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ポン太郎物語  作者: 玉城まりも
3/22

3 ポン太郎と伝説の木の棒

「ぼくーの名前はポン太郎!七人家族のポン太郎!四人のお姉ちゃんポン太郎!魚を食べるぞポン太郎!お肉も食べるぞポン太郎!」

ぼくは歌いながら下校途中、何者かに跡と付けられていた。


でも、気にせずぼくは自作の歌を歌う。木の棒を拾ってチャンバラの練習をして、小石を蹴って家へと帰る。


普通に歩いていても、何者かは相変わらずぼくと距離を保ちながら歩いている。


最初は何かぼくに用があるのかな~?と思っていたが、ただ後ろについて歩くだけというのが何日か続いた。


帰り道がぼくと同じというわけではなく、むしろ反対方向だと友だちから聞いた。


そして、ぼくが後ろを振り返ると必ず電柱や塀などに身体を隠してしまう。


何者かはぼくを熱い眼差しで見つめていて、ぼくはどうしようかな~と悩んだすえに気にせず歌を歌うことにした。

「ゴーヤは食べないポン太郎!注射が嫌いなポン太郎!薬も嫌いなポン太郎!歯医者が嫌いなポン太郎!ポン太郎!弱点だらけなポン太郎!」


「なぁ」


「ポン太郎!ポン太郎!って何?」


気持ちよく歌っていたところ、何者かが声を掛けてきた。


「お前、一体何者だ?」


「ポン太郎だよ、さっきからそういってんじゃん」


「違う、お前は普通の人間ではないな」


「当たり前だよ、ぼくはタヌキだよ」


「・・・・・お前は普通のタヌキではないな」


「当たり前だよ、ぼくは普通の化け狸だよ」


「・・・・・・・・・・・お前は魔物か?」


「えーと、ぼくは化け者で一応妖怪の部類になっちゃうから、魔物といえば魔物になるのかな?」


「魔物ならば・・・・・倒す!(かぜ)(やいば)!」


「わぁ!!」


風の塊がぼくに襲い掛かり、間一髪で回避できたが道に落ちていた空き缶がスパッと切れた。


「逃げるな!オレの聖剣を返せ!」


「聖剣ってなんのこと!?って、わ、わ、わ、切らないで!」


と何者かは(かぜ)(やいば)!を何発も打ち放す。


「ぼく何も悪いことしてないよ!少なくとも飛鳥(あすか)君に何もしてないよ!」


ぼくは(かぜ)(やいば)を避け続ける。飛鳥(あすか)君は今年ぼくのクラスに転校してきた転校生だ。


飛鳥(あすか)君と出会ってそんなに日にちは経っていないし、どういう人物なのかもよく知らない。


聖剣とかいっているけど、ぼくはそんなもの知らない。完全な誤解である。


「とにかく聖剣は返せ!返してくれたら今回は見逃してやる!」


「だから知らないって!」


そんなときだった。


(マタ)()!」


ぼくと飛鳥君の間で、赤い火柱が上がった。


火柱は熱いというより温かい。見た目が派手なだけだったけど、ぼくと飛鳥君は思わず火柱から距離をとった。


「二人とも何やってんの!」


同じクラスメイトで幼馴染のミミが間に入ってきた。ミミは猫の化け者で、猫の姿になるとキレイな白猫になる。


飛鳥君から逃げるのに夢中で気づかなかったけど、ここはミミの家の近くだった。


「ちょっと飛鳥ちゃん、いくらケンカだといっても魔法だか仙術だが分からないけど、そういうのはダメだよ!ケガするでしょ!ポン太郎も、飛鳥ちゃんに何したの!ちゃんと謝って」


「ミミっていったな。オレを『ちゃん』付けで呼ぶのはやめろ。オレは男だ!」


「男子じゃないでしょ!飛鳥ちゃんは女子でしょ!」


飛鳥君は正真正銘の女子だ。


ぼくが女子の飛鳥君を『君』付けしているのは自己紹介のときに


「オレは男だから『飛鳥君』と呼べ」


といっていたからだ。


「ほらポン太郎、飛鳥ちゃんに謝って!」


「謝るも何も、ぼくは飛鳥君にストーカーされて、ケガさせられそうになって、泥棒扱いされたんだけど」


「誰がストーカーだ!オレは勇者だ!!だから聖剣を返せ!」


『はぁ?』


ぼくとミミは同時にまぬけな声を出してしまった。




オレは異世界の住人である。


女神・ホワイトローズから選ばれ勇者として生まれた。


そして、世界を恐怖で支配する魔王を倒すべく仲間とともに旅をし、レベルを上げ、聖剣を手に入れ、あと一歩で魔王を倒せたのに相打ちになってしまった。


相打ちにあったときの衝撃で異空間に裂け目ができてしまい、裂け目にオレの聖剣が落ちてしまった。


聖剣がなければ魔王は倒せない。


オレは異世界の扉を潜り抜け、聖剣が落ちたと思われるこの月光町に潜入した。


あともうちょっと長く話そうか?


まず、ヘボ魔法使いの出会いは――――




「もういいもういい」


ぼくは慌てて飛鳥君の話しを遮った。長い話しは仙太郎じいさんで十分だ。


ぼくたちは家が近いからという理由でミミの家にお邪魔することにした。


「何飲む?今出せるの牛乳とドクダミ茶ぐらいしか出せないけど」


「ぼくはドクダミ茶で」


「オレは牛乳で」


ミミは飲み物を持ってきた。


「飛鳥ちゃんが異世界からやってきた勇者・・・・う~ん・・・・・」


ミミは飛鳥君の話しを聞いて唸った。ぼくも同じだった。


異世界からやってきた勇者という話しはとても信じられない話しだった。飛鳥君には悪いけど、空想の話

しをしているようにしか思えなかった―――しかし、風の刃を見てしまったから一応信じるしかない。・・・・・もし飛鳥君が魔法使いとか召喚士というのだったらすんなりと信じたけど。


「それで、飛鳥君の聖剣とぼくとで何か関係があるの?さっきからいってるけど、ぼくは聖剣なんて知らないよ」


「知らないはずはない、百パーセント当たるといわれている占い師に視てもらったんだ!」


「だから何でぼくなの!?そして何でぼくを攻撃したの!」


「占い師がお前だっていってたんよ!それにお前、オレの攻撃を軽々躱していたし、体育の授業だって分身とかしていたじゃねーか!あれを見て、絶対にオレの聖剣を狙う魔物だって思ったんだよ!魔物じゃなくったってお前、ただ者じゃねーよ」


「そんな!ぼくはただの化け狸だよ!」


ぼくは自他ともに認める普通の化け狸である。


「そもそも聖剣ってどういうものなの?ゲームに出てくるような金ピカな剣なの?」


ミミは飛鳥君に聞いた。


「いいや、見た目はただの木の棒だよ。でも、オレが力を込めると聖剣になる。本当に選ばれた者しか使えない剣なんだ」


と飛鳥君は両手を広げてこのくらいの大きさというのを教えてくれた。


このくらいの大きさ。

・・・・・・・・・・

このくらいの大きさの木の棒。

・・・・・・・・・・

チャンバラするのにちょうどいい大きさの木の棒であった。


「!」


ぼくは心の中で驚愕した。心当たりがあった。


「ポン太郎、何か知ってるのね」


「ぼくはまだ何もいってないけど」


「心当たりがあるって顔に書いてあった。で、どうなの?」


「う~心当たりはあるけど・・・・・・・」


「つべこべいわず、さっさと聖剣返せ」


と飛鳥君は手の平を上にした。


どうしよう。とても困ったぞ。


「心当たりがあり過ぎて、分かんない」


「どういうことだ!」


飛鳥君は怒りだした。

「あのね、ここ最近適当な木の棒を拾ってチャンバラごっこをやってそこら辺に捨てるってことにはまっ

てて、飛鳥君がいう聖剣がいつどこでチャンバラごっこをした木の棒なのか分からないの」


「!」


今度は飛鳥君が驚愕した顔をして、一気に号泣し出した。


「もうだめだぁ~!ごめんなさい、故郷のお父さんお母さん!お城の王様お姫様に勇者パーティーの仲間たち!ポン太郎というタヌキのせいで、世界が終わってしまいました!本当にごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」


「え、え、え!?ぼ、ぼくのせい!?」


「何飛鳥ちゃん泣かしてるの!責任とってポン太郎、あんたが何とかしなさいよ!」


「そんなぁ!」


ぼくは悲鳴に近い声を上げた。





ぼくと飛鳥君とミミは三人組(パーティー)となって聖剣を探索することにした。


ミミは探索三人組(パーティー)になるつもりはなかったが、やっと泣き止んだ飛鳥君がミミの服を握って離さなかったのでしぶしぶ聖剣を探すことになった。


「で、どうやって聖剣を見つけるの?」


ミミが聞いてきた。


「まず、ぼくが木の棒を拾うのは下校途中である。だから、ぼくの帰り道を中心に探す」


というとミミと飛鳥君は了解という意味で頷いた。


スタート地点は学校でゴールはぼくの家。このコースのどこかで聖剣があるといいな。


「ぼくがよく拾うのはこの家のケヤキの木。結構いい木の棒が手に入るんだ」


大きなケヤキの木がある大きなお屋敷の家である。


ちょうどよく、短刀にするにはいい大きさの木の棒がある。


その木の短刀を使ってぼくはかっこよくキメポーズをした。


けれどミミと飛鳥君はぼくのキメポーズに何も突っ込まず、それぞれ気に入った木の棒を手に取った。


「確かに魔法の杖にするはいいのがあるね。ファイヤーボール!――――なんちゃって」


「こ、これは、閃々(せんせんこう)の杖レベル48ではないか!」


「・・・・・・飛鳥君、聖剣は?」


「は!・・・・・いや、ここにはないようだ」


「そういえば、聖剣って見た感じ木の棒だっていってたけど、気になった木の棒全部手に持って力込めるの?」


ミミは飛鳥君に疑問をたずねた。


飛鳥君は首を横ふって、


「オレと聖剣は心で通じ合っているんだ。だから、近づけば分かる」


結局大きなケヤキの木周辺にはなかった。


次に探索ポイントはしゃちほこ神社だ。


しゃちほこ神社は月光町で一番大きな神社で、金ぴかで大きなしゃちほこがある神社で有名である。ご利益は金運で、よく絵馬に巨人宝くじが当たりますようにと書かれてあるのを目にする。


しゃちほこ神社の周りは林になっている。


その分良い木の棒をたくさんみつけることができる。


ぼくたちは早速よい木の棒を探索することにした。


「ロングソード!ロンギヌス!」


「これで箒作れそう・・・・・・」


「おいこら!まじめに聖剣探せ!第一ロンギヌスは槍だし、ミミが持ってる木の棒は箒じゃなくてすり潰せば回復薬になるんだぞ!宝の持ち腐れするな!」


飛鳥君に怒られてしまった。


ぼくとミミはまじめによい木の棒を探した。途中で、カラスの子がなんかの遊びだと思って一緒に良い木の棒を探してくれたが、飛鳥君の聖剣はなかった。


ぼくとミミは探し疲れてグッタリとしてしまったが、飛鳥君は落胆している。


あと探すところといえば、ぼくの帰り道の途中にある空地や小さな茂みくらいしかない。


もしかしたら他の人が飛鳥君の聖剣である木の棒を持って行ってしまって燃えるゴミに出してしまったかも、と思ったがこれをいったら飛鳥君は絶対泣くだろうからいわなかった。いわないのが正解だと思った。


ぼくたち聖剣探索三人組(パーティー)は空地や小さな茂みを探した。けど無かった。


飛鳥君の顔がどんどん暗くなる。


そんな時だった。


仙太郎じいさんが現れた。


「おや君たち、何をしておるんじゃ?」


「あ、仙太郎おじいさん―――」


ぼくは飛鳥君が異世界からきた勇者で、月光町に落ちた聖剣を探していることを仙太郎じいさんに話した。


「――—ほう、聖剣は勇者が力を込めなければ見た目はただの木の棒なのか。ふむふむ」


仙太郎じいさんはぼくの話しを特に疑う素振りすら見せず、すんなりと信じてくれた。


「お兄さん、あんた何者だ?その闘気はただの人間ではないな?」


飛鳥くんは目をスッと細めた。


「分かるのかね、このワシの力を・・・・・」


仙太郎じいさんも目を鋭くさせた。


「あぁ、分かるさ。あんたを倒せば経験値がいっぱいもらえそうだ」


「ワシは人間ではなく古い化け狸だから、そう簡単には倒せんぞ?」


「・・・・・分かっている。聖剣がなければあんたを倒すことは無理だろう」


「ほう、懸命な判断だ。そうそう、その聖剣には心当たりがあってな。飛鳥ちゃんがいう聖剣かどうか分からないが・・・・・・」


「飛鳥ちゃんっていうな!」


飛鳥君が仙太郎じいさんをポコポコ殴り始めた。





仙太郎じいさんに連れられてぼくたち探索三人組(パーティー)は行きつけの駄菓子屋に入った。


「おい!お菓子屋に何のようなんだよ!お菓子かおもちゃの剣でも買うつもりか!」


とても同感である。駄菓子屋と聖剣、何の関係があるのだろうか。


ミミはちゃっかりチョコを買っている。


仙太郎じいさんはレジにいる若い男性店員に声を掛けた。


「ちょっといいかね」


「いらっしゃいませ、何のご用でしょうか?」


「つまらないものとくだらないものがあると聞いて」


「会員カードはありますか?」


仙太郎じいさんは懐からカードを出した。


「会員登録確認しました。ではご案内します」


仙太郎じいさんはこっちこいというように手をこいこいさせた。


ぼくとミミ飛鳥君はレジの前に並ぶと、若い男性店員はレジの横にある招き猫の頭をポチっとする。



ギギギギギギギッ―――



レジを中心にぼくたちが立っている床が回り出した。



ガコンッ



床の回転が止まった。


ぼくたち探索三人組(パーティー)は周りをキョロキョロして、そしてとても驚いた。


店内に、武器がたくさんあった。


「すごい!ゲームの武器屋みたい!」


ミミがはしゃいだ声を出し、早足で店内をウロチョロとし出した。


店内に『武器、防具売って下さい』という張り紙があり、『小石一円から買い取り実施中』と書かれてあった。


なぜか店内に食券販売機みたいなものがあった。売られているのは石や岩で、一千万円くらいで滅茶苦茶

大きな岩が買えるみたいだった。


「店員さん、この子聖剣を探しているみたいなんじゃが何か良いのはないかい?」


「はい!ありますよ!」


あるんだ、とぼくは心の中で思った。


「おもちゃの聖剣と本物の聖剣があるんですが、どちらがいいですか!」


「ほ・ん・も・の・の聖剣!」


飛鳥君が本物という言葉を強調した。


「本物ですね!少々お持ちください!」


と若い男性店員は店の奥に聖剣を探しにいった。


ぼくは小さい声で仙太郎じいさんに聞いた。


「ここって駄菓子屋じゃないの?何で武器屋なの?」


仙太郎じいさんはニコリと笑った。


「ここは、表向きは駄菓子屋で本業は武器屋。知る人ぞ知る、武器屋なんじゃよ。品揃えが良く品質も良い。素人(アマチュア)ものから伝説級のものまである。あとでポン太郎にも会員カードを作ってあげよう。会員カードがあればいつでも武器屋(ここ)を利用することができるぞ」


「・・・・・・ぼくに武器は必要ないから会員カードはいらないよ」


ぼくの人生に武器は必要ない。


「オレは欲しい!」


飛鳥君は欲しがった。


「よし分かった。ワシの紹介ということで、会員カードを作ってやろう」


と仙太郎じいさんと飛鳥君が盛り上がっていると、若い男性店員がおそらく聖剣と思われるモノを持って戻ってきた。


「お待たせしました。こちらが聖剣です。お求めのものはありますか?」


聖剣と呼ばれるモノはただの木の棒十本とまさに剣という感じのもの五本だった。


飛鳥君はジっと聖剣と呼ばれるものを見つめたあと、


「・・・・・・・この剣が凄いものだということは手に取らなくても分かる。でも、オレの聖剣じゃない・・・・・」


「お客さま、聖剣をお求めですが、聖剣を求めるということは敵がいるということですか?」


「あぁ、魔王を倒すために」


「魔王は例えば種族や属性といったものは分かりますか?」


「たしか―――悪魔族で邪悪属性と暗黒属性の二つだった」


「それでしたら!」


若い男性店員が満面の笑みを浮かべた。


「こちらの神々から祝福された剣―『七聖剣』がおすすめです!悪魔族や亡霊族並びに邪や闇を打倒し払う効果があり、常に神聖で清浄な力を秘めています」


「ほう」


「さらに、今ならこちらの神々から護られし防具―『白薔薇の鎧』を付け三十パーセントオフ。両方合わせて一億円!」


「買った!」


ぼくは顎がガコーンとなった。え、まじで?まじで一億円払うの?と思っていると、飛鳥君は持っていた


バッグから札束をドサドサドサっと出してきた。きちんとした日本円である。


「ついでにこれを売りたいんだが」


と飛鳥君はさっき拾った木の棒を何本が出した。


「はい。全部合わせて一千万円になります」


ぼくはまた顎がガコーンとなった。


「ちょ、ちょっと待って!それただの木の棒だよね!何で一千万円になるの!?」


すると、飛鳥君はニヤリと笑った。


「分からないのか?この棒、魔力を秘めた木の棒で加工すれば魔剣や魔法の杖になるんだぜ」


「え・・・・・・」


もしかしたらぼくは今まで大金を道端に捨てていたのかもしれない・・・・・


「でも、そんな・・・・・一億円って・・・・駄菓子を買うみたいに安くいわないでよ」


「たった一億円で世界が救えるんだぜ。安いもんだぞ」


「そうかもしれないけどさぁ~」


仙太郎じいさんは、


「飛鳥ちゃんに良い店を紹介できて満足満足」


といっていた。


ふと気が付いた。猫のミミをどこいった?


ミミは魔女っ子的な衣装を着て、魔法杖(マジカルスティック)を振り回していた。


店内に備え付けられた鏡を見て、


「やっぱりあたしかわいいー」


といっていた。




飛鳥君がほくほくした顔をしながらぼくたちは駄菓子屋から出た。


「あ、そういえば」


仙太郎じいさんが何かを思い出した顔になった。


「この前ポン太郎の家にいったとき不思議な力を秘めた木の棒が庭に落ちていたぞ」


『え!』


探索三人組(パーティー)は思わず声を上げた。


ぼくたちは顔を見合わせた。


「え、どうする?」


とミミは聞いた。


「ぼくはこれから家に帰るからどっちでもいいけど・・・・」


「もう一億円の買い物しちゃったしなぁ・・・・・・」


『・・・・・・・・』


結局、探索三人組(パーティー)はぼくの家に行くことにした。確かめるだけ確かめようという考えだった。


仙太郎じいさんとはここで別れた。


ぼくの家の前で飛鳥君はピタリと足を止めた。


「うん、何だか聖剣の気配がする」


「まじか!というとあの時かな?太と一緒に家で遊ぶことになって庭に木の棒を捨てたあの時―――」


けれど、庭にぼくがチャンバラをした木の棒はなかった。


ぼくは家の中にいるお母さんに聞いた。


「お母さーん、庭にこのくらいの木の棒って見なかった?」


「見たわよー」


「それどこいったか知ってる?もう捨てちゃった?」


「小梅ちゃんが拾って持っていったわよー」


「分かった!ありがとう!小梅ちゃーん!」


「なーにー?」


小梅はテレビの前でお煎餅を食べていた。


「庭にあった木の棒って」


「知ってるよー私が持ってるー」


「その木の棒もしかしたら飛鳥君の大切なものかもしれないんだ」


「分かったー持ってくるー」


小梅は自分の部屋に取りに行き、そして戻ってきた。


「分かる、分かるぞ!聖剣が近づいてくる!」


飛鳥君が何かを感じ取り始めた。


「これのことかなー?」


と出されたのが女の子が喜びそうな魔法の(マジカルスティック)だった。


それに飛鳥君は、


「―――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


声にならない声を上げた。


「かわいいでしょ。がんばったんだ~完成まで朝四時までかかったんだよ」


聖剣が小梅の手によって魔改造され、魔法杖(マジカルスティック)になった。剣の面影すらない。


「あ、かわいい」


ミミはポツリと呟くと、小梅はそうでしょ~と嬉しそうにいった。


飛鳥君は衝撃が強すぎて固まっていた。


「あとこれね、ボタンを押すと―――」


ボタンポチ。


魔法(マジカル)なメロディーが流れ始めた。


そこで、飛鳥君が正気を取り戻し、


「オレの聖剣が―――!!!!!」


号泣し始めた。


気持ちは分かる。気に入っていた剣が魔法杖(マジカルスティック)に魔改造されれば誰だって泣く。


「え、え、私何かしちゃた?もしかして、もっと違うデザインの魔法杖(マジカルスティック)がよかった?」


小梅はいきなり泣き始めた飛鳥君に対し間違った解釈をした。


「うぅぅ。こんなんじゃ、閃光斬(せんこうざん)ができないぃぃぃぃ」


と飛鳥君は見るも無残な姿になった聖剣を小梅から受け取り、ボタンポチ。


すると、魔法(マジカル)なメロディーと共に飛鳥君の身体が輝き始めた。


「魔女っ子アスカ!ただいま登場!」


何と飛鳥君が魔女っ子衣装(コスチューム)を着て、身体が中学生ぐらいに成長していた。


「わぁかわいい~変身した~やっぱり君が不思議な力を秘めたただの木の棒の正当な持ち主だったんだねぇ~」


小梅は小さくパチパチ拍手をしていたが、ぼくは今日何度目かのアゴがガコーンとなった。


隣ではミミがおぉー!歓声を上げていた。


「なんじゃこりゃー!!!オレは勇者だ!なんで魔女っ子なんかに――――ってオレかわいい・・・・・」


小梅が飛鳥君に手鏡を差し出した。


飛鳥君は鏡に映しだされた変身した自分の姿を見て、ほれぼれとしていた。


「えっと、うん、まぁ、いいんじゃないのか?とりあえず、ちょっくら魔王を倒しにいってくる」


そういって、飛鳥君は変身した姿のまま空を飛んで行ってしまった。ぼくはあっけにとられた。


隣でミミはもじもじとしながら、


「あの、小梅ちゃん。あたしにも本当に変身できる魔法(マジカル)(スティック)がほしいな」


小梅はニコリと笑って、


「いいよ~まず、素材集めとして杉の棒と黒龍の鱗を持ってきたら本当に作ってあげる」


「本当!?やったー!!!」


気が付けばもう日が暮れていた。


流れ星がキラッと光った。


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