第18話 マップ
今回の依頼はオーク3体の討伐。
他の魔物を倒してもいいが、オーク以外の討伐証明部位を持って帰ったところで金は得ることはできない。
ただし素材となる部位を持って帰ればその分の換金はできるから、まるっきり無駄というわけじゃない。
俺は『アイテムボックス』をつかっていくらでも死体を回収できるから、魔物を見かければ倒すだけ倒しておく。
今回、魔物を倒すのはアイナが行っていた。
オークを倒した後は他には雑魚の魔物しかいない。
オークを瞬殺したアイナならばそこらの雑魚など物の数にも入らない。
「とはいえ、オークはなかなか見つからないな」
「申し訳ございません。ご主人様」
「いや。アイナが謝ることじゃないよ。そういうもんだから」
ゴブリンやコボルドなどの数の多い魔物ならば簡単に見つかるけど、オークは数が多いわけじゃない。
根気よくさがして見つかるものだ。
最初発見できたのはラッキーだったな。
俺は『マップ』のスキルを得てからというもの、普段は『マップ』を使って魔物を見つけているから、こうやって地道に歩き回って魔物を探すことはなかった。
こうしてみると、魔物を探すのも結構大変だな。
これならば日付を跨ぐ可能性も考えた方がいいかもしれない。
「夕方になれば一度帰るか?」
「いいんですか? まだオークを3体倒していませんが」
「街に戻ってまた明日いけばいいんだよ。夜になる前に一度近くの街に帰って、また朝に魔物を探すってのはよくあることらしいぞ。ギルドからすれば、急ぎの依頼じゃ無ければ何日かけても別にいいからな」
もちろん、依頼を達成していない間は無報酬になる。
冒険者としても無駄に時間をかけていいことはないから、急ぎではなくても早く終えられるようにきちんと仕事はするのだ。
「とはいえどうしようかな。アイナの実力はわかったし、魔物をたおすことに問題ないこともわかった。今回の目的は達成したわけだから、あとは『マップ』をつかってさっさと依頼を達成しようかな」
「『マップ』ですか? どのようなものなのでしょうか?」
アイナが俺の『マップ』という言葉に反応する。
つい口に出してしまったが、そういえば彼女は『マップ』というスキルのことは知らなかったな。
「俺の使う魔法の一種だよ。地図みたいに周囲の地形が映し出されたり、そこにいる魔物や人の位置がわかるんだ」
本当は魔法ではなくスキルなんだけど。
でもそれを言うにはスキルを複数もっていることを説明しなければいけないから、魔法ということにしておく。
「そのようなものがあるのですね。さすがご主人様です」
「さっそく使ってみるか」
俺は『マップ』を使用すると、空中に半透明の地図が現れて周囲の地形と魔物や人が映し出される。
人や魔物は光る点で表されている。
人間が青い点、魔物が赤い点だ。
「うわあ。これがマップなんですね。こんなに詳細に地形がわかる地図なんて初めて見ました。すごいです! ご主人様の使う魔法は高度なものばかりですね!」
「そんなにすごい?」
スマホで使う地図アプリより少し高いくらいの精度なんだけど。
「普通の地図はもっと簡単なものしかありませんよ」
「どんなの?」
「ええと……、普通の地図は山や川がどの方角にあるか簡単にわかるくらいです。このマップというものに比べれば、子供の落書きですね」
あ、そんな程度のものなんだ……。
この世界の地図って。
「この地図はどのくらいの距離に川があるか、崖があるか、岩があるか、洞窟があるか詳細に書かれていますし、山の高さや傾斜がどれくらいかまで示されています。しかも私たちの周りだけじゃなくて、ここらへん周囲の一帯の地形全部が詳細に記されているんです。この情報一つだけでも、何十人もの測量士を何年も働かせる必要があります。誰もが欲しがる貴重な情報ですよ。これを紙に記して売れば一財産稼げるのではないでしょうか」
「おおう。そんなにか……」
『マップ』で得た情報って、けっこう貴重なんだな。
道に迷わないから便利とか思ってた程度なんだけど。
「これ、目的地まで道を示してくれる機能もあるんだけど。こういうのもやっぱ貴重だったりする? しかもこの『マップ』は魔物の位置がわかるから、魔物と遭遇しない安全なルートもわかるんだよね」
「そ、そんなこともできるのですか……!? 魔物に襲われないルートがわかるなんて、全ての貴族や商人から羨ましがられますよ。彼らが街の外にいるとき、どれだけ魔物への対策に苦心しているかははかり知れません」
「あー。やっぱりこれは破格なんだね」
便利なスキルだな、くらいに思っていたけど。
アイナがこれだけ驚いているのだから、本来はそんな程度の感想では済まないくらいの優秀なスキルなのだろう。
さすがにSランクだからな。
「『マップ』のことは他人には秘密にした方がいいよね」
「そうですね。誰かが知れば、ご主人様のその魔法を利用しようと近づいてくるに違いありません。他の者には知らせない方が賢明かと」
「そうしておくよ。それにしてもアイナは物知りだな。地図のこととかよく知っているね」
俺が褒めると、アイナは照れて笑顔になる。
「えへへ。私、奴隷として売られる前の家はずっと地下室にいたんですけど、そこで本とか地図とか読んでいたので。こういう知識は身に着いちゃったんですよね」
「……お、おう」
奴隷として売られる前の家。
ずっと地下室にいた。
掘り下げるとどう考えても重い話になりそうな予感しかしないから、特に深くは聞かないでおこう。
「アイナ。俺は君を幸せにするからな」
色々と思うところがあった俺は、アイナの頭をなでる。
「そ、そんな! ご主人様のお側にいられるだけで、私は幸せなのに。これ以上幸せになったらどうなってしまうのでしょう……!」
俺になでられながら顔を真っ赤にしているアイナは可愛くて、もっと幸せにしてあげたいと俺に思わせるのであった。




