文化祭のメイドは指紋認証させられる
「第5回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」への応募作品です。
ドアを開けて一礼する佐藤の肩を叩くと、ここの生徒だろう……校門にたむろする2、3人と目が合い、彼女達は「きゃっ!」と歓声をあげた。
「どの子も可愛い。いい牧草達だ」
私はウィンクして校門を塞いだ失礼を詫び、内側がモニターになっている特注のサングラスを掛けた。
AR化されたモニターは私を目的の教室へとナビする。
『メイド喫茶 2年1組』
手作りの看板の脇にはメイド風のヘアバンドを付けた呼び込みの女生徒が立っている。
「この子は一段と可愛い!!まさしくヤギを育てる芳草!!」
ARは教室の中の……左から2番目のメイドにマークを付けた。
このARを操る佐藤は他に類を見ないコーディネーターだ!
私の嗜好を完璧に把握している。
私はサングラスを外すと“芳草”を振り返り、彼女が頬を染めるのを確かめる。
「メイドの指名はできるのですか?」
「もちろん!!」との勢いよく言った後「別料金ですが……」と声が小さくなる彼女の制服のポケットに予め縦折しておいた2枚の1万円札を差し込んでやったらびっくりして飛び下がった。
私は微笑みを湛えながら人差し指を唇に当て、まだドギマギしている彼女の耳元に
「左から2番目のコが良いと思うのだが」と囁くと、彼女の目に複雑な影が差した。
私が指名したのは彼女の想い人のようだ……
「……そうですね」と答える声が少し震えている。
まさに願っても無い構図!!
教室に足を踏み入れる私に辺りの喧騒は止み、私はメイドと短い交渉をする。
「彼女を落とせたらオレに何をくれるの?」
「そうだな!来年度の新人賞を……音楽でも映画でもその両方でも」
「ハハ!有り得ねよ!」
「嘘だと思うのなら私の力を試してみればいい」
「どうやって?!」
「ちょっとスマホを貸しなさい」
私は彼のスマホにアプリをインストールしパスワードとして彼の指紋を認証させた。
本当は彼の可愛い顔を認証させたいのだが、女子メイクが施されているので叶わない……
「これで我がグループのあらゆる施設がフリーパスだ。それらを使ってキミが彼女を落とすのを楽しみにしているよ」
「こんな事やって、アンタに何のメリットがある?」
「キミが他でもない私の所へ来る事こそメリットだ」
こうして私の愛玩コレクションがまた一つ増えた。
お馴染み“月曜真っ黒シリーズ”でもあるのでR15にならないよう、あと文字数にも苦労いたしました(^^;)
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