22 ポン太郎と二宮銀次郎像
これは普通の日常のことで当たり前にあることなんだけど、一つ気になったことがある。
他の人から見れば「そんなの当たり前じゃん、何をそんなに気になっているんだよ」というレベルの話しなんだけど、でも疑問に思ったことがある。
これは例えば、空はなぜ青いんだろう?とか、星が夜に光って見えるのは何でだろうとか、おむすぶが美味しいのは何でだろうとかそういうレベルの話しである。
そして、ぼくが日常の当たり前について疑問に思っていることは・・・・
なぜ、二宮銀次郎の銅像は動き、何人・・・いや、何体もいるのだろう?
ぼくが通う木の葉の森小学校には二宮銀次郎の銅像が何体もいて、それぞれが学校の仕事をしている。
いつも校門前に二体立っていたり、学校の木の枝を切っていたり、学校内を見回ってパトロールしたり、壊れたベンチを直したり、色々なことをやっている。
だから疑問に思う。
なぜ銅像なのに動き、なぜ何体もいるのだろう?と。
ぼくは教室の窓からなぜか校庭を走っている二宮銀次郎像を見ていると、
「ポン太郎、相撲とドッチボールだったらどっちやりたい?」
といつも通り、太が遊びに誘ってきた。
だからぼくは聞いた。
「ねぇ太。何で二宮銀次郎は動くのなか?」
「え、動く?動くのは当たり前じゃん。何で当たり前なことを聞くんだよ」
「うん、当たり前だね。でも、何で動くのかな~って。あと、何人いるのかな~って」
それに太は言った。
「あ~普通の学校って、二宮銀次郎って一人しかいないもんな~。でも、動く理由は・・・・・あれ?何で動いてるんだ?」
「そう。分かんないんだよ。理科室の人体模型も動いているときがあるけど、それはハナコ先生が人体模型に憑依していたり、生徒か先生が何かの術で操ってたりしてるし」
「あと、音楽室のピアノも勝手に鳴る時あるけど、付喪神的なあれだしな」
「そうそう」
付喪神とは古い道具に魂が宿ることだ。だから、音楽室にあるピアノは百年近く使っているので魂が宿っていて、お願いするとピアノを弾いてくれる。
話しを戻すけど、だからこそなぜ二宮銀次郎の銅像が動いているのか分からないのである。
誰かが操っているわけでもないし、そもそも古い道具であっても物に魂が宿ることはあまりない。
それなのに十体も魂が宿るのは少し考えにくいことである。
「ねぇ太」
とそこにミミが現れた。
ミミは言った。
「宿題の出してないのあんただけよ。早く私に出して、先生に言われて集めているから」
太は首を傾げた。
「宿題?何の宿題?漢字ドリルと計算ドリルは先生に出したぞ」
「はぁ~あんた忘れてんの?先週に鬼瓦先生が『気になったことを知らべましょう』っていう宿題だよ。覚えてないの?」
太は数秒考えて、そして思い切り忘れた!という顔をした。
ミミは太の顔を見てはぁ~とため息をした。
「い、い、いつまでに宿題を出せばいいんだっけ?」
「明日の朝まで」
「明日!ポン太郎はやったのか?」
「ぼくはもうやったよ。『炊飯器でおむすびに丁度良い固さのお米を炊くには?』という題名で」
「ど、ど、ど、どうしよう!何か気になること~気になること~あ!」
ひらめいた!という顔を太がして、
「『二宮銀次郎の銅像は何で動いて、何で何体もいるのか?』これにしよう!早速調べるぞ!ポン太郎!」
「え~!?」
そんな感じで、ぼくは太の宿題を手伝うはめになってしまった。べつにいいけど。
太は校庭で走っていた二宮銀次郎にインタビューをした。
「走っているところすみません!今、『気になることを調べましょう』という宿題でおれは『二宮銀次郎の銅像は何で動いていて、何体いるのか』気になっているので、聞いてもいいですか?」
二宮銀次郎は今まで走っていたので息を切らして汗をかいていた。
銅像なのに汗をかくんだ・・・・とぼくは思ったが、口には出さなかった。
二宮銀次郎は爽やかな笑顔で答えた。
「はい、いいですよ。二宮銀次郎について気になっているんですね」
「はい!」
太は元気よく答えた。
「まずは『二宮銀次郎』がどういう人物なのかお答えします。二宮銀次郎は江戸時代に生まれた実在する人物です。彼は豊かな農家でしたが川の氾濫で田んぼや畑を失い、貧乏になってしまい家族はバラバラになりました。けれど、二宮銀次郎は一日中働き、隙をみては勉強をして努力をしました。
大人になってからは荒れた農村を救うために働き、彼のおかげで救われた村は数百にものぼります」
『へぇ~』
「学校に二宮銀次郎の銅像が多いのは―――」
そこで学校のチャイムが鳴った。昼休みが終わった合図だ。
「まだ宿題終わってないのに!チャイムが鳴っちゃった!!」
と太が頭を抱えていうと二宮銀次郎像は爽やかな笑顔で、
「放課後にまた宿題のお手伝いをしましょうか?僕は校庭にいますので」
「分かった!また放課後にお願いします!だってよポン太郎」
「・・・・・・うん」
ちなみにいうが、ぼくは太の宿題に付き合ってやっている。
放課後
放課後になると太は教室から飛び出して校庭にいる二宮銀次郎像の元へ走っていった。
「二宮銀次郎さん!またよろしくお願いします!」
ぼくは五秒遅れて、到着。
「よろしくお願いします」
と頭を下げた。
「はい、よろしくお願いします。ですが木の葉の森小学校では二宮銀次郎は多いのでこれからは個体識別のために僕のことを四十号とお呼び下さい」
「四十号?」
とぼくは疑問に思ったが太は、
「分かりました!四十号さん!」
と単純に元気だった。
「では、歩きながら二宮銀次郎とそして僕たち銅像についてご説明します。ついて来て下さい」
『はい!』
「『二宮銀次郎の銅像が学校に多く存在している理由』ですが、昼休みに説明した通り、彼は苦労して働きながら勉強したという功績から、仕事と勉強を両立し頑張ったという象徴になっています。―――少し難しい言い方してしまいましたね、つまり生徒に二宮銀次郎のように努力して頑張って欲しいという願いで銅像が立てられました。学校によっては、銅ではなく石やお皿などに使われる陶器でできている二宮銀次郎像があります。そして僕たち木の葉の森小学校の二宮銀次郎像についてです」
四十号さんに連れてこられた場所は校門だった。
「今、二十八号と三十六号が校門の前で生徒達の登下校を見守っています」
『うん』
「これによって、生徒先生及び保護者を含めた外の人間が何時何分に学校に入り、そして出たのかが分かります。二十八号、今日の欠席した生徒は何名だ」
二十八号と思われる二宮銀次郎が言う。
「ゼロ名です」
と敬礼をした。
「こんな感じです。校門から出入りしなくても、空も監視しているのでご安心下さい。次に参ります、学校はやはりキレイが一番ですからね。僕たちは常に学校の衛生保持をしています。つまり、学校をキレイに保つのも僕たちの仕事です」
次に連れて来られたのは学校の広い花壇だった。そこにはやはり二宮銀次郎がいて、花に水を撒いていた。
「今は花に水をあげていますが、落ち葉を掃いたり窓を拭いたり、学校の壊れた物を直したりしています。さてここで問題です!僕たちは他にどんな仕事をしているでしょうか!」
それに、ぼくと太は。
「はい!校庭で身体を鍛えてる!」
と太は答えて、
「はい!パトロールをしてる!」
とぼくは答えた。
それに四十郎はニコリとした。
「はい、二人とも正解です。それも僕たちの仕事で、いつでも緊急事態に備えています」
花に水を撒いていた二宮銀次郎が四十号に敬礼をながら言った。
「四十号、十八時に総帥室に来いとお達しがあった」
四十号も敬礼をした。
「十八時に総帥室。連絡ご苦労、四十二号」
敬礼している時の二宮銀次郎の顔はキリリとしていた。
しかし、いつもの爽やか笑顔に戻って、
「次が本命で最後です。校内に行くので上履きを履いて下さい」
言われた通り上履きをはいた。
四十号の後ろについて行くと、あまりぼくたち生徒が使うことがない地下二階に到着した。地下二階は薄暗く蛍光灯がチカチカと今にも切れそうだった。
「僕たちは五十体ほどいて、自分たちで自分を作っています。学校には常に十人の自分たちが仕事をしていて、学校の治安を護っています。あ、休日は変わりばんこにありますのでご安心を。そしてここが二宮銀次郎控室①です。開けます」
と四十号は二宮銀次郎控室①の扉をガラリと開けると、
「うわ、四十号いきなり開けるな!ゲームしてるんだぞ!」
「四十号な~に~?今ドラマの再放送を見てるんだけど~」
「コーヒーが美味しい・・・・・」
二宮銀次郎控室①は三段ベットや二段ベッドがあり、それぞれが好きなことをやっていた。
四十号は二宮銀次郎控室①の扉を閉める。
「とまぁこんな感じで独身者専用の控室です。続いては二宮銀次郎控室②に行ってみましょう」
二宮銀次郎控室②の扉を開ける。
「おぎゃーおぎゃー」
「パパ子供にミルクあげてー今私料理してるから手が離せなーい」
「もうやってるよ~パパだよ~ベロベロバー」
四十号は扉を閉める。
「二宮銀次郎控室②はファミリー向けです」
『へぇ~』
とぼくと太は感心したような声を出した。
四十号は言った。
「以上で二宮銀次郎についての説明は終わりますが、どうですか?これで宿題ができそうですか?」
「はい!ありがとうございます!宿題できます!良かったな、ポン太郎!」
「・・・・・・・うん」
念のためにいうが、ぼくはすでに宿題を終えている。
「さ~て、家に帰ったら早速宿題やるぞ~帰るぞ、ポン太郎」
「うん、しりとりしながら帰ろう」
「おう!おれからいくぞ、ライオン」
「ん、か~ん~ん~ん?んがついてるから太の負け~」
「しまった!」
「あはははは~」
しりとりをしながらぼくはスッキリとした気持ちになった。
気になっていたことが分かったから、喉に引っかかっていた小骨が取れた感じがした。
家に帰りながら太が一言いった。
「そういえば二宮銀次郎像は何で動いているんだろうな」
「あ・・・・・」
そう言えば一番気になっていたことを聞くのを忘れていた。けど―――
「まぁいいや」
とぼくが言うと、
「そうだな」
と太が言ってくれて、お互いあははははと笑い合いながら家に帰った。
ここは木の葉の森小学校地下二階、二宮銀次郎控室③。何十体もの二宮銀次郎の銅像が様々なポーズをしてじっとしている。
二宮銀次郎たちは頭にコードが取り付けられていて、コードは一つの機械に繋がっている。
二宮銀次郎―四十号が動かない同胞を眺めていた。
「実験の進捗はどうだ?」
と四十号は言うと、それに白衣を着た二宮銀次郎が答えた。
「順調です」
「そうか、実に長かった。魂のクローン化が成功し、器に入れることで我らは増えたが進化までには至らなかった。だが―――」
四十号の言葉を白衣を着た二宮銀次郎が引き継いで言った。
「我らは進化し全く新しい二宮銀次郎となるのだ」
その時、様々なポーズでじっとしていた二宮銀次郎たちの目が朱く、光った。




