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ポン太郎物語  作者: 玉城まりも
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6 ポン太郎と宝探し

今、家には誰もいない。チャンスだ。



ぼくには四人の姉がいる。


姉たちは二人で一部屋使っていて、ぼくは姉たちがいない時を見計らってこっそりと姉たちの部屋に忍び込んで宝探しをする。


間違ってほしくないのは、ぼくは宝探しをするのであって泥棒ではない。


むしろ姉たちが使わなくなった物を有効活用していると思っていただきたい。


姉の部屋は一・二番目姉、三・四番目姉というペアで使っている。


まずは一・二番目姉の部屋から宝探しをしよう。


この部屋は一番目姉が東京の大学進学のため、ほとんど二番目姉だけの部屋になっている。


二番目姉は小梅。


小梅は手芸や工作、小物作りが得意で部屋の中にはわんさかと裁縫セットや布やドライバー、ノコギリ、砥石などの道具が置いてあった。


こういった道具には触らない。あ、でも、ただのハサミや糊といったものはたまに借りる。


ぼくは小梅の部屋の本棚に目を付ける。


たまに面白そうな本があるので面白そうな本があったら、ぼくが読んであげようと思う。


 ぼくは小梅の本棚を眺めた。よく分からない本・・・・というより高校生が使うような本?教科書?ばかりで面白くはなかった。


 一応本棚の本を少しだけパラパラとめくってみたけれど、全く内容を理解することができなかった。


 残念―――と思い視線を下にさげたら、小梅の机の下にノートの束を見つけた。


 どうせ国語とかのノートだろうと思いノートの束を取り出すと、表紙に、

『小梅・日記帳★』

 と書かれてあった。


 ぼくは、お!っと思った。

 

 小梅・日記帳★の一ページ目を開くと、


 『今日から中学生!これからの素晴らしい青春の思い出を残すために日記を毎日つけるぞ!』


 ぼくはワクワクした。中学一年生になった小梅が一体何を考えていたのか。もしかしたら、面白いことが書いてあるかもしれない。


 そう思い、ぼくは次のページを開いた。


 真っ白。ページが真っ白だった。


 ぼくはペラペラと『小梅・日記帳★』をめくった。


 日記は最初の一日しか書かれていなかった。


 小梅は三日坊主にもなっていなかった。


 小梅・日記帳★はこのノートだけではなかった。


 小梅・日記帳★は全部で五冊。

 

 次のノートを開いてみよう。

『今日から中学二年生

 去年は色々忙しくて全然日記を書けなかった。でも、今年こそは毎日日記を書くぞ!』


 ペラリとページをめくった。


 真っ白。

小梅・日記帳★三冊目に突入だ!

『今日から中学三年生に受験生になった!勉強頑張るぞ!今年はできるだけ毎日日記を書くぞ!』

ペラリとページをめくった。


 真っ白。

小梅・日記帳★四冊目。

『今日から高校生になったぞ!勉強を頑張ったかいがあった。部活に勉強に恋に青春を頑張るぞ!だから三日に一度のペース、自分のペースで日記を書くぞ!』

ペラリとページをめくった。


 真っ白。

小梅・日記帳★五冊目。

『今日から高校二年生!今が人生で一番楽しいかもしれない!だからこの楽しい思い出を日記にして忘れないようにしよう!一週間に一度のペースで日記を書こう』

ペラリとページをめくった。


 真っ白。


 ぼくは大笑いをした。


 小梅は何も学んでいない。毎年毎年日記頑張るぞ!と張り切っているが結局一日・・・・というより初日しか日記を書かずにあとは真っ白。新しいノートがもったいない。


 だからぼくは小梅・日記帳中学二年生編を勝手にもらうことにした。


 小梅には日記帳を無くしたと思っていただこう。


 これは盗みではない、勝手にもらっているだけである。



 次に一番姉・野薔薇の机を探索しよう。と思ったけれど、野薔薇の机は前に探索してしまったので新しい発見はない。


 せいぜい野薔薇の机の引き出しの中に賞味期限が切れたカップ麺があるだけだ。


 もしこれを勝手に捨てたら怒られるので、捨てないでおこう。



 次に三・四番目姉の部屋で宝探しをしよう。


 三・四番姉の部屋はよく片付けられていてキレイだった。


 よし、宝探しを始めよう!と気合を入れたとき、四番目姉・アヤメの机が目に入った。


 机の上に、『ポン太郎へ』と書かれた可愛い手紙があった。


 ぼくに宛てられた手紙。


 何だろうと思って可愛い手紙を広げて、中に読んでみると。

『あんた何人の部屋漁ってんの!?』


 部屋のドアがバンと音を立てて開いた。


 アヤメであった。ぼくが何か言おうとして口を開くと、

「あんた何人の部屋漁ってんの!?」

ゲシッ!

「ぐえッ!」

 蹴られた。暴力は反対である。


 今日の宝探しはノート一冊だけである。


 アヤメが部屋にこなければもっと宝探しができたけど、今回は仕方がない。

 

 ぼくは自分の部屋に戻った。


 宝探しの成果である小梅・日記帳★にさっそく漢字の練習をしようと鉛筆を持った瞬間。


 ドロン!モクモクモク・・・・・・


「うわっ!」

 小梅・日記帳★から煙が吹き出した。


 ぼくはゲホゲホと咳をしながら煙を手で払いのけた。


 小梅・日記帳★は葉っぱになった。


 葉っぱには小さく文字が書かれていて、

『あんまり部屋を荒らさないでね、ポン太郎ちゃん。小梅より』


 つまりぼくはタヌキに化かされたのだ。

「だまされた!小梅ちゃんひどい!」

弟をだますなんて、何てひどい姉なんだ!ぼくが可愛くないのか!


 ぼくは部屋で一人、プンスカと怒った。

「仕返ししてやる!後で小梅ちゃんの靴下を全部裏返しにして、教科書ノート使ってトランプのピラミッドみたいにしてやる!」



 この時ぼくは知らないけれど、ぼくの部屋の前に小梅がいて、ぼくの仕返し計画を全部聞いていたらしい。

小梅はクスクスと笑った。

「やっぱりポン太郎ちゃん可愛い~。今度はなにでポン太郎ちゃんを化かそうかな」



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