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第二話 この世界のいろいろ

「それで、ダンジョンって何ですか?」

『ダンジョンは非力な種族が絶滅しないためにつくった保護施設の様なものじゃよ』

「非力な種族?」

『そうじゃ。この世界には沢山の種族がおる。目の前にいるウノハちゃんは妖狐族という種族じゃ。その他にも妖精(エルフ)族や小人(ドワーフ)族といった様々な種族が存在しておる。もちろんお主と似たような人間族もいるのだが……』

「――だが?」

『まぁ、その話はあとで良いじゃろう。まずは君にお願いしたい事について説明するとしよう』

「ダンジョンマスターってやつか?」

『そうじゃ。ダンジョンマスターとはダンジョンの長。つまりは各種族の族長が務める役職なのじゃよ』


(族長ってことは、俺は人間族の族長になるのか。だとしたら何で妖狐族のウノハに頼まれているんだろう)


『それはお主にこの妖狐族のダンジョンのダンジョンマスターになってほしいからじゃ』

「えっ! なんで僕が。というかなんで!」


 勝人は言葉にしていないはずの疑問に神様が答えたことに対する驚きで混乱してしまった。確かにこんなことが実際に起きたら混乱してしまうのは仕方がないだろう。しかし仮にもファンタジーの主人公なのだからもう少し落ち着いて欲しいものだ。

 勝人が口にしたどの疑問に対して発言したのかわからない問にまたしても神様が答える。


『何でと聞かれてもの。ワシは神様じゃから聞こえるんじゃよ』

「全然答えになってないから! でも、もうそういう事でいいです」


 考える事を放棄した勝人は初めから疑問に思っていたことを神様に問いかけることにした。ちなみにウノハは神様と勝人の会話を真剣な目つきで静観している。


「そもそも俺じゃなくてもこのダンジョンにいる人に助言をすればいいんじゃないですか。神様が姿を見せないってことは直接的な干渉は出来ないんでしょ?」

『なんじゃ、いきなり察しが良いの。その通りワシが出来るのは助言をすることくらいじゃ。それでお主の質問じゃが、今このダンジョンに住んでおるのはそこにいるウノハ1人だけなのじゃよ』

「え……?」


 勝人を召喚したのがウノハでこのダンジョンに一人。そして神様は助言ができるという情報を考えると先ほどの二人の会話を考えると神様の助言を受けたウノハが俺のことを召喚したのだろう。

 勝人は自分と神様の会話を静かに聞いている狐の耳をつけた女の子に目を向ける。話は聞いているが全てを理解しているわけではなさそうだ。


(ダンジョンマスターが族長の様な存在なら確かにウノハでは心許無いかもしれない。それで俺ってことか。でも、なんで俺なんだ?)


「…………」

『…………』


 勝人は神様に対する疑問をわざとらしく念じてみた。

 しかし今度は答えが返ってくることは無かった。

 いきなり静寂に包まれてしまった。仕方ないので勝人は話題を変える。


「でも僕は人間族に似ているんですよね。それなのに妖狐族の族長になってしまっていいんですか?」

『それなんじゃがの。妖狐族の族長というよりこのダンジョンを運営してウノハの様な者たちを保護してほしいのじゃ』

「なるほど……なるほど?」


(…………)


 いつもは自分の生み出した選択肢で頭が渋滞している勝人だが珍しく選択肢すら出てこない。

 どこか遠くを見つめる勝人とそれを見つめるウノハに喋らない神様。時間だけが過ぎてゆく。

 ここで動いたのは意外にも先ほどまで静観を続けていたウノハだった。

 完全に停止してしまった勝人にウノハが近づいてくる。


「あなたがウノハたちを助けてくれるの?」

「あ、え、うん。いや待ってね」


 遠いところからの帰還を果たした。勝人は散らばった問題を一つずつ解決するためにウノハに少し待ってもらうことにした。

 ウノハは勝人の言う通りに元の場所に戻った。

 勝人は神様との問題を解決するために言葉で神様を呼び出す。


「神様。保護ってどういうことだ?」

『そのままじゃよ。今この世界には妖狐族の様に絶滅寸前の種族がいくつかおってな』

「なんでだ。そうならない為のダンジョンだろ?」

『そのつもりで創ったのじゃが、ワシも予想外なことが起きての』

「予想外?」

『冒険者。人間族の中には冒険者と呼ばれる者たちがおる。その者たちが様々なダンジョンを侵略しておるのじゃ』


(人間がダンジョンを侵略ってことはこのダンジョンも…………)


『そういうことになるの』


(それなら、尚更俺がダンジョンマスターなんかできないじゃないか。俺はこの世界では人間族なんだろ? だとしたらこのダンジョンをこの状態にしたのは俺の仲間ってことになるじゃないか。もしかして俺これから殺されるのか?)


『そんなことせんわ。君がこの世界の人間族とは違うとワシもウノハも理解しておる』


 神様の反論にウノハも頭を精一杯振って同意する。ちなみにウノハにはショウの心の声は聞こえていない。

 自分の考えが杞憂だと分かった勝人は自分のことをじっと見つめているウノハを見つめ返す。ウノハは真剣な顔つきの勝人を見て不思議そうに首をかしげる。

 何もわかっていないようなウノハに対して勝人の心の中は複雑だ。


(神様の話を聞く限りウノハの仲間たちはこの世界の人間に殺されたのだろう。そしてそんな種族は妖狐族だけじゃないってことだ。神様はそんな種族たちを保護して欲しいのか)


『やってくれるか』


(もうこの世界が自分のいた世界じゃないことは理解した。その上で俺に出来ることがあるならやりたい。それに役割を与えてくれるなら俺にも出来ることがあるかもしれない)


 勝人は神様からの頼みを受けることにした。

 この決断はこの世界で自分が生きていける可能性を優先して決断したものだ。仕事を与えられればという理由は自己暗示に過ぎない。

 実はその思考すらも神様には筒抜けになっている。だからといって何かが起こるわけではないのだが。

 この世界でダンジョンマスターとして生きることを表面上決断した勝人はその旨を神様とウノハに言葉として伝える。


「神様、ウノハ。俺ダンジョンマスターやるよ」

『苦労を掛けてすまんな。この世界に関する知識はワシが教えるから安心すると良い』

「本当にダンジョンマスターやってくれるの? あなたがウノハを助けてくれるの?」

「うん。俺にどこまで出来るかわかんないけどな。あと勝人でいいぞ」

「分かった。カツトありがとう」


 ウノハに満面の笑顔で礼を言われた勝人の心はすごく暖かくなった。こんなに可愛いお礼を受け取ったことが無い勝人には少し威力が高すぎたようだ。勝人の意識が上の空になってしまっている。

 そんな勝人の意識を神様が現実に引き戻す。


『コホン。カツト君、次はダンジョンについての説明をしよう。ウノハちゃんも一緒に聞いておいた方が良いかもしれんの』

「わかった――!」


 神様の提案にウノハが元気よく返事をする。

 ちなみに神様が勝人をカツト君と呼んでいるのは先程ウノハにカツト呼びを許した際にその対象に神様も含まれていることを勝手に読み取ったからである。

 勝人とウノハはダンジョンの説明を受ける為にダンジョンの心臓部に向かうことにした。




 天界。

 天界とは神様が暮らしている空間の事である。

 神様はこの空間からこの世界のバランスを調整している。かなり広い空間だがこの場所にいるのは神様一人だけだ。

 神様は現在、一つの大きな波を乗り越えたことに大きく安堵していた。

 神様には勝人に隠しておきたい秘密がある。

 それはなぜこの召喚に勝人が選ばれたのかだ。

 神様はその理由に関する質問をどうにか回避することが出来た。


「カツト君に君を選んだ理由は暇そうだったからだ。とは絶対に言えないの……」


 神様が勝人を選んだ理由はこれだけだ。

 もちろん、ある程度常識があって子供過ぎず年より過ぎないという条件はあったものの勝人が選ばれた主な理由はこれだった。

 神様はこの理由を絶対に明かさないと神に誓ったのだった。



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