルに合わせて客が全員で同じように歌って踊るの?」「別にそうしないといけないルールがあるわけじゃないよ」

「振付どおりに客が踊ることはあんまりない。ペンライトやサイリウム持ってヲタ芸が一般的」「あのオタク特有のキモい動きか」

「ヲタ芸って何のためにやってんの?曲の振付とは全然違うよね」「応援。あとはオタク同士の一体感を出すためとか」「ほぼ自己満足だろ」

「ぶっちゃけあれ嫌がってるアイドルかなりいるよ」「昔は単なる迷惑行為だったしね」「今でもだよ。アイドルに集中したい客にとって迷惑」

「そんなに叩かれるようなことじゃないでしょ」「アイドルそっちのけで自分たちのパフォーマンスに夢中になってんだから叩かれるのは当たり前」

「ドルヲタって時点でアレな奴が多いから仕方ない」「信者の扱い方ちょっとミスっただけでアイドルや運営が炎上する場合も多いもんな」

「街のアイドルもいつか炎上するのかな」「メラーならその辺は大丈夫だろう。長くアイドル事業やってるしファンの舵取りなんて手慣れたもんよ」

「アイドルの一番の炎上要因って男だろ。街は男が排除されてるからファンは心の底からアイドルを信頼できる」

「これほど急速に人気伸ばしてる理由も多分それだね。他のアイドルにない超絶メリット。推してたアイドルに裏切られる心配がない」

ある住民について、メラーは業務のオファーを完全に遮断すると発表した。すでに公式サイト上の本人のページも閉鎖している。

つまり街からの排除である。再三の注意を無視して特定の男性観光客に近づき、手料理を食べさせることを繰り返したのが処分の理由だという。

発表内容に陰上中がどよめく。女性だけの街におけるアイドルプロデュースはこれまで断然順調だったはずが、唐突に暗雲が垂れ込めてきた。

問題の住民は人気が特段高かったわけではなく、どこかのアイドルグループに入っていたわけでもない。だがレッスンの業務は何度かこなしていた。

ファンは着実に増え、このままなら近いうちにグループを結成し、本格的にアイドル活動が始まり、街に大きな利益をもたらす可能性もあったのだ。

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