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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日からおっぱいを揉まないと決めた百合

作者: 弥子

 私、宮原(みやはら) (さく)は息を潜めて獲物に近づく。その獲物というやつは臆病で気配に敏感なのだ。音を立ててはいけないのですり足。息は止める。そうして慎重に獲物の背後に立ちガバリと掴んだ。


 おっぱいを。


「ひゃー!」


 獲物改め安藤(あんどう) (もも)はビックリして身を固めた。


 このイタズラは私達が小学五年生の時に始めて、高校二年生になった今でも続いている。


 桃とはクラスは別々になってしまったけど、朝のホームルームまでの時間、私は桃のクラスにお邪魔して少しお話をするのだ。


 桃は御顔立ちの整った黒髪ロングの清楚系なのだが、私が小さい頃から揉み続けたせいか暴力とも言えるサイズにまでおっぱいが進化した。中学二年生の時点でEと言われて怖くなり、そこから聞けていないので今のサイズはわからない。ただ、確実にあの頃よりデカくなっているとだけは言っておく。ハイハイ、どうせ私は金髪ショート貧乳ですよ。すみませんね。これが格差ですよ。


 砕けた性格が幸いして(いやまさか、おっぱいを見て判断する訳じゃないよな?黒髪巨乳という四字熟語が好きな訳じゃないよな?)男子からの人気も高い。ちょいちょい告白されてるのを見る。ただ、ずっと一緒にいる私は断言できる、桃に恋人がいたことはない。


「ハハっ、桃ビックリし過ぎだよー」

「もう、咲!」

「そんなこと言って桃、感じてるんじゃないの?」

「そんな訳ないでしょ」


 桃は顔を赤くして、少し俯きながらそう言った。


 ヤバい、桃怒ってる?


「ごめん、桃。嫌だったよね」

「えっ、いや別にそういう訳じゃ、なんなら」

「ううん、桃は優しいから、私もつい調子に乗っちゃうんだ。本当にごめん」

「……うん、いいよ。じゃあこの話終わりにしよう。あの雑誌見た?」


 そうして、朝の雑談タイムを終えた私は桃と別れて自分の教室に戻った。


 朝のホームルームの話を聞き流しながら思う。私はもしかしたら、自分のおっぱいよりも桃のおっぱいを揉んだ方が多いのかもしれない。


 修学旅行の時のお風呂、二人で行った夏祭り、お泊まり旅行、二人の思い出の中に絶対に挟まるもものおっぱいを揉んだ時の感触。


 あれっ、もしかして私って変態なのか?そりゃ桃も嫌がるよね。


 決めた!私絶対にもう桃のおっぱいを揉まない!



____________________


 お昼ご飯を食べに桃のクラスに向かう。


 はっ、なんで私は足音を消しているんだ?まさか、この期に及んでまだ桃のおっぱいを揉もうとしているのか?やっぱり変態なんだ私は!


 よし、ここで話しかけちゃえばいいんだ。そうしたら桃は私に気づいておっぱいを揉ませまいと警戒するだろう。


「桃、ご飯たーべよ」

「咲、その、揉まないの?」

「私は生まれ変わったの。変態から穢れを知らないエンジェルにね」

「それは無理なんじゃ……。不可逆現象でしょ」

「ふん、勝手に言ってればいいのさ。桃は驚くと思うよ、私の恐ろしい程の自制心ってやつにね」


 私は大きなハンペンを食いちぎって決め顔をしたのだが、桃は「はいはい期待しておく」と流されてしまった。


「明日さ、遊びに行くっていうのは決めたけど具体的には決めないの?」

「咲っていつも予定のこと気にするけど結局なんかあのお店が良さそうとか、あれなんだろとか言って予定通りにいかないんだからいいでしょ」

「それもそうだね。ハハハ」

「まぁ、私の家でお泊まりするのだけは決まってるから、集合だけは私の家にしよう。そうしたらお泊まりグッズ、置けるでしょ?」

「さすが桃参謀!」

「参謀でもなんでもないよ」


 私が桃に絡んで、桃はそれを冷静に処理してくる。この関係がとても心地よい。やっぱりいい友達を持ったな。


 桃と会ったのは小学校の入学式だった。私は引っ込み思案で周りが続々と仲良くなっていくのを見ていることしかできないで、ずっと席に着いて下を向いていた。


「ねぇ、名前なんていうの?」


 下を向いている私を覗き込むようにして、桃は私に話しかけてくれた。


 桃はいつもそうなのだ、私が辛い思いをしている時に絶対にいてくれるのだ。


「桃、私と友達になってくれてありがとうね」

「……うん、私も」


____________________


 桃家のインターホンを押すと、応答も無しにいきなり桃が出てきた。


 桃はオシャレさんで、今日着ている夏らしさを前面に出したような白いTシャツを主体とした、私にとっては難易度が高すぎるファッションを着こなしている。


 対して私は柄物のブラウスに頼るスタイルなので、二人のオシャレ戦闘力にもとんでもない差が生まれているのだ。


「うーん、制服の桃も良いけど、私服の桃はやっぱり格別だね」

「そっそう?」

「うんうん」

「咲も可愛いよ?」


 桃に似合わない服なんてないな。流石に着ぐるみとか着てたらアレかもしれないけど。


「またまた、私なんて桃様に比べたらちんちくりんだよー」

「なんで自己評価そんなに低いの?」

「幼馴染が可愛すぎるからだよ」

「それはどうも」

「なんかそう言われれば腹が立つな。こうしてやる」


 私の手が桃の胸に伸びかける。


 危ない、揉みしだくとこだった。


「今、私の胸揉もうとしたでしょ?」

「してない!」

「本当に?」

「うぅ、すびばぜん」


 私は伸びかけた手を自分の顔に戻して涙を拭く仕草をした。


「ホントに気にしてないからさ。揉みたくなったら揉んでどうぞ」

「うっ、幼馴染が良いやつすぎる」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 帰ってきた私達はクタクタになって桃のベッドに寝転んだ。


「疲れたねー」

「私はもう動けない〜。さっきスマホの歩数計見たら三万歩だったんだけど」

「ごめん、私がショッピングモール全店回るまで帰れませんやったのが悪かったね」

「いいのいいの、咲の暴走に付き合うのが私の趣味だから」

「こっからご飯も用意しないといけないって考えると心が……」

「咲のお母さんは優しいからなぁ、いっつも美味しいご飯作ってくれてるんだよ。ほらほら、お母さんのありがたさを知るべきなんだ」


 桃の両親は今日と明日を使って、伊豆への小旅行に向かったので、この家には桃と私しかいないのだ。


「咲、ご飯作るのお風呂入ってからにしない?流石にベタベタで服も脱ぎたいし」

「そうだね、じゃあお先にどうぞ」

「久しぶりに一緒に入ろうよ」

「そう?じゃあそうしよっか」


 私はお泊まりセットからお風呂セットを取り出して、お風呂場に向かった。


 桃はタンスからいろいろ出さなければいけないので、後から来るらしい。


 いやー、桃家のお風呂入るの久しぶりだなー。


 まぁ、旅行とか行った時はそりゃ一緒に入ってたけど、家のお風呂で一緒に入るのは久しぶり。


 というか、いつも私が一緒に入ろうとすると桃が断っていたのだ。


 なんで今日に限って一緒に入ろうなんて言ったんだ?そっか、私も汗でベタベタだったから気を使ってくれたのか。


「うー、ちべたいよー」


 汗のせいで冷たくなった服をお風呂セット七つ道具の一つ、ちょうどいいサイズのビニール袋に入れる。


 私が裸になりきったところで、桃も洗面所に入ってきた。


「じゃあお先にー」

「どうぞ」


 軽くシャワーを浴びて汗を直してから浴槽にゆっくりと入る。


 桃も私と同じようにした後に浴槽に入ろうとする。


 昔は向かい合うようにして入れていたのだが、久しぶりなのであの頃とは体のサイズが違う。


 という訳で。


「桃ー、流石に恥ずかしいよー」

「まぁまぁ」


 桃が私を抱え込むようにしてお風呂に入ることになった。


「ねぇ咲、私さ今まで咲におっぱいを揉まれ続けたけどさ。私が咲のおっぱいを揉んだことはないよねぇ」


 桃は私の耳元で囁くように言った。


「そ、そうだね」

「今までの分お返ししてもいい?」

「私のおっぱいなんて揉み応えないと思うよ?」

「大丈夫、多分明日には自分から揉んで欲しがるようになってるから。私は咲におっぱい揉まれるの好きだしね」









 ぴよぴよと鳥の声で起きる。


 隣では裸の淫乱巨乳が寝息を立てている。


 あれ、私昨日いつ寝たんだ?確か私の体からとんでもない量の水分が出たのは覚えてる。あんな水分量私の体のどこにあるんだ?


 うぅ、恥ずかしいよぉ。結局桃の言った通りおねだりした記憶がある。

 

「うぅーん」


 桃が目を擦りながら起きてきて私のことをギュッと抱きしめた。


「もう咲は私の彼女なんだから、私のおっぱい好きなだけ揉んでいいからね」

「うっうん」

 

 多分、これからは私の方が揉まれることになるのだろう。


 ただ、私と目が合うと流石に少し恥ずかしそうに笑う桃のことを見ると、とってもいい「これから」というやつなのではないかと思うのだ。


 百合♡

誤字報告ありがとうございます。

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